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剣士志願者の聖譚曲—the Knight's Oratorio—  作者: 烏合 小鳩
第二部:「世界平和? そんなの興味ないね」
15/18

014   2「闇夜の支配者」

「成る程、この国にはそんな歴史が……」

「そうだよ、先代はすごい人だったんだけどね。何せ、今の兵法やら、産業技術やらを確立させた張本人だ。

 昔はエールハウスもアークライトに侵略戦争を仕掛けられたことがあったんだ。でもその先代のアークライト王は無駄な戦を好まずに、エールハウスとは友好関係を取り戻せたんだ」

「そうなんですか……」

 アルフレッドはエールハウスで情報収集を任せられていた。それはアークライトの歴史や現状を知り、作戦を円滑に進めるため――らしい。ルージュがそう言っていた。

 聞き込みを終えたアルフレッドがぽつりと呟く。

「はあ……これ、何の意味があるんだろう。

 今のことはともかく、昔のこととかルージュさんが教えてくれりゃいいのに……」

 ルージュのが『情報収集は旅の基本だよ』と笑いながら話していたことを思い出す。

 しかし、アルフレッドが手に入れた情報はそう多くない。

「クワトロっていう独裁者の側近が三人だとか 、その中の剣使いは新参だとか、関係あるのかな……」

 愚痴りながらも、通りかかった通行人に聞き込みをやめない。

「あっ、すいません。最近、アークライトとかで起こった事件とかニュースってありませんか?」

「そうだねー……昨日のことだったかな、セントプレーンズって知ってる?」

「大陸の国境付近の平原ですよね」

「そうそう。そこにさ、結構流浪者が集まって村作ってたりするわけよ」

 流浪者というのは、クワトロ政権になってアークライトから追い出された者達のことだろう。

「そいつらからしたらアークライト、クワトロには恨みが沢山あるわけだよね」

「ですね」

「だから、そいつらが反乱軍を作ったんだよ」

「反乱軍!?」

 アルフレッドは驚いた。それは自分達がしていることだ。自分達の腕に自信があるわけではないが、ただの民間人の集まりに一国を倒せるはずがない。

「早く止めた方がいいんじゃないです!?」

 通行人の口から発せられた言葉は、残酷なものだった。

「もう、皆殺されたよ」

「え……?」

 その言葉を理解するのに、数瞬を要した。

「反乱すら出来なかったみたいだよ。

 反乱を遂行しようとする当日の早朝、アークライトの魔法兵によって村ごと無くなったみたいだ」

「む、村ごとって……」

「残ったものは、炭のみ。ほんと、残酷だよね」

「……」

 アルフレッドは急に恐ろしくなった。自分もそのようにされるかもしれない。その最悪の事態を想像すれば、この作戦を楽観視することも出来なかった。

「ありがとうございました」

 それでも、この情報は大きな収穫だ。早くルージュに伝えねば、と通行人にお礼を言った。

「どういたしまして……

 そういえば、この辺スリが多いらしいから気をつけてね」

 意味深な忠告をした後、通行人は去っていった。

「スリか……ここも結構危ないのかな」

 そうぼやきながら、アルフレッドは拠点にしている宿屋へと戻っていった。


 宿に着いたアルフレッドは、フロントでルージュの部屋を訊ねた。しかし、返ってきた言葉は意外なものだった。

「ルージュ・ベルベットという人がチェックインしてるはずなんですけど……」

「ルージュ・ベルベットさんですか? ……その方なら、先ほどチェックアウトしたはずですけど……」

「えっ」

 アルフレッドは驚きを隠せず、狼狽える。その様子を見兼ねたフロントが再び声を掛けた。

「もしかして……アルフレッド・ガルシアさんでしょうか?」

「はい、そうですけど」

 怪訝そうな顔をしながら、アルフレッドは応える。

「あっ、やはりそうでしたか。実はルージュさんから書き置きを預かっておりまして……」

 そう言って、フロントの係員は手紙をアルフレッドに手渡した。

 アルフレッドはその内容に目を丸め、落胆した。

 手紙にはこう綴られていた。

『状況が予定より早く進行しそうだ。旧市街のアークライト兵駐屯地跡へ至急来てくれ』

 走り書きのその文章に、アルフレッドは肩を竦める。ルージュがここにいないとなると、自分が出向くしかないのだろう。とアルフレッドは半ば諦めたような気持ちで宿を後にした。


