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Prologue

ーーーーシィブルー、そこは広大なる大陸の極東に浮かぶ小さな島国。


そこに暮らす一人の少女から、物語は始まる。


………………………………


「これは?何処に置けばいい?てか置けるの、この辺」

「嫌ね、リオったら。そこの角だったら余裕で置けるじゃない」

「ここも今にも崩れそうだけどなーーーー…」


僅か8畳程の、せせこましい部屋の中で一組の男女がせっせと書類を片付けている。

その部屋には、未処理と書かれた書類があちこち山を作っていた。下手して崩せば脱出は容易ではないだろう。

リオと呼ばれた少女は、まるで崩れかけのジェンガにブロックを置くように、そっと新たな書類を山の一角に仲間入りさせた。


「レンさん、いい加減ここ片付けてよ。あと毎夜私の部屋に寝に来るのもやめて」


リオは呆れたようにため息をついて、レンと呼ばれた男性の方へと向き直って言った。


「あら、良いじゃない。襲うわけじゃあるまいし」

「…あのね、『男女が相部屋』この一言で、一般人は十分誤解するわよ。世の中は貴方みたいにトチ狂った輩ばっかじゃないんだから」


リオはまた呆れたように深ーくため息をついて、額に手を当てた。悩みのタネであるレンは気楽なもので、鼻歌など歌っている。

口調とくねくねした動きからつい忘れがちだが、レンは立派な男性であり、まだ齢16程のリオと共に寝ると言うのはやや犯罪じみた光景であった。


「はー…これが本当に研究課の世界的権威なのかしら。疑うわ」

「あらヒドイ。あと、私は世界的な権威ではないわよ。あくまでも私の研究が通用するのはこの国内だけよ?」


茶化しているのか真面目なのかわからない口振りでレンは反論する。



「…はいはい」


そしてリオは本日3度目の深い深ーいため息を吐くのだった。

・・・・・・・・・



リオ・ブライク…つまり先程のリオとは、第一特別諜報機関情報収集部隊隊長……まあ、要するに諜報部隊の隊長である。お偉いさん(仮)なのである。

ただ双黒と呼ばれる、この国では不吉とされる色の髪と瞳を持っていて、実際の境遇は報われないものである。それでも、凛とした美貌とハッキリした性格から、下っ端兵士からの人望は厚い。


レント・アイリシュ、通称レンは、魔術研究開発機関で魔素と呼ばれる物質と魔物の関連性について研究している研究者だ。

スラリとした身体つきと涼しげな美貌にファンも多いが、いわゆるオネェである。イケオネェである。木の妖精(祖父)と水の妖精(母)のクォーターで、サラッサラの薄青緑の髪が特徴だ。


そんな2人は昔っからの…といってもそこまで前でもないのだが、親友である。親友となるまでに大したストーリーも無く、レンの話によれば、「飲んでいたらいつの間にか意気投合して今に至る」らしい。


話を聞く限りコミュ力が高そうな2人だが、ひたすらに友達は少ない。尊敬はされるのだが友達はいない。この2人同士の結びつきがその数少ない一つだった。



……特にリオは昔あった事件によって、異性と親交を深めることを止めてしまった。


あの時の事は忘れられない。


ぽたぽたと涙を零しながら、幼子のように嗚咽を漏らして苦しむ彼女の姿は、レンの目にいつまでも焼き付いて離れなかった。


それから1年半ほど経ち、彼の必死のケアが功を奏したのかリオの心の傷は年々癒え、今では男性とも普通に会話できるようにまでなった。


あの時のことを思い出すと、レンは今でも心が冷えた。



・・・・・・・・・・



「……ンさ…レンさん!!」

「!…何かしら?」


レンがハッとしてリオを見ると、リオは困った顔で時計を指差す。


「レンさん、今日は6ノ時(6時)から会議じゃないの?もう5と45刻(5時45分)だけど」



…………


暫しの沈黙。


「ああああああぁぁぁ"ーッ!!」


この日、シィブルーの王宮に実に男らしい絶叫が響いた。

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