第七話
俺は中世風なのか和風なのか分からない落ち着いた雰囲気の田舎の住宅地をリーナについて歩いていた。
「良い雰囲気だね。」
俺は率直な町並みの感想をリーナに伝えた。
「そうね。あたしたち相性良いのかもね。」
何やら勘違いさせてしまったようだが、思いのほか好感触な返事が返ってきた。
そんな嬉しい誤算もあったが、通りの一番端の家の前でリーナは止まった。
「ここがあたしの家だよ。」
リーナに連れられてやってきたそこは、周りの家より少々大きめの家にしか見えなかった。
まあリーナも家だと言ってるし家なのだろう。だが、武器は確かに置いてあるし店番、恐らくお母さんらしき人が居た。
「お客さん連れてきたよ。」
そう言いながら家の中に入っていくリーナ。俺もそれに続いて店に入る。
「おかえりなさいリーナ。お客さん、いらっしゃいませぇ。」
「どうも。お邪魔します。」
武器屋に来たのか友人の家に来たのか良く分からない感じでお邪魔する。いや武器屋に来たのだが。
「どんな武器探してるの?あたしが見てあげるよ。」
「とりあえず良さそうなのを探してるんだけど、ああ片手剣で。予算は20万デリスくらいであるかな?」
「20万デリスも出せるの?なんでうちみたいなところにわざわざ来たの?」
「いや実は道具屋のあまりの品揃えが良すぎてね。お客さんも多くて品物を良く見れなくてさ。」
「それで街外れの流行ってないうちへ来たってことね?」
ジト目でリーナにそう言われまたも迂闊な発言をしてしまったことに気付く。物事を良く考えてから喋りましょうって小学校の先生に言われたっけかそういえば・・・。
「いやそうじゃなくて武器をしっかり選べる店に来たかったんだよ。武器の事は店員さんに聞かないと分からないからな。」
言い訳になっているのかなっていないのか分からない言い訳をする俺。
救いの手は思わぬところから差し伸べられた。
「まあそうねぇ。でも、うちの人は武器を売る人を選んじゃうからねぇ・・・。」
「そうよねぇ・・・それがなければもう少し流行ってたのにねぇ・・・。」
お母さんの発言にリーナも頷いて応じている。なんだ?武器を売る人を選ぶって。
「それってどういう・・・」
俺がそう言いかけたところで別の声がそれを遮った。
「うるせぇな。俺の武器はクズ冒険者に使わせるための武器じゃねぇんだ。何度言ったら分かるんだ。」
そう言いながら、1人の男が店に入ってきた。
「お父さん、そんな事ばっかり言ってるからいつまでたってもうちは貧乏武器屋なのよ。」
「うるせぇ。お前まだ冒険者なんてやってんのか。いい加減やめろ。」
「お父さんが武器を売らないからでしょ。そうだ。そんな事よりお客さんよお客さん。」
親子喧嘩を始める流れでこっちに振るのはやめて下さい本当に。
「どうも。お邪魔してます。」
「なんだ?駆け出しか。そこらにある武器を適当に買ってけ。」
まあ駆け出しなのは合ってるが、本当に武器を売る気がないようだ。
「そんな事ないよ!トオルさんは凄いんだから!あの3人相手に勝っちゃうんだから。」
「3人ってお前とパーティ組んでたあのボンクラ3人か?あのボンクラ共はボンクラだがそこそこはやれるボンクラだったはずだが・・・3人相手に勝ったのか?」
「そうよ!しつこいあいつらをばったばった斬り倒してもう凄かったんだから!」
いや待ってくれ。俺は殺人は犯していないぞ。それにそんな一方的に勝ったわけでもない。むしろ負けてたんだ。そんなに持ち上げられると困る。
「ほう・・・ボンクラ共相手とはその武器で戦えるとはあんちゃん相当腕が立つな。」
ほらぁ~めっちゃ勘違いされた!完全に親父さん俺のこと達人かなんかと勘違いしてる。
「いえ、戦闘前に自己強化する薬を使っただけですよ。そんな大した事してません。」
「いや、それを考えてもそこそこはやるようだな。それに驕りもない。」
「そうなのよ!トオルさんはすっごい強いのよ!」
「そうなのねぇ~。凄い人なのねぇ~。」
駄目だ・・・完全に手遅れだ・・・俺は凄腕の冒険者ということになってしまった・・・
「ついてこい。武器を見繕ってやる。」
そう言い家を出ていく親父さん。
「ほら。行こう!」
そう言い腕を引っ張ってくるリーナ。そのまま俺は街外れの更に外れに連れて行かれる。
まあ何にせよ武器を売ってもらえるならそれで良いか。勘違い万歳。気を取り直して俺は2人の後に
ついていった。