第七章 白翼の意思
「大丈夫?すぐに治してあげるから!」
リュドがフォルドと戦っている最中、私は負傷したみんなの手当てをしていた。
全体的に軽傷な人がほとんどだけど、もう動けない人も少なくなかった。
治癒魔法も完璧じゃない。
傷は治せても戦えるとは限らない。
傷がこれ以上酷くなるのを防ぐくらいだ。
それでも、その傷が原因で死んでしまうより遙かにマシだ。
「ぅ…く、あ、ありがとう。ヤバかったよ」
「もう大丈夫。でも、無理はしないでね」
「おうとも。…しかし、なんでこんな…」
「…私はまだやらなきゃならないことがあるから行くね。あなたは一旦下がってて」
それだけを言うと、返事を待たずに駆け出した。
…私だってそう思ってる。
―なんでこんな事にって…
フォルドを初めて見たあの時…とても弱々しく感じた。
なぜそう感じたかはわからない…でもそう感じたから守ってあげようって思ったんだ。
でも、今のフォルドは…何かが違う。
今のフォルドの眼はどこか虚ろで、光がないようだったような…
「あ、フェイス!」
呼ばれた先にはミストがいた。
ミストも深刻ではないけど怪我をしていた。
「リュドがヤバいんだ!援護に行くから治療をお願い!」
「っ!」
見ると、フォルドの背中には白い翼が生えていた。
それだけじゃない、さっきまでよりも速くなっている。
リュドも食い下がってはいるけど徐々に対応しきれなくなっている。
「…分かった。でも、私も行くよ」
「…危険だよ?」
「分かってる。でも、人数は多いほうがいいでしょ?」
「…うん。じゃ、援護よろしくね」
「りょーかい。…よし、終わったよ!」
そう聞くや否やミストが駆け出した。
私もそれに続く。
これ以上の被害を食い止める為に。
なにより…これ以上フォルドに人を傷つけさせない為に。
*
ずっとこの時を待っていた。
待ち続けた。
長い時間をかけて力を手に入れたのも…全てはこの時の為だった。
力の差は最早明らかだった。
すでに多くのイノセントを蹴散らし、今も抵抗を続けているのは数えるほどしかいない。
リュドには不意を突かれたが、それだけだ。
俺の翼も、奴にとっては想定外のはずだ。
この翼は攻撃を防いだり、空を飛ぶだけのものじゃない。
これは枷のようなものだ。
この翼があるからこその俺なのだ。
まあ、他のイノセント共はこの力さえ使う必要はなかった訳だが。
それでも全員が致命傷を避けているのが歯痒い。
今この場にはリュドしか居らず、最小限の援護しか行わないのは態勢を整えているからだろう。
だが、此奴もよく粘る。
スピードはこちらが上だがよく反応している。
…だがこれ以上は無駄だ。
態勢を整える暇など易々と与える訳にもいかない。
「…そろそろ、終わりにしてやる」
「何?…ぐっ!?」
力任せにリュドを弾き飛ばし、魔道銃ヘルヴェルクに魔力を集中する。
チャージを待たずに狙いを定める。
リュドは態勢を整える事すらできていない。
「終わりだ、リュド」
「っ!クソがぁ!」
トリガーを引き、凄まじいまでの魔力の奔流がリュドへと奔る。
次こそ仕留めたと思った。
…だが、
「っ!なんだと?」
リュドに直撃する瞬間に、別の奔流がヘルヴェルクの一撃を受け止めた。
チャージが完全ではないとはいえ、奴等にこの攻撃を受けるだけの魔力を持つ者がいるとは…
「リュド!助太刀に来たよ!」
「フォルド!もう止めて!」
後方から此方に来る二人は…ミストとフェイスか。
ミストがこんな高度な魔法を使えるとは思えない…ならばフェイスか。
「まさかな…お前、古代魔法が使えるのか…」
「……」
あの学園長かと思ったが此奴に間違いないらしい。
しかし…あの学園長は何をしている?
まだ姿を見せないのが不気味だが…まあ、邪魔されないのならいい。
今は此奴等を…
再び剣を取り、今度はフェイスに疾駆する。
「う…フォルド!」
フェイスは咄嗟に細剣で受け止めるが、やはり力不足だ。
古代魔法の使い手と真っ向からやりあうつもりはない。
苦手な距離で一気に決める。
「だまれ…障害は取り除く」
何としても…イノセントは殺す。
その為に生き永らえてきた。
今更そんな言葉で止まることはない。
元より仲間などと一度たりとも思ったことはなかった。
これだけ早く行動に移したのは、ほんの少しでも躊躇う可能性をなくす為だった。
此奴は彼奴に似すぎている…
でも、そんなことで止まれない。
これは復讐だ…
これは弔いだ…
過去の記憶を拭う為にも必ず殺す。
彼奴の為にも必ず殺す。
魔力をさらに高め、細剣ごと叩き斬るつもりで剣を振り下ろした。
前回投稿から二ヶ月ですか…あっという間ですねぇ
無事就職試験も終わり、ポ〇モンやったり人間性捧げたり(あれ?)してばっかりでしたねぇ…いやいや申し訳ないm(__)m
フォルド編は次でラストの予定ですので今少しお待ちを