broken hearted
「…は?」
闇以上の化け物が居るものか、居たらこの世の終わりだろう。犬神と言えどもこいつの能力は闇と影。下手すりゃその闇にいつ飲み込まれるか…
「そうじゃない。俺の言った化け物はお前だ。……白を切るのも大概にしとけ」
ばれた。そうさ、もう1人の化け物は俺。周りには気付いてないフリをしてるが、俺の中には化け物が…いや、もう1人の人格が居る。この"俺"は、ただの偽物、"あいつ"により作られた、別の人格。最初は本当に気付かなかった。気付いても信じたくなかった。
「…化け物…ねえ…」
「……認めぬ気か?面白いのに…」
「認めねえ訳じゃねえさ。お前よりは化け物じゃないし」
「ふふ…酷い言われようだ」
初めて"あいつ"を知った時は、俺も自害しようかと思った。その存在自体はどうでも良い。その性格が嫌だった。
"あいつ"の性格は最悪だった。殺気だって、乱暴で、とにかく人の血肉を求めていた。そして何より………闇に似ていた。 その暗い瞳。闇と同じ大量の、むせ返る血の匂い。どんなに明るく笑っても、それはただの演技で。その顔で、殺気を放ち妖しく微笑めば、目の前の人間は皆死んでいった。まるで壊れたオモチャの様に、狂ったように殺していく。微笑みが死の合図。全てが同じ、兄弟のようだった。何故"俺"が闇と似てないのか、全部理解した望まぬ出会い。
「本当だよ、化け物はお前だけじゃあなかった。本当にど忘れしてたな…記憶が"壊れた"みたいにさ」
"俺"は"あいつ"を、「broken hearted」…"壊れた心"と呼んでいる。
"壊れた心" なんて、…酷い言われようだ。