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走れ、何処までも
カァァァァァン…
今日も彼は走っている。
小さな峠を。
誰にも教えを受けず、ただ一人で。
3年の歳月は、彼の一つの才能を開花させた。
「Fドリ」
この物語の主人公、掛川翔真は
高校3年生。
徒歩3分の三日月高等学校に通う。
寝ない。
金を無駄遣いしない。
残された命を大事に生きる。
これが彼に与えられた一生の課題だ。
火事で両親は死に、自らも余命3年の中、彼は
強く生きてきた。
「強く生きる、って言葉、重いよね」
彼はそう言う。
そんな彼の傍には、父から受け継いだクルマがある。
DC2。
どれくらいの人がピンと来るだろうか。
ホンダ・インテグラ。
言わずと知れた名車だが、2016年現在ではただの中古車、と言われてもおかしくない。
火事の中、父に言われるがまま必死に守り抜いた愛車。
父が命より大事にしたクルマ。
意志を受け継ぎ、翔真は走り続ける。
この物語は、翔真がクルマを初めて運転するところから始まる。