第二話 「アウェイホームルーム」
入学式の緊張感が広がる教室で
俺と駿はそれぞれ決められた席に座った。
担任、副担任の自己紹介と簡単な挨拶が終わり、
注文していた教科書等を受け取ったところで
緊張感は少しずつ薄れ、前後左右の席同士で会話がところかしこから出てきた。
俺は窓際の最後尾に席を置いていたため、
前か右隣のやつが話しかけてこなければ何も始まらない。
無論、
俺からという選択肢は、始めから存在しない。
人見知りだから、
ということよりも、
誰一人として
知り合いがいない中での初日からのリスクと、
駿との絡みでだいぶスタミナを消耗していたからである。
ちなみに知り合いがいない中での
初日から声をかけるリスクというのは
言わずもがな、
手ぶらで真夜中の森へと入っていくようなもの。
高校生活はまだ先が長い。
手ぶらならば、
明るくなってから森へ入っていっても遅くはないだろう。
まさに今の状況は、
俺にとって
ハイリスクローリターンの
完全アウェイホームルームなのだ。
だから俺から話しかけることは、
万に一つの確立も今はないのである。
そういえば・・・
イケメン野郎、
駿はどうしているのだろうか。
きっとあいつにも知り合いはいないはずだ。
俺には分かる。
あいつが俺と同類であると言うことを。
類は友を呼ぶなんてよく耳にするが
まさにその通り。
友達が多い奴は、他人と同類になれる引き出しというか、
資質というか、可能性みたいなものを多く備えているに過ぎない。
言い換えれば、希少性がないことになる。
一方俺、佐藤太郎はというと、希少性の塊ではないか。
これまでも、おそらくこれからも
人との馴れ合いに慣れないのは、
俺と同類になれる資質を備えている奴が
極めて少ないというのがこの世の現状なのだ。