 エールハウスの旧市街は、現在アルフレッドのいる市街―新市街―を南東部の山岳よりに進んだ場所にある。そこは今住居などは少ないが、昔ながらの店や、パブなどが息を潜めて営業している。アークライトといざこざがあった時代の名残か旧市街の道路は迷路状になっているので、迷ってしまう観光客が多いらしい。

 アルフレッドは決して方向音痴などではない。土地勘もそれなりだし、一度道を覚えてしまえば迷うことなど殆ど無いくらいだ。

 しかし、彼は今困難に陥っていた。

「ここ、どこだ……?」

 話は少し前に遡る。


 宿屋を後にしたアルフレッドは、旧市街に向かってとぼとぼ歩いていた。

「はあ、せっかく宿で休めると思ったのに……」

 表情は暗く、目線も自然に下にさがる。

 その時、体に少しの衝撃が起こった。人にぶつかったのだ。

「あっ、すいません!」

 慌ててアルフレッドは謝った。しかし、ぶつかった人物―フードを被っていて顔は見えない―は会釈もせずにそのまま通りすぎていく。

 不自然に思ったアルフレッドは何か違和感を感じると共に、今日情報を提供してくれた人物の忠告を思い出した。

『この辺スリが多いらしいから気をつけてね』

 咄嗟にウエストポーチを確認してみる。

「……っ! てめぇ!!」

 アルフレッドが振り返った途端に、フードの人物は走りだした。

「俺の財布、返せ!!」

 一文無しになったアルフレッドの悲鳴が、辺り一面にこだました。


 日が暮れ始め人通りも少なくなってきているので、盗人を追いかけるのは容易い。アルフレッドはそのつもりだった。今は軽装備なので楽に走ることができ、もともと走るのは得意な方である。

 しかし、アルフレッドは一向に盗人に追いつくことが出来ない。そればかりか、彼との距離は開く一方だ。そしてその距離の開き方も著しい。

「こいつは……プロかっ!」

 考えられることは一つしか無い。それは盗人が、『盗賊』である場合だ。『盗賊』は職業の一つだ。名前だけ見ると悪いイメージしか浮かばないのだが、ソロで魔物を狩る場合には非常に効率のよい職業として人気の職業の一つである。その理由は、『効率性』にあった。依頼には物品の納入の依頼が多々ある。それには、魔物から取れる貴重な革や甲殻なども含まれるのだ。盗賊は、隠密に魔物に近づき、素材のみ剥ぎ取る、もしくは魔物自体を一撃で仕留め、素早く去る。そのような芸当ができる唯一の職業だった。オリオルフェストの保護区外で一人で魔物と対峙している人間は、十中八九盗賊であるとも言えるだろう。

 アルフレッドはそのことに気づいたが、為す術は無かった。

「『飛脚』を使って足を速くしたか……クソッ!」

 『飛脚』とは、盗賊の初級魔法だ。地面を蹴る際に、魔力を衝撃に変換し、地面に対して発する。するとその分移動距離が増え、結果足を速くするのと同じ効果が得られる。

 盗賊はもうひとつ代表的な魔法を持っている。それは『忍び足』だ。盗賊といえば夜に象徴される。その所以はこの魔法―気配を消すことができる―にあるといっても過言ではない。

