犬神様が幼稚園へ…
そのまま「絶対来て!」と勝手に約束されて、一応その幼稚園とやらを見に行った。…家に帰った。((
「………ただいま…」
「おうおかえり、どしたいそんな顔して」
「……夜に噺す」
「あいよ、ちゃんとまとめとけよ?」
闇は無言で頷いた。闇が話を夜に後回しする時は自分でも話をまとめきれてない時だ。…なんか、まとめるってゆーより悩んでるっぽいけどな。自分で言うのもあれだが、俺の予想は良く当たる。というのも俺の名前、柊という植物の花言葉は先見の明。未来を見通す力。それが俺の能力だった。
「………柊…」
不意に闇が話しかける
「ん?まとまったかい?」
「…俺さ……どうしたらいいかな…」
「……はい?」
「………自信が、持てなくて…」
「」
あの、おまっ、ホントに闇ですかあんた。
「……今日、公園で……
そのままかくかくしかじかで説明されてなんとか理解完了。
「…で、先生になれと言われ幼稚園いったら丁度募集中だったと。」
「……(コク」
そりゃこうなるわな。ここに来て新しい事をする度覚える度、おっかなびっくりでいつもの険しさも冷たさも全て無くなっていた。ふだんの生活でもそうなのにいきなり仕事とは、そりゃこうなるわな。(二回目
なんやかんやで俺も承知して、電話もかけてみたが募集人数三人に対して希望者は五人だった。しかし見事合格。子供から話を聞いたんだろう。
翌朝…
「よ、頑張れよ!これはチャンスだぜ!!」
「……ああ…言って来る…」
「元気だせよーもっと気合い入れろ気合い」
「…………おう」
やはりずっこける柊。しかし俺はそれどころじゃない。酷く緊張して肩も強張っていた、嫌悪感が無いのは子供の相手しかしないからだろうか…そのまま行ってこいと背中を押され家を出た。
外に出る時の格好は柊にしつこいほど聞かされた。そのためあって今は銀髪は黒く染め、服も青いパーカーにスキニージーパン。普通のジーパンはデカ過ぎたため諦めた。幼稚園に着いた頃には少し汗ばんで、緊張しきっていると改めて感じ、それと共にらしくないとも思っていた。少し間を置いて敷地内に入る。出迎えたのは教頭だった。
「こんにちは、貴方が新しい先生?」
「…はい。"涼"と、申します…」
「よろしくね涼先生。」
ここではあえて本名は言わない。闇、なんて名前そうそうあるもんじゃないしな…
「まずは園長に挨拶なさいな、あそこの角右ね」
「…ありがとう、ございます」
相手が俺と噺し続けるのを拒んでいるのが見て取れる。これだから嫌なんだ、俺は終始真顔だった。さて、園長…だっけか。行くか。
「……失礼します。」
「お入り下さい、ようこそ幼稚園へ」
部屋に入ると、物腰の柔らかい中年の女性がいた。
「"闇"さんですね、どうぞお気を楽にして下さい」
「えっ、あの、俺は…」
「結構ですよ、子供達から聞きました。髪も次から染めるなくても大丈夫です。」
そういやあいつ等の前では…クソ、やっちまった…
「子供達から随分人気で、よく自慢されますよ。優しくてかっこ良い方だと」
「は、はぁ…優しい……;;」
「ええ、ではクラスに案内致します」
…で、色々みて回って今は桔梗ぐみに居る。ここはクラスの名が花の名らしい。あいつ等から聞いたのか、桔梗ぐみの奴らはほとんどが俺を"わんわん"と呼んでいた。
「ねーね、わんわんご本呼んでー」
「闇先生てどこから来たのー?」
「涼先生は彼女いんの?なぁ美人?美人?」
「わんわん遊ぼー!」
人の子って…群がるのが好きだな…
「……一人ずつな…」
「じゃあボクが最初!!」
「オレだよー!!」
「わたし!わたし!!」
「ずるこみしちゃいけないんだよー!!」
叫ぶのも好きらしい。ハッキリ言って面倒くさい。でも、微笑ましかった。
人の子がはしゃぎ群がり言い合っている途中で三時の鐘がなった。
「あ、おやつだ!」
「おやつおやつ!!」
「今日はなぁにー?」
一気に子供が菓子へと走って行く。俺より菓子のほうが価値が高いと。ほぅ、生意気な…
なんて変な事を考えたりしていると、台所に居る先生が困った顔でおろおろしていた。
「……どうかしましたか…」
「あ、涼先生!先生、お菓子って作れますか?いつも作ってる先生が今日はお休みで…」
自分は作れないから俺に作れと、ここの連中は皆生意気らしい。まあいい。菓子作りはこれでも得意だ。
「……作れますよ…何にしましょうか…」
「えっ、あっ、く、クレープを…」
「………承知」
パーカーの袖を捲り上げ卵に手をかける。ふと、
「あの、…子供達の嫌いな物って…?」
「えっ?嫌いな?」
しかしすぐに理解した先生は人参が嫌いだと教えてくれた。人参ね…調理しやすくて助かる。ここからが腕の見せ所。見せはしないがな。
「…では、先生は子供達をなだめておいてください…俺作っときますんで」
「はっはい!助かります!!」
だろうな。作れねえんだから。とりあえず大人数分のクレープを作らねば。すると部屋の影という影から黒い手が伸びてきた。これも俺の能力の一つ。「影追い」。これで時間短縮出来る。俺はさっそくやるべき事にとりかかった。
お食事とか色々飛ばして…((
なんやかんやで一日中目は成功。園長にも柊にも褒められ、複雑な気分になった後酒を飲み床に就いた。思い返せば、たった一週間で自分がどんどん変わっていってた。これからどうなるのだろう。将来の自分が不安でもあり、楽しみでもあった。…もう遅いな、おやすみ…
とか言って腹黒っぽくなるとは思いもしなかったでしょう((
そしてご主人様が、家族が出来るとも…