000「神と魔王」
人間と魔物ーーそれらは、決して相容れない存在である。正と負、善と悪、陽と陰。交わることの無いものの代表格。
その頂点に君臨するは、神と魔王。神は人を創造し、魔王もまた魔物を創った。神によって生をもたらされた人間は神を崇め、魔王によってそうされた魔物達は魔王の意を汲み取り動く。
魔王の意ーーそれは絶対的権力の誇示。魔物の中でもヒエラルキーの頂に君臨するものが魔王。しかし、魔王と同等の権力を保持している者が一人存在するーーそれが「神」だ。魔王にとって神の存在はあまりにも快くない。それ故、魔王は神をその地位から引き摺り下ろす方法を考えた。
結論は、神の創りし人間に魔王の権威を示し、神の信仰を無くす、ということだった。
魔王は魔物に指示した。
「人間に恐怖と諦念を抱かせろ」
死に対する恐怖、そして生に対する諦念。矛盾した二つが揃いし時、誰もが神の元を去る。
それに対し神はーー「何も指示しなかった」
どんなに金を持った富豪も、権力を保持した貴族も、名の馳せた英雄も、一度も神の姿を見たことは無かった。ーーつまりそれは、神の存在の否定へと繋がった。
救ってくれる神はいない。しかし、それを知らない魔物は止まらない。だから人間は、すがることをやめた。
人間は、自らの「知恵」を以って魔王に対抗した。