 日が暮れて、街灯もなく、闇夜の中で『飛脚』と『忍び足』を発動するとどうなるか。

「……見失ったか!?」

 追手を完全に引き離すことができる。

 こうして、アルフレッドは盗賊を見失った。そして、盗賊を追うことに必死だったアルフレッドは重大なことに気づいた。

「……ここ、どこだ?」

 散々盗賊との鬼ごっこに付き合わされたアルフレッドは、知らぬ間に旧市街という迷路に彷徨い込んでしまっていた。


 同刻、ルージュはアルフレッドを待っていた。急に予定を変更したのは悪いと思っているが、聞き込みによって得た情報からこうせざるを得なかったのだ。

 『セントプレーンズのとある村が消滅した』

 これはほぼ百パーセントアークライト軍のしわざだと、ルージュはすぐに気づいた。そして、そのために計画を早めなくてはならなくなった。

「今ならその村を利用出来る……完全に抹消される前に、こちら側に引きこまなくては……」

 ルージュはそんなことを、暗い表情でぼそりと呟いた。そしてすぐにいつもの表情に戻り、

「アルフレッド君、遅いなぁ。探しに行こうかな」

 と、駐屯地跡からアルフレッドを探しに出た。


 アルフレッドは未だに現在地を把握できていなかった。この入り組んだ構造から、旧市街であることは間違いなさそうだが、ここからどうやって駐屯地跡に辿り着けるのかは検討もつかない。

「とりあえず、」

 と、ルージュの言葉を再確認する。

「情報収集は旅の基本!」

 そう自分を励まし、アルフレッドはあたりを見回した。夜も深く灯りもほとんど無いので、看板などはあてにならない。

 そんな中、アルフレッドはぼんやり光る場所を発見した。その光の正体は、近くの階段下から漏れる明かりだ。階段を下って入る店――それにアルフレッドは思い当たる節がある。

「酒場だ!」

 アルフレッドは階段を一気に駆け下り、店の看板を確認する。その店は彼の思った通り、酒場――パブ――だった。入り口の扉に手をかけ、期待に胸を膨らませ入店する。

 するとすぐに、

「いらっしゃい」

 とバーテンダーに声をかけられた。

「何にするかい?」

「スクリュードライバー……と言いたいところだけど、今は生憎お金を持ち合わせていなくて……水でお願いします」

 アルフレッドが苦笑しながらそう告げると、

「まーたステイルの奴か……」

 とバーテンダーが呟いた。

「何か知ってるんですか?」

 バーテンダーの反応に、アルフレッドは食いつく。しかし、

「あいつの情報は高いぞー」

 と、バーテンにかわされる。バツの悪いアルフレッドだったが、それを尋ねるのが本来の理由でないことに気づいた。

「それはいいですから、教えてほしいことがあります」

「何だい?」

「……アークライト兵駐屯地跡への行き方を教えて下さい」


 ルージュがこの駐屯地跡を指定したのには、二つの理由があった。一つには、隠密性だ。元々旧市街であるのに加えて、もう使われなくなったアークライトの駐屯地跡なので、人がよりつく心配が無い。革命を企てるルージュからすれば、仲間以外にこの計画は知られたくないものだ。下手に他人に知れ渡り、アークライトにバレるのは避けたい。そして、もう一つには、ルージュ自身がここに馴染みがあるということだ。ルージュがアークライトに仕えていた頃、ここで働くことも少なくなかった。迷路状の道路でも地の利は此方にあり、何かあってもすぐに対処することが出来るのだ。

 とはいえ、後先考えずに進むと戻るのが大変になる。アルフレッドを探しに行くのも慎重にしなければならない、とルージュは思った。

 虫の鳴き声も聞こえなくなる丑三つ時、ルージュは一人、少し大きな通りに出た。こんな夜中に出歩く人間は自分位だろうと思っていたルージュだったが、空気の乱れを感じる。

「こんな時間に出歩くなんて……深夜徘徊か?

 自分も他人のことは言えないけど」

 不可解なことがあった。その人物は『忍び足』を使っている。空気の乱れはあるものの、人の気配は感じないのだ。『忍び足』には勿論熟練度があり、まだ経験の浅い若者にはどうしてもボロが出る。ルージュにとって、そんな粗に気づくのは造作もなかった。

 ともあれ、ルージュの今の目的はアルフレッドと合流することだ。それを思い、ルージュはその人物に尋ねようと話しかけた。

「なあ、すまない。この辺で剣士見なかったか? 多分、ポーチか何か身に着けていたと思うが」

 ルージュの問いかけに、明らかにその人間の体が反応した。ルージュがそれを見逃すはずもなく、

「何か知ってるのか?」

 追い打ちを掛ける。

 ルージュは肩を掴んだ。だが、それはすぐに払いのけられる。と、その反動でフードから顔が露わになる。

「くっ……!」

 それは少年の顔だった。そしてまさしく、その少年はアルフレッドから財布を盗んだ盗賊だったのだ。

 ルージュはそれを知る由も無かったのだが、少年は顔を見られたのをまずいと思ったのだろう。彼は無言で右拳の人差し指と中指をルージュの目元につきつけた。盗賊の初等護身体術『目潰し』だ。

