第六章 復讐者
その日の夜…
空には満月が輝き、夜の闇を照らしている。
フォルドは満月を見上げていた。
「…満月か。そういえば…あの日もそうだったな…」
燃え盛る家、悲鳴…今でも鮮明にフラッシュバックするあの日の光景。
それを思い出すたびに、フォルドの心はドス黒い感情に支配される。
「…時は来た。今宵、悪夢を此処に再現する」
冷酷な眼を眼下のネドゥサに向けて言い放つ。
そして、手にした魔銃のトリガーを引いた。
*
「なんだ!?襲撃か?」
突然響いた爆音にオレは慌てて飛び起きた。
外が一気に騒がしくなってきた。
オレと同じように飛び起きた連中が騒いでいるんだろう。
「とにかく、外に出ねぇと!」
その時、携帯している通信機が鳴った。
ミストからだった。
「リュド!今何処?」
「今は部屋だ!外で何があった!」
「説明してる暇がないの!とにかく早くき―」
「!?おいミスト!応答しろ!」
いくら呼び掛けても返答はなかった。
通信機がやられたのか、それとも―
考える暇はない。
とにかく急がないと!
外に出るとまた爆音が聞こえた。
どうやら中央広場で戦闘をしているようだ。
「リュド!」
フェイスが広場の方から走ってきた。
オレを呼びに来たようだ。
「フェイス!何があった?ミストは無事なのか?」
「ミストは大丈夫!それより急いで!フォルドが敵になってみんなと戦ってるの!」
「はぁ!?どういう事だ?」
「とにかく付いて来て!ミストたちと合流しよう!」
「あぁ、分かった!」
どうしてフォルドが敵対しているのかは気になるが後回しだ。
オレはフェイスと共に戦場と化している広場へ向かった。
☆
「何…やってんだよ…フォルド!」
そこは酷い有様だった。
広場は荒れ果て、仲間のイノセントを蹂躙しているフォルド。
嫌な夢だと思いたかった。
「来たか…」
「来たかじゃねぇ!お前、自分が何してんのか分かってんのか!?」
「あぁ、分かっているさ。第一、俺はこの時の為に此処に来たのだから…」
「訳分かんねぇ事言ってんじゃねぇ!」
「無駄だよ、リュド。コイツ、アタシらの話を聞こうともしないんだから」
いつの間にかミストが横に来ていた。
身体は傷だらけで、相当消耗しているようだった。
「…ミスト、下がってろ。コイツはオレがやる」
「気をつけなよ…今、他の部隊が態勢を立て直してる。それに…アイツ、恐ろしく強いよ」
「あぁ、分かってる。ミストも手当してもらっとけ」
オレは大鎌、ゼフィランスを二本構えてフォルドと対峙する。
本当なら二刀流は奥の手なのだが、たった一人でイノセント全員を相手にするようなヤツに出し惜しみしてられない。
「覚悟しろよフォルド…叩きのめして、眼覚まさせてやるからよ!」
「…勘違いしているようだから言っておく。俺は狂ってなどいない。お前たちイノセントが憎い…だから戦う。だから復讐する。それだけだ」
「それが訳分かんねぇっつてんだよ!」
言葉と同時にフォルドに急接近する。
フォルドもそれに合わせて踏み込んできた。
「オラアァァ!」
「斬っ!」
真っ向からぶつかり互いの得物が火花を散らす。
そのまま連続で鎌を振るうが、フォルドもそれに合わせてきた。
二刀流の持ち味である連撃を繰り返すが、フォルドの守備は固く、崩すことができない。
それどころか、だんだんとフォルドの方が速くなってきていた。
ただ速いだけではなく、一撃がかなり重い。
何度も受けていると腕が痺れそうだ。
スピードもパワーもフォルドが上なのは明らかだった。
「くっ…」
「なんだ、そんなものなのか。興醒めだな―死ね」
「あんまり…調子乗るなよっ!」
フォルドが斬りつけてくる瞬間、アイズ・ジャマーを使った。
それで一瞬だけフォルドの視界から完全に姿を消すことができた。
「何っ!?」
「貰った!」
完全にフォルドの虚を突いた。
背後に回り込み、鎌を振り下ろす。
もう防御など間に合わない。
振り下ろされた鎌は、確実にフォルドに致命傷を与える―はずだった。
「なっ!?」
今度はオレが不意打ちを食らった。
何が起きたか一瞬分からなかったが、すぐに距離を取った。
「惜しかったな。本来なら使う事はないと思っていたが…今のは予想外だったな」
オレは茫然としていた。
それは、あまりにも衝撃的だった。
「確かに、お前を侮っていた。それは認めよう。だから…今から全力を持って―」
背に人が持つはずのない白い翼を広げ、フォルドは冷たく言い放つ。
「―リュド、お前を殺す」
…また遅くなりました。本当に申し訳ないですm(__)m
面接練習で時間が取れず、物語の下書きも進まない有様。
先が思いやられる…
次回も同じくらいの間が空くかもですorz
急ぎで作ったのでおかしな所があれば指摘をお願いします。