003 3「漆黒の甲冑」
敵の出現場所へ、二人は走る。そこは恐らくアルフレッドが通ってきた入り口だ。アルフレッドそこから一直線でリングの場所まで来たので、元来たルートを辿って行けば敵と接触出来ると考えた。
そして、アルフレッドとライドの読みは当たった。
アルフレッドの頭上を何かが通り過ぎる。
「モタモタすんな!そいつはコカトリスだ!つつかれると石になるぞ!」
ライドの忠告を聞き焦るアルフレッド。再び飛来するコカトリスを払うために目を閉じて出鱈目に手に持った木刀を振り回す。
「来るな〜〜!!」
偶然だろうか、一撃だけ鈍い音がした。
アルフレッドは恐る恐る目を開けると地面に墜ちた一羽の鳥ーーコカトリスだった。
「うん、今のはマグレだ」
「マグレも実力の内じゃないのか……」
「気を抜くな、まだ敵は一掃していないぞ」
落胆したアルフレッドは、ライドの言葉で再び気を引き締める。
ライドの言葉通り、次の波が到着したみたいだった。
「こいつはちょっと厄介かもな……お前にとっては」
ライドはアルフレッドに目を傾けながらぼやいた。
現れたのは、小竜兵士<リザードマン>。硬い皮膚を持ち、並の攻撃は全て弾かれる。また、武装としてククリ状の刃物を装備し、その上少しばかりか知能を持つ。ただ攻撃するだけではなく、攻撃を見切ったり、防御したり、隙を突いたりと戦闘の幅は通常の魔物と比べて広い。
「恐らくこいつらが最終波だな」
「何でそう言い切れるんですか?」
「小竜兵士は頭がいいからな」
「……?」
ライドが言ったのはこうだ。知能があるということは、魔物としての階級も高い。それ故、グループの統率役として駆られることが多い。本当の親玉が自ら敵地に踏み出すことはまずないので、中将クラスの魔物の方が突撃部隊の長になる可能性が高いのだ。
「三匹か……二匹は俺に任せろ。後の一匹は頼んだ」
ライドが口火を切って動きだす。手慣れたモーションで、いとも簡単に三匹を二手に分断させた。
「よし……っ! やってやるぞ……」
アルフレッドが小竜兵士一匹と睨み合う。此方が木刀であるのに対し彼方は真剣。どう考えても分が悪い。敵もそれを理解しているのか、猛然と攻撃を仕掛けてくる。
それを防ぐのに手いっぱいで反撃に移れないアルフレッド。それを見かねたライドは、何かを投げつけた。
「こいつを使え!」
既に一匹を倒したライドが、それからククリを剥ぎ取ってこちらに投げたのだ。
これで武器は五分五分。後は実力のみが勝敗を決める。
「はあぁっ!」
鍔迫り合いに競り勝ったアルフレッドが一気に反撃に出る。むき出しになった胸部に一撃を叩き込む。
しかし、攻撃は通らなかった。甲殻のような皮膚に弾かれたのだ。
「どうしろってんだ……」
アルフレッドが考える内に小竜兵士も体制を立て直し、剣を構える。
ーーどこもかしこも硬い皮膚で覆われてるわけじゃないはずだ。必ず、弱点があるはず……
まず最初に思いついたのは口内。しかし、ククリのリーチでは接近する必要があり、また噛みつかれる危険性があった。
ここで、アルフレッドの頭の中である発想が浮かんだ。
腹部、切腹、鳩尾、急所、腑……
一つ一つバラバラなピースを繋ぎ合わせていく。
人間ならば、急所を守るために防具を装備する。しかし、魔物にはそのような手段は無い。二足歩行で人型の小竜兵士は鱗で全身守られているといっても、身体の柔軟ために、筋肉の伸縮の激しい場所には動きを阻害する鱗など邪魔にしかならない。
脳内で次なる動きを整理し、攻撃をいなしつつもモーションに入る。
「ここだあああああ!!」
