第二話
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次の瞬間、俺は草原にいた。見渡す限りの大草原だ。意味が分からない。
「なんだこりゃ・・・。」
『そこはゲームの中ですよ。』
矢沢さんの声がする。だが矢沢さんの姿は周囲にはない。
「矢沢さん。ゲームの中ってどういうことですか?」
『言葉の通りです。そこはゲームの中であなたの職場です。』
「ここがゲームの中だって?職場だと?」
『ええ、そうです。今から順を追って説明しますね。』
仕事の説明をしないでゲームの中にいきなり放り込まれて酷い話だと思うも今の俺は矢沢さんの言葉に耳を傾けるしかない。黙って説明を聞くことにする。
『私は天才なのですよ。』
は?いやいきなり何を言ってんだこいつは。
『そしてゲームが大好きなのです。ゲームを作ることも大好きです。』
いやそれとこれと一体どういう関係があるんだ?矢沢さんの趣味嗜好とこの俺の状況になんの関係があるんだ?
『それでゲーム会社に勤めながら自作ゲームを作っていたのですがね、そのゲームにバグが発生してしまったのですよ。』
まあ自作ゲームに限らずゲームと不具合・バグは切ってきれない物らしいからな。
『そのバグが強力なモンスターを倒すと直せるという事は突き止めたのですが、自分でプレイしてしまうとモンスターを倒してもバグを修正出来ないのです。』
なるほど、それでプレイヤーとして俺が雇われたわけだな。
『そしてバグは強力なモンスターつまりボスモンスターやユニークモンスターなどの方が大きいのです。スライムなどを倒してもバグの修正には役立ちますが、スライムだけを倒し続けた場合1000年はかかってしまうでしょう。』
1000年だと・・・冗談にしても無茶苦茶な話だな。ゲームの中に閉じ込めて1000年出さないとか殺人事件だろう常識的に。まあボスモンスターを倒せば良い話なんだろうが。
『お話は大体お分かり頂けたでしょうか?つまりこのゲームでモンスターを倒して強くなりボスモンスターを倒し続けてバグを退治するのがお仕事の内容になります。』
まあそれは分かった。確かにゲームをするお仕事だ。だがゲームの中にいきなり放り込むのはいささか乱暴すぎやしないだろうか?
「まあ仕事内容については分かりました。とりあえず一度戻りたいのでログアウト方法を教えて下さい。」
『それなのですが・・・先程も説明したように私がプレイしてもバグを修正出来ないのです。』
うん?それはまあ自分でプレイしてたら改善する人間が居なくなるからそうだろうな。
『つまりですね・・・。そのゲームは現在バグでログアウト不能なのです。』
「なんだってえええええええ!!」
なんてこった。いや犯罪だろうどう考えても。拉致監禁だろう。
『いや~すみませんね。その分報酬は色を付けてバグ修正でサービス開始出来れば1億円お支払いしますので。』
「1億円!?」
日銭稼ぎの俺では一生稼ぎ出せない金額である。一瞬でログアウトの事などどうでも良くなる。
『ええ。それでどうにかお願いできませんか?』
これまでの話をまとめると、運営だと思っていた呼び出し相手はただの天才(異常者)でこのゲームをクリアすれば1億円貰えるってことだよな?これって俺にとっては最高の話じゃないか?
「分かりました。ゲームの中でモンスターを倒しまくれば良いんですね?」
『まあ早い話がそういう事です。それではプレイしていただけるという事でゲームの説明をさせてもらいますね。』
おっとそうだった。1億円の事ですっかり忘れていたがさすがに初見のしかも世界初のVRMMOをチュートリアル無しでプレイするのはいくらなんでも無謀だろう。
『まずステータスの確認からですが頭の中でステータスオープンと念じてください。』
言われたとおり『ステータスオープン』と念じる。
浅野徹
LV1
HP75/75
MP50/50
力10
敏捷8
防御9
魔力8
スキル 片手剣LV1(スラッシュ)火魔法LV1(ファイヤーボール)創造神の加護
至って普通の初期ステータスである。だがモンスターを倒すのならば最初からLV99もしくは100オーバーにしてくれれば良いんじゃないだろうか?
「LV1なのはなんででしょうか?LV100とかには出来ないんですか?」
『そうしたいのは山々なのですがバグのせいでそこまでは出来ないんですよ。』
まじか・・・使えないな。マジで10年くらいかかっちまうんじゃないか?
『その代わりといってはなのですが、チートを1つ付けておきました。』
これか創造神の加護って奴だな。
『それを選んでチェックしてみてください。』
早速『創造神の加護』を選択して確認してみる。
創造神の加護 任意のステータスを10倍にする
ステータス10倍だと・・・完全にチートだな。
「確かにチートですね。」
これがあれば1年位でクリア出来るのではないだろうか?10倍は強すぎるだろう。
『それとゲーム内速度ですが10倍としています。』
ゲーム内速度が10倍?どういうことだ?
『現在は1倍ですがプレイ中は100日プレイしても現実では10日しか経たないという事です。』
まじか。そんな事まで出来るのか。とんでも技術じゃないか自称天才は伊達じゃないってか。
『それについてなのですが、今後の連絡はアイテムボックスにあるノートを通して行います。10倍速中に現実世界と会話するのは不可能な為の処置です。アイテムボックスはステータスウィンドウの下に有りますので後ほど確認してください。』
いやいや今すぐ確認しますって。早速アイテム欄をチェックする。武器や回復アイテム等色々入っている一番下に連絡用ノートが確かにあった。連絡用ノートって小学生かよ俺は。
『何か質問等ありますか?無ければ早速ゲームを開始して欲しいのですが。』
色々質問すべきことはあるはずだが俺も一刻も早くゲームをプレイしたい。質問が出たら後でノートで連絡すれば良いか。
「大丈夫です。とりあえずプレイしてみます。」
『それではバグ退治頑張ってください。最後の1つだけ。未確認なのですがバグのせいで復活がうまくいかない可能性があるのでなるべく死なないでくださいね。』
「はい。ってなんですと!?」
最後の最後にとんでもない爆弾を残していきやがったぞ。
「ちょっと待ってください!復活出来ないってどういうことですか!」
しかし返事はない。あまりに酷い対応だ。いきなりデスゲーム化した現実を受け入れられないままぼーっとしていた」」」
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