 不意の攻撃にルージュは対応出来ずに視界が閉ざされた。少年はその隙に逃げようとする。が、

「『ハウリング』!!」

 ルージュは自分の剣を抜き、鞘と擦り合わせて奇怪な音を発生させる。それによって少年は走るのをやめた。否、体が動かなくなったのだ。

 『ハウリング』は戦士の技で、高周波の音を周囲に響かせることによって、目標に恐怖心を植え付けさせるものだ。その目標は魔物にかぎらず、人間でもよい。

 少年が動けない時間は、ルージュの視力が回復するのに十分すぎる時間だった。

「さて、何故いきなり攻撃を仕掛けたのか教えてもらおうか」

 子供相手ににっこりと微笑みかけるルージュだったが、その声は笑っていなかった。

「それは……」

 少年が観念し、口を開こうとする――

「待て」

 しかし、それはルージュ自らが遮った。

「そのイヤリング、どうした?」

 ルージュは少年の耳元を覗きこんだ。みすぼらしい盗賊の少年に似つかわしくないほどの輝きを持つ太陽を模したイヤリング、それは盗品でも無い限り彼が身につけるのは無理だろう。

「お前、盗んだのか?」

 ルージュの様子が明らかに変る。先程までの笑顔は無く、今まで誰も見たこと無いほど、表情はひきつっていた。そして、ルージュはそのイヤリングに手を掛ける。

「触るな!!」

 その時、少年がルージュを突き飛ばした。恐らく『ハウリング』の効力が切れたのだろうが、

「何……? もう動けるのか?」

 ルージュが思ったよりも随分早く効果が切れたみたいだった。

「これは盗品なんかじゃない! これは……昔から持ってたものなんだよ」

「まさかお前……いや、もういい。それ、大事にしなよ」

 ルージュが何か言いかけるが、途中でやめる。表情は、安堵したような笑顔になっていた。

「待ってくれ!」

 その場を去ろうとしたルージュを、少年が呼び止める。

「これについて、何か知っているのか?」

 少年がこれと称したのは、紛れもなくイヤリングのことだ。

「……何も知らないのか。知りたいなら……俺達に付いてくるんだ」


 無事に酒場のバーテンダーから道順を聞き出せたアルフレッドは、急いで駐屯地跡に向かっていた。

「情報提供料は特別にツケといてやる。いつか払いに来いよ」

 そうバーテンダーに念を押されていたが、アルフレッドはさらさら行く気は無い。金を払いたくないのもあるが、再びあの店に行くのはリスクが高すぎる―また迷子になってしまうだろう。

 酒場から駐屯地跡はそこまで離れていなかった。十数分歩くことでたどり着くことが出来る程度だ。アルフレッドは着くなりルージュを探し出す。アルフレッドは遅くなってしまったのを謝罪する―つもりだったが、よくよく考えてみるとアルフレッドに非は何もない。急遽予定を変更したルージュが悪いと気づき、ルージュを非難してやろうと心の内で決心する。すると、