今度こそ、小竜兵士の腹部に刃が滑り込む。柔らかな肉に刃を引くことによって、それは断裂し、小気味良い音を立てて大量の血が噴出し、やがて背中まで刃は貫通し、躯は綺麗に二つに分断された。血の供給の絶たれた半身は幾度か痙攣を繰り返し、やがて息絶え完全に動かなくなった。
「はぁ……はぁ……」
初めて魔物を斬った。アルフレッドは、悪である魔物にも関わらず、それを殺したことについて罪悪感を感じていた。命のやり取りがここまで熾烈なものとは知らず、何とも言えない感情を抱いた。
ぱちぱちぱち……
突然、背後から乾いた拍手が聞こえる。
そこには、二体の小竜兵士を倒し、血塗れになったーー返り血に塗れたライドが立っていた。勿論傷一つ無く、何食わぬ顔をしていた。
「中々いい戦いだった。あの場面でそこまで頭が働くのは素人にしては上出来だ」
「俺、何も間違ってないですよね?」
「何が?」
「血って凄いですよね。どんなに興奮していても、一気に正気に戻してくれる」
「殺すのを躊躇っているのか」
「そんな事ないです。ただ、怖くなって」
アルフレッドは三つの死体を眺める。
「あれは悪だから殺していい。それなら、悪って誰が決めたんでしょう」
「誰がなんて無い。大衆がそう言っているから悪なんだ」
「なら、大衆が人間を悪としたらどうなるんでしょう。人が人同士で殺し合いをしなければならない。そして、あれと同じようなものが沢山できる」
「弱いな」
予想外のライドの発言に、アルフレッドは驚く。
「一番怖いのは、人と殺し合うことなんかじゃない。自分が死んだときだ」
「……そりゃ、死ぬのは怖いです」
「いつ死ぬか分からない。死と生は隣り合わせだ。予想出来ないから、恐怖なんだ」
「何が言いたいんです?」
「何も恐れることなんてない」
「え?」
「死は覚悟しておけば怖くない。いつ死んでもいいように準備しておけばいいんだ。そうすれば、怖いことなんて、一つもねえよ」
「……なんで、ライドさんはそんなに強いんですか?」
その質問に、ライドは顔を曇らせた。それは笑ってはいるが、先ほどまでにはない悲嘆を含んでいた。
「……こんなの、虚栄だ」
そして、我に帰ったかのように先ほどまでの顔に戻る。
「なーんてな!そりゃ、俺が最強、『無敗の猛者』だからに決まってるだろうが!」
「はいはい、分かりましたよ……さ、リングに戻りましょう」
アルフレッドが呆れてリングに戻るよう促した。
「お疲れ、怪我はないか?」
帰還すると、見覚えのある大男がそこにはいた。
「はい、大丈夫です」
怪訝そうな顔をするアルフレッドに対し、大男が喋る。
「ああ、自己紹介がまだであったな。儂はバルドロ・アームストロング。剣士訓練所長を務めさせてもらっている」
その男は、訓練所入り口ですれ違い、一言会話を交わした者だった。
「あー、疲れたー」
グレイブが帰ってきたようだ。手には大きな袋を携えている。
皆がそれに注目していると、グレイブが説明を始めた。
「俺が行ったところには骸骨剣士<スケルトン>がいたんだよ。あいつら凄い硬いんだよな。剣じゃ斬れないし……」
「で、どうしたんだ?」
バルドロが圧をかけながら言う。グレイブは弁明するように応えた。
「そ、それで、戦ってるうちにバラバラになったんだ。ピクリとも動かなくなって……道端に置いたままにするのもアレだから、袋にいれて持ってきたんだけど……」
「成る程な……」
バルドロは目を伏せ、深く息を吸う。
「そいつから離れろォォ!!」
バルドロが目を見開き、グレイブの持つ袋を指して叫ぶ。
その瞬間、袋の中から鋭利に尖った骨が四方に放たれた。
幸い、バルドロの警戒のお陰で誰も怪我はしていないようだ。
