第八章 葛藤
かつて…まだこの星が誕生して間もない頃、二体の神が生まれた。
片や、大気を覆っていた濃密なガスより生まれ出で、空に天候を築いた天空の神【フォボス】
片や、大地より噴き出しマグマより生まれ出で、大地に命を齎した大地の神【デイモス】
この二柱の神は、肉体こそ失えど、今尚この世界を見下ろしていると言われている…
ローム=レンス教会《双神紀伝 第一項》より
☆
身体が熱い。
頭が痛い。
足も重いし、腕は幾度となく攻撃を受け止めていたおかげで感覚がなくなってきた。
翼が出てからのフォルドは圧倒的だった。
手も足も出ないとはまさにこの事だ。
今もオレが抑えきれなかったばっかりに、フェイスがフォルドと直接対峙する形になっちまった。
「あぁ!クソッ!おいミスト、他の連中はまだなのか!」
「無理言ってやんないでよ。アタシらが来る前からやり合ってたんだから。それより援護!」
ミストはまた、フォルドへと駆け出していく。
だが、当のオレは情けないことに、もう動くことが厳しくなってきた。
(今行っても足手まといになるだけか…今のオレに、できる事は…)
*
眼前に迫るフォルドの剣。
私にも分かる明確な殺意。
対物理障壁を展開していても安心できない。
そうと分かっていても、私の力ではどうする事もできそうになかった。
「消えろ…イノセント」
「っ!」
無慈悲にも振り下ろされるその剣は、目視できるほどの魔力によって強化されていた。
これは―防ぎきれない。
剣で防御しようとしても、それごと突破されてしまうことは容易に想像できた。
私は思わず目を閉じた。
でも…フォルドの剣は障壁によって阻まれ、私には届いていなかった。
「よう、フェイスちゃんよぉ。無事だよな?」
「えっ?」
いつの間にか、私のすぐ後ろには、ゼアとノア兄弟がいた。
二人共怪我をして、後ろで休んでいたはずなのに…
「仲間がやられるのを黙って見てられるかよ」
「とにかく、この場はオレ達に任せなって」
そう言って、二人はフォルドの前に動き出した。
ちょうど、私をフォルドから遠ざける形だ。
「でも…」
私だけ安全な所にいられない―そう言おうとした時、
「なぁにカッコつけてんのさ。アンタらは真っ先にやられてたのに」
ミストが戻ってきて、ゼアとノア同様、私とフォルドの間に入ってきた。
「フェイスも。アンタが前に出てどーすんのさ。他のみんなと一緒に支援しててよ。それが一番助かるんだからさ」
「他の…皆?」
「アンタの物理障壁を展開したのは誰だと思ってたのさ?」
「動ける連中には隙を見て攻撃するように言ってあるが、とても戦えない奴らは支援に専念してもらうことになってる」
「しっかり頼むぜ、フェイスちゃん」
「みんな…」
「…話し合いは済んだか?」
銃口をこちらに向けて、フォルドが冷たく言い放つ。
すでに魔力はチャージされていて、いつでも撃てる状態だ。
「フォルド…最後に一つ聞かせて。これは…本当にフォルドが望んでいたことなの?」
「お、おいフェイス?何言ってんだよ」
「…今更何を聞くかと思えば…当然だろう?その為に此処に来たんだ」
「なら…どうして、誰も殺してないの?」
「…何?」
「どうして今の間に撃たなかったの?復讐することが目的なら、躊躇する必要はないのに」
私はずっと気になっていたけど…先程の一瞬で確かに感じたこと、それは…
「どうして…そんなに哀しい目をしているの?」
「ッ!」
「殺気は本物なのに、どうして…」
「…黙れ…」
「本当は…こんなことをしたくはないはず…そうでしょ?フォルド」
「黙れぇ!」
フォルドの咆哮と共に、凄まじい魔力の奔流が襲ってきた。
ついさっきまでとはまるで別人のようだった。
その殺気は私たち…いや、私に向けられていた。
「もういい、お前にも見せてやる。俺が視た絶望を!」
途端、フォルドを中心に魔法陣が展開された。
それは、私が見たことのないもので、ネドゥサを覆い尽くすほどに大きいものだった。
でも…
「!?な…」
魔法陣を展開しきる刹那、フォルドの身体を大鎌の刃が貫いた。
「ったく…シャレにならねぇもん使おうとすんなよな。…後ろがガラ空きじゃねぇかよ!」
「お前…ま、だ?」
「コイツに毒仕込むのに手間取ってなぁ…ちょいと寝ててくれや」
「…俺、は…間違って、いたの、か?…フェイス…」
フォルドが気を失うのと同時に、魔法陣も消えた。
リュドはフォルドに近づき、自分が突き刺した傷の具合を見ていた。
「はぁぁ、なんとかなったぁ…てか、遅いよリュド」
ミストがリュドにぼやいていたけど、疲労のせいか、声を張り上げてはいなかった。
リュドも、立ち上がろうとはしないようだ。
「しゃぁねぇだろ?仕込みもしてたし、ジャマーを使い続けるのも楽じゃないんだぜ?あぁ、コイツは大丈夫だぜ、フェイス。毒っつっても眠り薬だ」
「…そっか」
「まぁ、医療班を呼ぼう。急所を外してはいても、重症に違いはねぇからな」
そう言って、リュドは立ち上がり、被害状況の確認をしているゼアとノアに医療班の手配を頼んでいた。
ミストも怪我人の手当てに動いていた。
私は…どうしても、フォルドの最後の言葉が気になってしまっていた…
やっとのことで書けましたぁぁぁ…長かった
書いている最中に(もうちょっと上手く書けないものか…)と自問する日々…才能のなさが嫌になります(-_-)
さて…遅くなり申し訳ありませんでした
…よし、書けたことだしFPSでもやry(殴
次回からは学園や世界についての話が入ってきますのであしからず…