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第百一話 「根拠のない予感」
「さっきステージ裏でタロちゃんと会った。」
「ステージ裏で?」
菊池の反応に
「うん」と菊池を見て駿は頷く。
「タロちゃんは僕を見て
親指を立ててグットサインと一緒に
ニコッと笑ってた。
結局何を話すわけでもなかったんだけど、
それでもタロちゃんのニコッとしたその時の顔は
何かをやり遂げようとしている気がしたんだ。」
駿の話に
「直接話して聞いたのなら分かるが、
いくら何でもグットサインと
笑った顔だけとは、いささか根拠が弱すぎないか。」
と孝也が的を得たツッコミを入れる。
駿は
「そうだ。根拠はない。ないけど、
きっとこの予感は合っている。」
いつもは一歩引いて客観的な立場にいる駿が
ここまで言い切る姿はみんなが驚いていた。
図書室での一件以来、駿に繋がれし侍という縛りが
少しずつ解けていく・・・
一方、ステージ裏で片付けに追われている
太郎は、自分のことでここまで話が大きく
なっていることを知るよしもなかった。