しかし、事はそれだけでは終了しなかった。四方に飛び散った骨が再び一箇所に集まり、一つの形を形成した。
「な……!生きてたのか!?」
その姿は、まさしくグレイブと対峙していた骸骨剣士<スケルトン>だった。
「正確には元々生きてはいない。アンデッドだ」
バルドロが拳を構える。
「え、あの人、剣も無しに素手で戦うつもりですか?」
アルフレッドがライドに尋ねる。
「あの人は剣闘士って言ってな、剣士と格闘家のスペシャリストだ」
「へぇ……」
「さて、久々にお手並み拝見させてもらおうかね」
バルドロが左手に力を集中し、そこに仄かな陽炎が出来る。
「行くぞ!魔物よ!!」
一歩踏み出した、と思いきや、バルドロの姿は骸骨剣士の目前。
「はあああ!!」
バルドロが繰り出したのは『短頸』。それにより、骸骨剣士は後方に大きく吹き飛ばされた。
「グレイブ!!」
「了解ッス!!」
グレイブがバルドロに大剣を投げつける。バルドロはそれを空中で捕まえ、そのままの勢いで骸骨剣士へと突き刺した。
それは綺麗に骸骨剣士へと直撃する。
相手の骨から嫌な音がし、それが修復出来ない程までに砕け散ったことを確認すると、バルドロは踵を返した。
しかし、骸骨剣士は死んではいなかった。
頭蓋のみを浮遊させ、突進し襲いかかる。
バルドロが身構える。だが、敵の狙いはバルドロでは無かった。それ故、骸骨剣士の頭蓋はバルドロを通り過ぎる。
「いかん! 狙いはお前らだ!!」
その骸の直線上には、アルフレッドが無防備に立っていた。
「避けろ! アルフレッド!!」
グレイブが叫ぶ。しかし、迫り来る頭蓋を前に逃げる余裕など無い。
そして、頭蓋がアルフレッドに到達した。
ライドは、その瞬間を見逃さなかった。
「こんな素人が……居合だと……?」
アルフレッドは咄嗟に剣を抜いていた。その一の太刀で見事に骸骨剣士頭蓋を斬り抜いた。
しかし、それは特定の上級職でしか使用出来ないはずの『居合抜き』。
アルフレッドは、それを無意識の内に発動させていた。
「倒したのか……?」
アルフレッドが恐る恐る静止した骨に近づく。今度こそ、絶命したみたいだ。
「無事か、アルフレッド。今のは見事だった」
バルドロが戻ってくる。
「さて、こいつの処理をしなければならぬが……」
バルドロが悩むのも無理はない。骸骨剣士の様な不死ーーアンデッドを完全に成仏させるためには、ちゃんとした儀式が必要になる。それを可能なのは、僧侶などの限られた職業だけだ。
現在の剣士集会所内にはそれを出来る人材がおらず、途方に暮れていた。
しかし、その事実は解決される。ーー新たな問題と引き換えに。
「僕がやりますよ、バルドロさん」
それはアルフレッドにとって、懐かしく、嬉しい声だった。
「騎士さん…!?」
漆黒の鎧を纏った騎士が、大きな棺ーーアンデッドを葬るためのものであろうーーを携えて佇んでいた。
アルフレッドの喜びとは裏腹に、訓練所の人間は顔を曇らせた。
「よくも抜け抜けと戻ってこれたな」
「もうここには来るなと言っておったであろう? それを自ら破りにくるとは、喧嘩でも売っているのか、貴様は」
「……」
グレイブ、バルドロは人が変わったように刺々しい態度を取る。唯一、ライドだけが無口で成り行きを傍観していた。
「僕は単に警備隊としての役割を果たしに来ただけです」
漆黒の騎士はスケルトンの骨を棺に詰めながら言う。
そんな無抵抗の騎士に、バルドロは追い打ちをかける。
「ここは貴様の居てよい場所ではない!! 帰れ、イワン・マクラーレン!!」
バルドロの叫びは、単に騎士を嫌っているだけの様では無かった。恰も、本当に騎士が悪者であるかの様な物言いに、アルフレッドは聞こえた。
