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曖昧恋色Lifes*  作者: 愛流。
1章 変わりゆく日常。
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いきなりの登場

早朝、起きて窓を開けるとそこにはハルタの姿があった。

いつもは俺がハルタの家の前で待っているけど、珍しく俺が相手を待たせる立場になった。


「よっ、悪い遅くなって!」

「や、俺の方こそごめんなー?」

「ん、何が?」


両手を合わせて拝むように謝罪の言葉を述べるハルタの顔を見るなり、俺は頭上にはてなを浮かべた。


「昨日のこと、俺らしくなかったなーって……」


笑いながら言うけど、まだどこか元気がなさそうだ。

確かにハルタらしくなかったよな、今更ながら思い返して俺はうんと頷いた。


「大丈夫か?」

「だ、だだだ大丈夫だって!早く行こうぜ!?」


無理矢理にテンションを上げて言うハルタを見ていると少々心が傷んだが、当の本人はきっとそれで俺を欺けていると思っているから、とりあえずは口出しせずにいつも通り接してみることにする。


「そういえば、今日の宿題やったか?」

「えっ……そんなのあった!?」

「や、俺このことに関しては嘘つかねぇよ?」


あ、こいつ忘れたな?

そう思いながら未だに宿題のないことを祈っているハルタを横目で流し、俺は小さく笑った。



──



「で、忘れたのは藍春だけか?」

「ぅ、はーい…」


結局終わらなかったらしいハルタは、クラスメイトの前で叱られ大恥を掻くことになった。


「ぎゃははは、ほんとハルタってドンくさいよなぁー」

「なんか小学生が高校の服着て歩いてるみてぇに見えてきたっ」

「やだあ!それおもしろー!」


男女ともなく軽いからかい用語がハルタにダイレクトに投げつけられる。

それをひとつひとつ拾い笑いに変えて投げ返すハルタ。

ほんとに皆から好かれてんだな…

俺からしてみれば、羨ましいかぎりだ。


俺は絶対、そんな返しできねぇから、



.



───ほんと、タカトっておもしろいよなぁ!



あ、



───頭もいいし、運動もできてさぁ!



今、



──────私、タカトのこと、



──ガタンッ



「どうしたー、弥永?」

「あ、い、いえ……」


気づけば席を立っていた俺は、当然ながらクラス中の視線を集めていた。

頬から一粒の汗が流れる。

先生が少し驚いたように問いかけた言葉に、俺は目を反らしながら答えた。


「タカト、どうしたの?」


俺の後ろの席であるハルタが、背中を軽くつついて心配そうに囁く。

俺は後ろを見てる余裕がなくて、ただ一言「おう」と答えて、そっと椅子を前にズラした。


「答えになってねーよ、タカト」


はは、と乾いた笑いが背中越しに聞こえてくる。

心配してくれてる、それはわかっていてもなかなか応えることができなくて。

俺はしばらく後ろを振り向くこともできず、ただただまっすぐ前を向いていた。



───ガララッ



「すみません、」


突如教室の扉を開けたのは、ハルタにとって今最も気になっているであろう女子生徒であった。


「ん、どうした?沢城(サワシロ)


担任が首を傾げながら、沢城(?)の方を見る。


「このプリント、今週末までにやる数学の宿題です」

「おー、ありがとな!……あ、そうだっ藍春ー」

「ふあいっ!?」


いきなり呼ばれた名前に、後ろから間の抜けた声が聞こえた。

その顔が想像できてしまい、俺は含み笑いを隠せずにいた。


「お前宿題忘れたからなぁ、これ皆に配れー」


そう言いながら、担任は沢城の持つ多量のプリントを指さした。


「は、ははは、はいっ」


クラスメイトは、ハルタの過剰な緊張っぷりに大爆笑していた。

耳まで真っ赤にさせながら、ハルタは先生を通り越してその先にいる沢城の前に立った。


「重かっただろ……?」

「ん、別にそんなことないけど、」


目を合わせて話す2人の会話する様子を、俺は真面目な顔で見つめていた。

ほんと、ハルタはどうして沢城が……?

考えれば考えるほど深まる謎に、俺は完璧にお手上げ状態となった。


「ひゅーひゅー!何見つめ合ってんだよ~」

「ハルタぁ、お前もしかして沢城のこと好きなのかよ!」

「えーっ、嘘ぉ!」


口々に冷やかしの言葉を発するクラスメイトに、ハルタは「はぁ!?」と言う形相で皆を見ていた。


「…じゃあ、お願いします」

「え……?あ、お、おう…」


一瞬だけ少し迷惑そうに顔をしかめた沢城は、プリントを受け取ろうと無防備に前に差し出されている手に自身の持つ多量のプリントを言葉と同時に乗せた。

いきなり乗せられたプリントの重みに驚いたのか、それとも沢城のあまりにも冷淡で、無表情な所を見て失望しているのか、よくわからないがハルタの目は確実に見開いて視線を横に流している沢城を捉えていた。



───ガラ、



入る時とは対照的に、控えめに扉を開けた沢城は一度担任に会釈すると、黙ったまま出ていった。



.




「おい、大丈夫か?ハルタ」

「ん、何がー?」


休み時間になると、俺は机に突っ伏するハルタの頭をこつ、と軽く叩いた。

ハルタはゆっくり顔をあげると、とぼけた顔で返答した。


「まぁいいか……それより、」


先程の出来事で何か心情の変化があったのだろうと思ったが、特にそこまで考えていないみたいだ。

俺はとりあえず話題を変えるべく、ハルタのすぐ隣に置いてあるプリントを手に取った。


「これ、俺返してくるから」

「あっ、それ……え、か…いや、沢城に?」


多量に渡されたプリントは、当然ながら余りが出た。

ハルタが今何を考えてるのかよくわからないけど、とにかくプリントは返却した方がいいだろう。


「んなわけねぇだろっ…数学の田端にだって」


何心配してんだよ、ともう一言付け足してプリントを束ねる。


「それに知ってるだろ?俺が女子と話すの苦手だって」


はは、と軽く笑いながら独り言のように呟きながら扉に向かって歩いて行った。



.



教室を出てちら、と2-Dを横目で見る。



──ドンッ



「っ……!?」


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