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剣士志願者の聖譚曲—the Knight's Oratorio—  作者: 烏合 小鳩
第一部:「俺、剣士を志願します」
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004行間1「独裁者」

 アルフレッド達の住む大陸ーートリトンヘイム大陸、それは、世界地図上では南東に位置する。

 世界地図は、北限を新大陸の魔物の居住域と手前側まで、中心を世界地図作成に携わった国家のある大陸に設定して作られた。

 その中心となる大陸とは、国家アークライトの位置するアレスター大陸だ。

 アークライト国ーーかつて経済革命を世界で初めて起こした国。魔法を応用した職業制度は、全世界に瞬く間に広がった。それが、百年前の話だ。

 現在はアークライト国を統治する者『クワトロ・アークライト』が、国の政治、軍事を全て取り仕切っている。

 しかし、それはとても一方的ーー民にとって利益は殆ど無く、苦痛でしかないーーなものだった。

 重税、兵役、奴隷制の様な厳しい賦役を課せられ、勿論民からの信頼は全く無かった。

 だが民は、表面上だけは忠義を取り繕わなければならなかったーー少しでも反抗の意思があると、消される。一揆を企てた民衆も少なくは無い。だが、それらは全て闇の中に葬られてきた。

 また、世界で最も技術が先進していた国だったにも関わらず近年はその経済力も低下している。

 なぜなら、重要な経済を回す手段である国交、貿易が全く行われていない。つまり、『鎖国』状態だ。

 これらのことを踏まえて彼にはこんな通称が付けられた。



『独裁者』



「で、君は何しにきたの?」

玉座に座り、足を組んでいる男ーークワトロ・アークライトが呟く。

 「え……ええと、私はアルバニア国の使者です。

 領主様が、国交を回復することをお望みしており、その旨を伝えにやって参りました」

「誰も通すなって言ってんのに、誰がやってんだ、門番……

 あ、その件はムリ。前も言ったしダルいから」

「此方の経済状況は現在デフレ傾向にありまして……貿易によって物流を捗らせないと、国の経済が……

 大陸の位置を考慮すると、他に頼れる国家は無いのです!どうか、宜しくお願いします!!」

 使者が頭を下げる。

「土下座」

「え?」

 使者は目を丸める。

「土下座してよ、それなら考えてあげる」

「分かりました……」

 使者は膝を折り、手をつき、地に頭を伏せた。

「くっ……本当にやってる!あははは!!

 なあ、見ろよ!ウォード!!滑稽だろ!?」

 ウォードと呼ばれた、クワトロの側近に話を振る。彼は腰の両側に長剣を一つずつ携えている。

「こいつは傑作だ!ははは!!」

 クワトロは散々笑い散らした後、急に冷静にーー冷酷にーーなった。

「もう飽きた。死んで」

 顔を上げた使者は事態を把握出来ない。突然の死の宣告に、何もなす術は無い。

「ウォード、やっちゃって」

 クワトロの命令に、眉一つ動かさずにウォードは従う。

 両腰の双剣が勢いよく抜かれる。

「ひっ……ひいいいい!!」


 断末魔と共に、使者は死者と化した。

 その体には、綺麗な十字が刻まれていた。

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