「本名を明かすのは卑怯ですよ、ス……おっと、バルドロさん」
「貴様……わしを愚弄するかぁ!!」
「やめてください!!」
アルフレッドはとうとう耐えきれず、二人の間に割って入った。
「何でもっと仲良く出来ないんですか? 理由があるなら教えてください。
僕は少なくとも、騎士さんはいい人だと思います。それを知っています。
バルドロさんもいい人です。二人とも、こんなことは似合わない……」
アルフレッドのお陰か、バルドロは冷静になり、退いた。騎士は何事もなかったかのように作業を続け、やがて棺に詰め終わった。
「何か空気も悪くしてしまったようなので、僕はこれで帰ります。また会える日まで、さようなら」
騎士は一礼をしてーーアルフレッドには手を振り、棺桶を率いて帰っていった。
それから、訓練所内のテーブルでバルドロは頭を抱えて座り込んでいた。
それを目撃したアルフレッドは、事の真相を聞くために彼に近寄った。
「お疲れ様です。話があるんですがよろしいでしょうか?」
「ああ、お疲れ。まあ、掛けたまえ」
アルフレッドは椅子に座って、本題を切り出す。
「騎士さんの事なんですが……」
やはりか、という感じで、バルドロはため息をつく。しかし、覚悟は出来ていたのかすぐに教えてくれた。
「彼の名は『イワン・マクラーレン』。ここの卒業生さ」
今日のやり取りの中で、バルドロが叫んでいた名だ。
「何で皆彼を嫌っているのです?自分は、彼……イワンさんに助けられました。自分が騎士を目指し始めたのも、イワンさんがいたからこそです」
その事実に、バルドロは少々驚いていた。
「そうか……あいつがな……
俺とグレイブはな、イワンと同僚だったんだ」
「ライドさんは?」
「あれは違う。あれはまた全く違うパターンだ……
それでな、俺たちが彼を嫌う理由だが……」
アルフレッドは息を飲んだ。
「イワンは、騎士なんかじゃない。暗黒騎士だ」
アルフレッドの中で、何かが崩れ落ちた。暗黒、その響きは何か嫌な気配を感じさせた。
「彼は道を誤った。それが、俺らが彼を嫌う理由だ」
「暗黒騎士……嘘だ……」
「事実だ。しかも、ただの暗黒騎士じゃない」
アルフレッドは真実を聞くのが怖くなって来た。聞いてはならないようなことを聞いているような、そんな背徳感を覚えた。
「資質を見誤った、最悪の暗黒騎士だ」
資質ーーそれは、最初に職業に就いた時に決まる特質。それは選択のしようによって、様々な利点ーーまたは欠点になる。
「彼は最初に剣士になってしまった。それが間違いだったのだ」
バルドロの話によると、こうだ。
彼は剣士として飛び抜けて優秀だった。当時のバルドロやグレイブも優秀だったが、それを遥かに凌いでいたようだ。
だが、それで飽きたりなかったのか、イワンは呪術に手を染めてしまった。
呪術自体は悪いものでは無い。呪術師として職業がちゃんと成り立ち、戦闘に於いても優秀な職業である。
だが、イワンは資質を考慮していなかった。
抑も呪術とは、負の力を扱う職業だ。悪魔との契約、魔物の召喚、など危険の伴う技を使う。
それ故、呪術師の資質、つまり呪術師最初に選んだ者の特権として、負の力への免疫が出来る。それが無い限り、心身共に無傷ではいられない。
バルドロとグレイブはイワンを止めた。しかし、呪術に魅せられたイワンには無駄だった。彼は後先を考えず、呪術師に転職した。
「これが、イワンが暗黒の力に手を染めるまでの話だ」
アルフレッドは黙って聞くことしか出来なかった。
「しかし、それだけでは終わらなかったんだ」
バルドロが再び話し始める。
