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第一章 始まり

第一章 vol1



4月2日


この時期は本当に忙しい。

新しく学園に入学してくる新人達を迎える準備があるからだ。

だが、オレは本来なら準備なんかする必要はなかった。

つまり忙しくもなんともない。

いつも通り昼寝ができるはずだった、が・・・



「ったくよー。なんだってオレが式場の準備なんかしなくちゃならないんだよ」



準備を手伝わされる羽目になった。

しかも・・・



「クッソ、あの疫病神ミストめ。なんだってオレ一人にやらせるんだよ。自分はやらねーのかよ。終わる訳ねーじゃんか」



今この広い集会場にいるのはオレ一人だけだ。

椅子やら長机やらをただひたすら並べる、ひどく退屈で面倒な作業だ。

しかもちょっとでもずれると並べ直さなきゃならない。

それをたった一人でやっているおかげで朝っぱらからやっているのにまだ三分の一も終わっていない。

愚痴らずにいられるかってんだ。

もう昼過ぎだ。

いいかげん腹が減った。

第一なんで一人ぽっちなんだ。

終わる訳がない。

そろそろ飯でも食うかと思った時、集会場の入り口から二人の女子がやってきた。



「ちょっと!まだ半分も終わってないじゃん。遊んでたでしょ?」



自分の事棚に上げて何言ってんだコイツは。

さすが疫病神ミストだ。

他人の苦労がこれっぽっちも分かってない。



「終わる訳ないだろ!オレがこういうの苦手なの知ってるだろうが」


「こんなのもできないなんてバカじゃないの?しっかりしてよね~隊長サン」


「だったらテメェもやってみろ!てかやれ!手伝え!」


「まあまあ、リュドも落ち着いて。ミストだって忘れてたでしょ?」


「うっ・・・」



フェイスの仲裁でミストが沈黙する。

面倒事持ってきた本人が忘れてたとは・・・

コイツの頭のネジはどっかに捨ててきたのだろうか?



「それより、ご飯持ってきたから一旦休憩しよっか」


「おっ、サンキュー。ちょうど腹減ってたんだよ」



オレはフェイスが持ってきてくれた飯に食いついた。

背に腹はかえられない。



「そうだ。ミスト、リュドに伝えることあるんじゃなかったっけ?」



その言葉にミストがビクッと震えた。

なんかやらかしたのか?



「なんだよ、伝えることって」


「ふぇーほ、ふぁふふぇんふぉーふぁ、ヴモッ!?」



口いっぱいに食い物を含ませながら喋るから蹴飛ばしてやった。

何言ってんのか分かりゃしない。



「なにすんのよっ!吹き出しそうになったじゃん!」


「うるせぇ。それより、なんなんだよ。伝えることって」


「え、えぇっと。学園長がね、明日式が終わったら学園長室に来るようにって。アタシ達も行くから」


「なんだってそんなこと。オレは何もしてねえぞ」



校庭の木の枝折ったこと以外は。



「違うよ。今度の新入生の中からアタシらの隊に配属される新人がいるんだって。要は自己紹介だよ」



そのためにわざわざオレ達を呼ぶのか。

本当にまめな人だ。

しかし・・・



「いくらなんでも早くないか?まだ入学してもないのにいきなりイノセントになるなんて」


「でしょ?アタシも言ったんだけど明日になれば分かるって」


「なんか引っかかるな。とりあえず明日だな」



学園長からの伝言も聞いて、飯も食って面倒な作業を再開することにした。

今度はフェイスが手伝ってくれたからすんげえ早く終わった。

朝から四苦八苦してたオレがバカみたいだ。

オレとミストはほとんど見てるだけだった。

女ってすげえな・・・例外はいるけど。





4月3日


入学式が盛大に始まった。

去年と比べると少し人数が減った気がする。

まあ、学園側が減らしたんだろう。


ネドゥサは入学する際の年齢制限がない。

この式にも10歳に満たないガキからオレより歳食ってるヤツもいる。

オレは入学式の様子をテラスから眺めていた。



「ここで見てたの。」



眺めているとミストがやって来た。



「なんか用か」


「別に。見かけたから来ただけ」



そう言って視線を式場に移す。



「なあ、ミスト。お前オレらの隊に入るヤツ誰か知ってるか?」


「知らない。そんなに気になるの?」


「・・・別に。聞いてみただけだ」


「あ、いた。二人とも」



今度はフェイスが来た。



「そろそろ時間だから学園長室に行こう」



式場を見ると壇上から学園長が降りるところだった。

いつの間にか終わろうとしていた。



「そうだな。行くか」



三人揃ってテラスを後にし、学園長室へ向かった。





「ようこそ、みなさん。呼び出してしまってすまないね」


シルヴァ学園長がわざわざ出迎えてくれた。

相変わらず謙虚な人だ。

傲慢な他の教官とは大違いだ。



「いえ。それより例の新入りは?」


「中に待たせています。さ、こちらへ」



学園長が扉を開ける。

学園長室には華美な装飾の類は一切なく、悪く言ってしまえば殺風景だ。

その部屋の片隅に一人の男子生徒が立っていた。

オレと同じような全身黒の服装で、首元には長めのスカーフを巻いている。



「フォルドくん。こちらへ」



フォルドと呼ばれた生徒はゆっくりとこっちに歩いてくる。

落ち着いた様子だ。

傍から見ている分では緊張の欠片もないといった感じだ。



「彼らが君の配属されることになる第三小隊のメンバーだよ」


「フォルド・レイス。よろしく」



なんとも素っ気ない自己紹介だ。

オレは改めてフォルドをよく観察してみる。

瞳は蒼く、空の色を連想させる。

だがオレはその瞳の中に静かな闘気を感じたような気がした。

オレがあれこれ考えているうちに、フェイスがフォルドに歩み寄り手を差し出した。

アイツは面倒見がいいからな。

突然差し出された手にフォルドはわずかに困惑しているようだ。

それだけではないようにも見えるが。

そんなフォルドにフェイスは屈託の無い笑みを浮かべている。



「私はフェイス・グレイス。よろしくね、フォルド」


まさかこんなにも間が空くとは・・・

二週間ぶりの投稿です。

やっぱり書くのは大変ですね。

今後は一週間から二週間を目安にがんばってみます!

もしかしたらもっと遅くなるかも・・・

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