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曖昧恋色Lifes*  作者: 愛流。
2章 過去の記憶。
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知られざる過去

俺とタカトは近くの公園にあるベンチに座った。

公園なんて、久しぶりに来た……


「……それで?」


最速するように問いかけてくるタカトに、俺は一度小さく頷いてからすうっとその場の空気を吸った。



───



俺は幼い頃から引っ込み思案な正確で、小学校にいた頃はよく同級生の男子に嫌がらせをされてたんだ。

言いたいことも言えない、だから嫌がらせを拒むことができなくて、


「あんた達、やめなさいよ!」


そんな時に俺を助けてくれたのは、カノンだった。

カノンは保育園からの友達で、すごく気が強くて、涙もろい女の子だった。


「ありがと……カノン」

「気にしないで!それに、人に嫌なことするなんて最低だし、許せないもんっ」


正義感溢れるカノンの言動に、俺はいつしか憧れを抱いていた。


俺もいつかこうなりたい、

守られる立場じゃなくて、守る立場になりたい、

カノンを、守りたい……


そうして小学4年になると、ぱったりと俺への嫌がらせがなくなった。

当時の同級生と顔を合わせても、そっぽを向かれるが何もふっかけられることはなくなった。

つい嬉しくて、カノンに報告したら「ほんとに!?ずっと耐えてきたら、きっと神様がやめさせてくれたんだね」と言って満面の笑みを浮かべていた。


そのまま流れるように時は進み、5年になって俺は学校を転校することになった。

少なくとも過去にイジメのあったその学校から離れられるというのは、俺にとっては嬉しいことで、

両親からの突然の提案に、俺はただただ何度も頷くばかりだった。


そうして俺は、転校できるのが嬉しくて、カノンに何も告げることができずに転校した。

連絡先もわからなくなって、電話も手紙も送れなくなり、俺はカノンと会えることはもう2度とないと思っていた。



───



「そうやって、出会ったのが高校になってからで、」


長々と話し終えて、俺はふう、と一息ついた。


「……沢城って、そんな奴だったんだ」


俺も正直、今日話してみて驚いた。

どうしてこんなに変わったのかって、直接聞こうとは思ったが、なかなか聞く機会もなく。

あったとしても、きっと何かが俺を邪魔してそれを言わせないだろう。

その理由が、なぜか直感的に俺と関係のあることじゃないかと、俺のカンが言っている。


「ごめん、こんなこと話して……」

「いや、俺は嬉しかったけど」

「え……」

「い、いや!ハルタの過去を聞いて嬉しかったとかじゃなくて、」


そこまで言うと、少し照れくさそうにタカトは顔をそらした。


「…………その、ハルタが昔の話を俺にしてくれたのが、嬉しかったってゆうか…」

「タカト……」


ほんとに、俺はお前の親友でよかった。

そう心から思った瞬間であった。

普通、こんな暗い話を聞いたら、きっと黙り込んで何も言えないだろう。

だけど、タカト…………お前は、


「やっぱタカト……俺より変だよ」


ははっと肩で笑い言うと、タカトは「なんだよそれ」と少しムカついたようで顔をしかめた。


「でも俺、カノンに嫌われてたみたいだからさー」

「……なんでそう思うんだよ?」

「ん、いや……なんてゆうか、昔の友達に会ったら嬉しくなるのが普通だろ?」

「まぁ、な」

「だけどカノンは、俺のことすげぇ嫌ってるみたいだった」


あの冷めきった瞳をふと思い出す。

あれは結構…………効いたな。

思わず自身の両目を左手のひらで覆うように被せる。


「……大丈夫だろ」

「っなんで、」


ちら、と覆っていた片目をタカトに向ける。

タカトはいつになく真剣な眼差しであった。


「理由なんているかよ、俺がそう思うんだよ」


ふっと微笑むタカトを見てると、俺も自然と顔が綻んだ。


「さっすが、俺の親友……♪」

「まぁ、そこら辺の奴よりはお前のこと、わかってるつもりだけどな」

「!!」


今まで親友という単語に反論した覚えしかなかったタカトが、今日はさり気なく認めてくれた。


「ありがと、タカト……」

「ん、別に何もしてねぇよ」

「へへ……ぐす、」

「な、何泣いてるんだよっ」


思わず涙腺が緩み、そこから溢れた涙にタカトがいち早く気づいた。

少々慌てた様子で、自身のカバンから長めのタオルを引き出す。


「ほら、カッコ悪いだろ?早く拭け……」


そのままタオルを俺の顔に押し付けて、タカトは思いきり顔をそらした。


「ていうか、今泣くことじゃないだろ?ちゃんと真実確かめてから泣けって……」

「そうだよな……」


タカトからの言葉は、俺の中で励ましの言葉として受け取られた。


その後は、タカトの言い分をたくさん聞いた。

その言葉全てが俺の心に響き、また泣きそうになった俺に、タカトは更にティッシュを手渡してきた。



.



「ただいまー」

「おかえり、ハルタ」


家に帰り着くと、いつもいないはずの人物がリビングから顔を覗かせた。


「ね、姉ちゃん……!?」

「いやぁ、久しぶりね♪」



───ギュッ



「ちょ、何するんだよー!」

「いいじゃん♪3年ぶりの再会ってことでさ?」


俺の姉ちゃん、藍春サクラは3年前から短大学生になり、寮暮らしで家を出ていた。

そうか、今日だったっけ?帰ってくるの……

昔から周りに羨ましがられる程の仲良し姉弟で、ひとつの自慢でもあった。


「このっ、姉ちゃん!もういいだろー?」

「えっ、ハルタってもう甘え癖治ったの!?」

「そんなの、もうとっくに治ったわ!」


ったく、まだ子供扱いされてるのか俺は…

ぱっと姉ちゃんの魔の手から逃れると、俺はあからさまにそっぽを向いてリビングへと戻った。

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