「数年前、大きな戦争があったのは知っているか?」
「過去最大の魔物との戦争ですか?」
「そうだ。その戦争には、俺やグレイブ、イワンも参加していた」
その戦争は悲惨なものだった。
事の発端は、世界の中央に位置するアレスター大陸にある国家、アークライトが、新大陸の開拓に出兵したのが原因だった。
新大陸の一定の境界を越えると、そこは魔物の領土だったのだ。
それを知らずに侵入した開拓兵は魔物に襲われた。それを次々に斬っていったことで戦争の幕開けとなった。
「それが、どうしたんでしょう」
「その開拓兵の中に、イワンがいた」
開拓兵は、多数の国家から選抜された者の集まりだった。イワンも実力はオリオルフェフトでは馳せていたので、選抜されてもおかしくはなかった。
「それで、何かおかしな点でも?」
「開拓兵は、皆死んだんだ」
「!?」
開拓兵は、魔物の領地に足を踏み入れて、帰ってきた者はいなかった。それは、イワンも例外では無かった。
「そして、奴は帰ってきた。戦争が終わってから」
「まさか……」
アルフレッドは、バルドロがイワンを嫌う理由を理解した。それは、どんなに親しくても疑わざるを得ないような出来事だったからだ。
「まあ、こんなものかな」
「ありがとう……ございました」
アルフレッドは裏切られた気分だった。信じる人を失った上に、目指す目標さえ踏みにじられた。行き場のない憤怒さえ湧いた。
「俺はどうすればいいんだ……」
「明日、酒場にでも行ってみたらどうだ?」
「酒場ですか?」
「成人した奴は大体皆行っているな。
パーティの募集をやっているはずだ。
一人で訓練するよりも断然効率がいいと思うぞ。
何より、仲間が出来るのはいいことだ」
パーティとは、他の職業の者と協力して様々な依頼をこなすためのグループだ。
殆どの労働者は、パーティ組んで、依頼をこなし生計を立てる。
バルドロは、アルフレッドにもそうするよう促しているのだろう。
抑も訓練所というのは、就職試験、転職試験、自主訓練以外にはあまり使わない。
早めに旅立った方が良いというのをバルドロは教えてくれたのだ。
「そうしてみます。じゃあ、俺はこれで……」
「ああ、今日はご苦労様」
最後に挨拶を交わし、アルフレッドその場を立ち去った。
タイミングを見計らったかのようにライドがバルドロの元に現れる。
「全部話したのか?」
「いえ、概略までです。我々のことや大罪のことはまだです」
敬語で謙って喋るのはバルドロだ。
「そうか、まだそれでいい。時が来るまで待とう。
あいつは、きっと強くなる」
「驚きましたな、あの『居合抜き』」
「マグレだろう。まあ俺の方が強いし」
「そうですな。それでこそ、司令です」
「まあな。……本題だが、ある計画が出てる」
ライドは手にしている地図をテーブルに広げる。
「南の森ですか?」
バルドロの指す地点に、バツ印がついている。
「ここに大型の魔物が出たらしい」
「最近物騒ですな。魔族の目撃情報もたびたびありますし……」
「魔物も本腰入れてるってことさ」
「はあ……それで駆り出されるのはいつも国軍ですからね」
バルドロはため息をつく。
「トップの前でよくそんなこと言えるな」
ライドは呆れる。
「年はわしの方が上ですよ」
「……酒入ってるのか?」
「……コップ一杯ですよ」
「公務中だってのに……まあいい。
この作戦概要、目を通しておけよ。ちょっと厳しい戦いになるかもしれないしな」
ライドは一枚の紙を渡し、その場を去ろうとした。
「お疲れ様でした。ヴェルナー司令」
「お疲れ。スカー大佐」
二人は、互いに真名を使い、言葉を交えた。
第一話:First Step <完>