第2章「三人の絆」
三人は大樹の下の小屋でほとんどの生活をしていた。もう孤児院に彼らの名前はあっても誰も探しになどこなかった。他の子供達は口々に言う。
「綾緋ちゃんはー?」
「壬くんはー?」
「どこにいるのー?」
「あ、灼祇くんはどこに行ったのー?」
先生は子供達に優しく言うのだ。
「あの子たちは、新しいお父さんとお母さんの所にいったんだよ?皆にも早く来てくれたらいいねー。」
名簿から彼らの名前は消え、孤児院にいないはずの三人…。しかし毎日の食事は孤児院から受け取っているようだ。彼等は今も大きな木の小屋で生活をしている。その小屋の中はいつの間にか変わっていった。見てくれは研究所の様になってゆき、室内も薬品で溢れていた。勿論、生活スペースもあるわけであるが、そこは灼祇の要塞の様に見えた。
「灼祇ー!あーそーぼー?」
「…今手が離せないから向こうに行っててくれ」
綾緋は灼祇を遊びに誘うが毎日同じ言葉の繰り返しだ。彼はここに来てから異様なほどに冷たくなった。彼等は既に15歳になっていた。灼祇はこれまでに沢山の賞をもらっていた。生活スペースにはその盾やメダルやらがたくさん飾られていて、どれも毎日綾緋によって掃除されているため、塵一つなく輝いている。それとは裏腹に彼の態度は冷たくなっていった。知らない大人の人が3人の家に訪れることが度々起こり、それはみんな灼祇の研究に携わっている人だと彼は言った。だから綾緋は彼にあまり関わらないほうがいいのかと思った。でも、そんなことはできなかった。理由はないが、何故かそうしてはいけない気がしていた。壬は彼女が笑顔でない時、それはいつも灼祇のせいだと思っている。彼は灼祇に対してあまりいいかはしていないが、彼のおかげで生きていけていると思うと、何故か嫌うことなどできなかった。
そしてこの理由を実感するのはまだもう少し先の話…。