 「あ、アルフレッド君! 入れ違いになってたんだね。探しに行ってたんだよ」

 ルージュの気の抜けた声がアルフレッドの後方で聞こえる。アルフレッドは振り返り、ルージュに向かって愚痴を言う。

「もう、ルージュさんのせいでこっちは大変な目にあったんですよ!」

 アルフレッドが走り回りここにたどり着くまでに、夜は更け、辺りは次第に明るくなっていた。

「財布だってスられるし、道には迷うし―って!?」

 アルフレッドは会話を途中で止めた。その訳は、ルージュの後ろに控える少年にあった。

「お前……! もしかして、あの時の!?」

 ルージュは少年に、財布を返すよう促した。少年はチッと舌打ちをしながら、ぶっきらぼうにアルフレッドに財布を投げ渡す。

「ルージュさんがコイツを捕まえてくれたんですか!?」

 ルージュは笑いながら、

「んー、ちょっと違うかな。この子は、俺たちの仲間だ」

 と告げる。

 アルフレッドは理解に苦しむ表情をする。

「ルージュさん、血迷ってるんですか!? コイツといるとロクなことないですよ!」

「さっきからコイツコイツうるさいな! 俺にはちゃんと、『ステイル・ティアルクラ』って名前がある!」

 アルフレッドの自分に対する呼び方に不満があったらしく、少年―ステイルは憤慨した。それをルージュが間に入って宥めようとする。

「まあまあ、二人とも仲良くしようよ。あ、ステイル君、この人は『アルフレッド・ガルシア』。剣士なんだよ」

「なんだ、初級職かよ」

「―てめぇ! 黙っていれば!!」

 またまたルージュが間に入る。この二人はなかなか相容れないようだ。

「で、ルージュさんは何でこいつを仲間に?」

「そりゃ、計画に必要だからね」

「計画?」

 気になる単語に、ステイルが食いつく。それをアルフレッドが、

「ダメだ! それはここで言ってはいけない!」

 必死に止めようとした。

「俺は情報を手に入れた! アークライトに消された村の話だ!! その村の住民は……俺らと同じことをしようとして、皆殺しにされた!!」

 まだ静かな旧市街に、アルフレッドの必死な叫びがこだました。しかしルージュは、

「ハハハ、そんな大声出すと近所迷惑じゃないか」

 アルフレッドの悲痛な叫びを笑顔で流した。

「ここは俺のホームだ。ここのことは俺が一番知っている。アルフレッド君は全部俺に任せていればいいんだよ」

 アルフレッドは思い出した。ルージュは、アークライトの元軍人なのだ。実力は勿論、経験や知識もアルフレッドとは比べ物にならない程だ。そう再確認させるほど、笑顔のルージュが放つ威圧は凄まじいものだった。

「俺たちは、現アークライト国の統治者『クワトロ・アークライト』を暗殺するための革命軍だ」

 ルージュが遂に、ステイルにそれを伝える。ステイルは、一瞬それを理解出来なかった。そして、次第にその言葉の意味を、重さを理解し始める。

「!? ななな、何を言ってるんだ!? お、俺はそんな大変なことに関わるのはごめんだ!!」

 すると、ルージュは目線を移す。

「これの秘密、いいのか?」

 目線の先には、太陽を模したイヤリング。ステイルは、交渉材料にイヤリングの秘密を使われていた。

「ずるい……ズルいよ!! そんなの、はいと答えるしかないじゃないか……」

 アルフレッドはステイルを見てまだまだ子供だと思った。感情を曝け出すしかない、自分で何も出来ない哀れな存在。ステイルがそんなちっぽけな存在に見えてしまったのだ。

 しかし―それを利用するルージュ、彼の黒い部分も垣間見てしまった。知れば知るほど謎が深まる彼に対して、アルフレッドは恐怖感を抱きつつあった。


「次は何をするんです? ここに呼んだからにはそれなりの理由があるはずです」

 アルフレッドはルージュに問いかけた。

「ここから南東に行けば、廃鉱山があるんだ。そこに行って、魔石を回収する」

「鉱山ってことは……確かミーナが先回りしてましたよね。それにしても、魔石って?」

「廃鉱山だから魔物が多くてね。悪魔系の魔物が大半だからミーナさんに浄化してもらってるよ。

 魔石については、移動しながら説明しようか」

「ちょっと待てまて!! もしかして、『ジン廃鉱山』に行くつもりか!?」

 話を進めるアルフレッド達を、ステイルが遮った。

「あそこは呪われた地だ! 確かに魔石とかいうのがあるらしいけど、いつからか魔物が住み着いて、そこに行って帰ってきた人はいない!」

「こっちには、呪いに対するスペシャリストがいるし、大丈夫じゃないかな?」

 アルフレッドはミーナを思い浮かべながら言った。

「お前ら……一体何者だ……?」

「ほらほら、ぐちぐち言ってないで行くよ! 時間はそんなに多くないんだ!」

 こうしてアルフレッドは、謎の深まるばかりのルージュ、馬の合わないステイルと共に『ジン廃鉱山』に向かって進み始めた。

 これは、ルージュの目論む革命計画のほんの序章にすぎなかった。



第四話:Quest on Frontier 完


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