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続・失せ物探し

新年明けましておめでとうございます。・・・・・・文章力低すぎて泣きそうです。

 「おい、見ろセレナ。キメラが死んでいるぞ」

「ああ、首が落とされているな・・・私の知る限りでこんな真似のできる獣は、この山中には存在しない」

これは野人とやらの仕業なのか、セレナが考えている間に、相棒が速足で近寄り死体を確かめていた。

「これは・・・」

「どうだ?」

「鋭利な切り口だ。だが刀の、刃物の鋭さだけで可能な業じゃねえ。これが野人の仕業とするなら、魔剣と同等か。少し落ちるぐらいの腕だ」

トーレルの貌に剣士の嬉悦が浮かび上がる。

「見ろ、セレナ。切り口の酸化具合から云って、まず尾の蛇を両断、そのあと、届かなかったのか山羊の首をかなり深く切り裂いて、最後に獅子の頭を叩き落とした。周囲の荒れ具合から不意を突いた一撃だろう」

「うん、切り落とされた蛇の尾が無いから、キメラはここまで・・・」

 あれ?

「どうした、セレナ」

推理を言いかけで終えたセレナを巨漢が視線で咎めた。

「いや少し待て」

何かに気付いたのか、魔術師の武器である杖をそこらに置き、ダークエルフが腰の短剣を抜き放った。なにごとかとトーレルが問う間もなく、セレナはその場にしゃがみ込み、首の無い獅子の胴体を触診し始める。

「・・・ああ、よかった」女の口からは、安堵の息が漏れた。

「いや何がだよ」

「いいからトーレル、この獅子の死体を、消化器系を傷つけないよう、まわりの肉だの、骨だの取っ払ってくれるか」

「なにかあるのか?」

「とにかく、急げっ!!」

「お、おう」

分からない、トーレルには何が起きているのか欠片も予想がつかないが、この女が珍しく声を荒げる理由が、なにかあるに違いない。

背中のクレイモアを抜き放つ。目の端で、セレナが間合いの外に出たのを確認しゆっくりと深く、息を吸い込む。

 それにしても、難しい注文だ。その手のことは肉屋に頼めと言いたくなるが、キメラの解体なんて真似が出来るのは、王宮御用達の料理人ぐらいのものだろう。

しかし、トーレルは魔剣である。そこらに掃いて捨てるほどいるような凡百の剣士とは違うと自負している。人には不可能に思える様なことを出来るから魔剣と認定されたのだ。

キメラを観る。外形は即座に消失し、威風堂々たる獅子の筋肉の、骨格の継ぎ目が見えてくる。

「ハ・・・ぁっ・・・」

呼気を吐き出し、槍のように長い剣を振るう。

音は一度しかしなかった。

剣に切り飛ばされた肉や骨が数メートル先の地面に落下し重苦しくも、妙に汚らしい音を撒き散らす。

「・・・見事だな」

ダークエルフの口は、剣士に妙技に、無意識の内に賛辞を述べえていた。

剣が幽かな音を立て鞘にしまわれる。気が付けば横倒しになった獅子の胴が、腐敗の始まった内臓を初夏の日差しに晒していた。


「ああ。そういうことかよ」

なるほど、とトーレルが頷いている間にセレナの短剣が内臓を切り裂き、中から目当ての者を引きずり出す。獅子の唾液にまみれたそれは、断じて猿や、ゴブリンではなく、意識を失った人の子供だった。

「珍しい、というよりも運がいい。敵軍一万の中に単身乗り込んで、無傷で戻ってくるようなものだ」

「いや、それは神話の英雄クラスじゃねえか?」

「神話の英雄ヤフタレクでさえ、最後は竜に呑まれて死ぬのだがな」

相棒のダークエルフの言葉が正しいならば、この子は一生分の運を使い果たしたか、それとも英雄に匹敵するほどの幸運の持ち主ということになる。

「恐らく、この子が呑まれた直後にキメラは首を落とされたのだろう、と私は思うよトーレル」

「うーん、獅子の口がでかかったことも関係あるんだろうが」

それにしても、野人はこの少女を喰わせて、油断したところを襲いかかったのだろうか?だとするならば、野人は・・・・・・。

「野人は、人なのか?」

トーレルの口からそんな疑問が転げ落ちた。


「人に決まってるだろうトーレル。奴は恐らくこの少女を助けようとした、けれど間に合わずと云うやつだよ」

ほら、と野人を擁護しつつ、セレナがキメラの首なし死体を指差す。

「いや、ほらって・・・」

「お前が言った通りだよ。奴は蛇尾を両断して、山羊頭を切ったのだろう?

だけど周囲に蛇尾はない、」

「・・・野人には逃げる獅子を殺す理由がない?」

「ああ」

まあ、テリトリーの外まで追うぐらいはしたかもと、最後にセレナは付け足して話を締めくくった。


「それよりも、この子を蘇生させないと。直接接触式の回復術を使うから、トーレルはその辺の木陰にいろ」

「・・・なぜだ?」

「そりゃお前、子供が怖がるだろう?」

くそめくそめと、巨漢はこの世の理不尽を感じつつ、黙って木の陰に下がることを選択する。いい男には沈黙が似合う、とかなんとか酒場のオヤジがペラペラ喋っていた記憶がある、ような無いような。

 そんな話は置いておいて、兎に角ただでさえややこしい、相棒の魔術行使に万が一の事態が在っては困る。

「魔法だの、魔術だの・・・はあ」

トーレルは、一人、木陰で深く溜め息をつく。手を突いた人面の木の瘤は、そんな巨漢を嘲笑っている様だった。


 いや、お前の魔剣も魔術に大別できるのだがね、トーレル。


魔法も出る予定です。

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