初めてのおつ○い
そんな話をしてた頃から一週間経った。今の生活にもだいぶ慣れて、近所の子供なら顔見知りになった。家からはで出ないが。柊はバイトがあるため朝は居ない。昼過ぎに帰ってる。それまでの時間が暇だった。
「……面白くないな…」
帰ろうか、とも思ったが山への道が解らない。犬なんだから匂いを辿れと言われてもこの人だかりじゃあ嗅ぎ分けにくい。どうしたものか…。
「…暇。」
それ以外考えられない。暇以外になにがあろうか。酒瓶を傾け、飲もうとしても朝っぱっから飲んでいるためもう飽きた。酷い安酒だ。酔えればまだ暇を誤魔化せたろうに…寝るにしても目が冴えてしまっている。
「今は…昼過ぎか……」
いちいち独り言を言う。じゃないと暇すぎる。昼過ぎか、小腹が空いた。何かないかと冷蔵庫をあさりに行く。
「………ん?;」
奥の方までくまなく食料を探す。
「……………ん?;;」
全ての段を探してみたが…
「……無い………」
最悪だ。こんな時に限って…。久々に料理でも作ろうと思ったがあるのは茶と醤油のみ。ここまで空に出来るのか、ある意味感心する。つか俺が感心して良いのかこれ。冷蔵庫自体知らなかったのに…まあ良い。それより飯だ。どうしようか…
「……買いに行く…か?」
朝は嫌いだ。俺は夜行性だってのに、早くに起こされてその上働くなんて冗談じゃない。次は昼のバイトを探そう…昼?あ、そろそろ昼過ぎか、よっしゃ帰ろ。((
俺は喜々として帰る支度を始める。先輩が呆れて見ているが知ったこっちゃねえ俺は朝が嫌いなんだよ。背中でそう語りながら帰り道を歩いて行った。
「飯どーしよっかねえ…」
他の家からカレーからパスタやらの匂いがする。腹減ったなぁ…、カレーにしようかな。そう考えながら家に戻ると作ろうとしていたカレーの香り。ああ、闇作ったんだ。気が効くねえ。………っておいちょっと待て。
「冷蔵庫にカレー粉なんてあったか?いやそもそも冷蔵庫空だったような…」
ま さ か
急いで家までダッシュして玄関の扉を開ける。さらに強くなるカレーの匂い。そして台所に居たのは…
「…ん、おかえり。早かったな」
カレーを作る闇の姿。なんだこの光景は、これは夢なのか、俺はまだ寝てるのか、つかどんな夢だよ長過ぎだろおい。
「何をごちゃごちゃ言ってる…食うならさっさと食え。」
「え、俺口に出してた?」
「ああ、随分と失礼な事を長々とな。」
気が付けば先に食べている闇。どうやら夢じゃない。…って言って良いんだよな?な?
「冷蔵庫空じゃなかったっけ…」
「ああ、空だったぞ。見事にな」
「これ、どうひて…((」
「買った。それとお前『どうひて』になってる」
「…買った?お前が?スーパーで?」
何回言わせるんだ、と言うようにうんざりしながら頷く闇。マジかよ…
「……う、上手く買えたのか?お前…」
「なんとかな、外国から来たと言ったら教えてくれた。なにもかも解らないもんだから」
そーゆーところで頭いいのなお前。それなら誤魔化せる。逆に俺居なくて良かった。居たら今頃初めてのおつ○いみたいになってた。
「良く我慢出来たな。臭かったろうに…」
「吐いた」
「えっ」
「吐いた」
吐いたんだ…まぁ、上出来。これで飯には困らないだろう。…ホントに、あっという間に慣れてくなぁ…やっぱ単純だからかね。