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曖昧恋色Lifes*  作者: 愛流。
2章 過去の記憶。
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任されたこと

藍春ハルタside〜

放課後、俺はいつになくテンションが上がっていた。


「ターカト!帰ろー」

「帰ろー、ってお前……部活は?」

「あ、そうだった☆」

「な、ほんとどうしたハルタ……」


そしていつになく引きまくってるタカト。

それもそのはず、俺は今日今までにないくらいテンションが高いのだ。

もあっと数時間前の出来事が俺の脳裏で再生される。

俺たちの教室、2-Cに突如やってきた、沢城カノン。

偶然にも宿題を忘れてきた俺は、担任の命令の元、彼女からプリントを受け取ることができたんだ。

俺、今日宿題やってなくてほんとによかった……!

心から自身の記憶力の悪さに初めて感謝した瞬間だった。


「気持ち悪いなー、その顔」


ズバッと俺の顔について本音をこぼすタカトだけど、その言葉に反応もすることなく、俺はその顔で更にその時のことを思い出していた。


「あ、そういえば田端がハルタ呼んでこいって言ってたな」

「……は!?何だよそれっ!」


田端って、数学担の先生だよな…?

俺何かしたかな?

ちゃんと数学のプリント配布したけどな。

うーんと頭を抱えていると、「早く行ってこい」とタカトが目を細めて小さく笑った。


───俺、タカトの笑う顔……好きだな。


って、何言っちゃってんの俺!

さすがに今のは気持ち悪かったなと、とてつもなく反省する。


「何固まってるんだよ、早く行けっての」


最後に「待っててやるから、」と付け足して、少々照れくさそうに目をそらすタカトを見てるとほんとにかっこいいし可愛いなって思う。

羨ましくて、俺もこんなふうになれたらなって、心の中で何度思ってきたことか。


「おうっ、ちゃんと待っとけよ!バカトっ」

「なっ……それやめろって!」


俺はタカトの反応に十二分に満足して教室から出た。


俺は小中同じ地区の学校にいたけど、高校になるとガラッと違う所に来た。

そのせいか、高校で顔見知りなんて1人もいなかった。

高校生活を送ってるといつの間にか俺の周りには人が集まるようになっていた。

そんなとき出会ったのが、タカトだったんだ。

誰とも仲良くしようとしていなくて、そんなタカトを昔の自分に重ねてしまって、気づけば積極的に話しかけてた。


懐かしいな、初めて俺がタカトに話しかけた時のこと……。



.



「あ……っと、職員室行くんだった」


すっかり忘れていて部室に向かっていた足を無理矢理止める。

そうして職員室まで行くと、職員室前に見たことのある人影を見つけた。


「………………っ」


思わず目を見開いて、その人を見つめる。

どうやらそっちは俺のこと、気づいてないみたいで、何かを待つように扉近くで立ち尽くしている。


「ごめん、ちょっと……」

「……あ、」


どのみち通らなければいけない所なので、別に通れるんだけどせっかくだからと声をかけてみる。

沢し……カノンは、三つ編みを揺らしながら俺の方をちら、と見てすました顔でゆっくりとその場をのいた。


「…………」


俺はそれ以上何も言えなくて、職員室の戸を叩いた。



.



「お、藍春!遅かったなぁ」


数学担の女子講師、田端は俺が職員室に入るなり笑いながら持っているプリント類を机の上でトントンとまとめていた。


「あは、すみませんっ」

「いや、大丈夫だけど、沢城にちゃんと謝っとけよ?」

「え、ど、どうして……?」


意外な田端の言葉に俺は耳を疑う。


「今日は、数学係の2人にお願いがふたつあって呼んだんだ」

「へえ……って俺、いつの間に数学係になったんですか!?」

「えー?今日決めたんだって」


ていうか、カノンも数学係なんだ。

なんだか少し嬉しいような……


「あ、それより、お願いってなんですか?」

「あぁ、それな?ほら、知らないと思うけどこの間学校にある物置部屋を数学の資料置く部屋にしてもらえたんだ。てことで、藍春と沢城には明日からそこの掃除に行ってもらう」


────え!?


「それともう一つは、その下見ってことで今から物置部屋だったとこに行く。で、もうちょっと資料置いたりとかやることあるから手伝ってもらう」


──────えええ!?


俺の頭の中は、もうパンク寸前だった。

かあっと顔が熱くなるほど赤くして、思わず俯いた。

まさか、そんなことがあるなんて……



.



「じゃあ、ここのダンボールに入って資料を、棚に書いてる教材資料ごとに置いてもらうから」


それだけ言って、田端は他に用があるからと出ていってしまった。

気まずいことに、現在ここにはカノンと俺だけしかいない。

しばらく作業を行っていると、さすがに息が詰まってきた。

ちら、とカノンに目を向けると、黙々と作業に集中しているようで俺の視線にみじんも反応を示さない。

だけど俺からしてみれば、本当に息が詰まって、このまま死んじゃうんじゃねぇかってくらい苦しくて。

とうとう我慢ならなくなり、俺は思いきって口を開いた。


「久しぶり……だな」

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