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第八話 出会いと別れは突然に

これにてコラボ小説お終いです。


思っていた以上に時間がかかりました…

やはり、人様のキャラクターを動かすのは難しかったです汗

楽しかったけど。


「ひええぇえあ!?」


俺の悲鳴にうっとおしげに耳を押さえながら、横を全身黒ずくめの人が通り過ぎて行った。


え?え?

誰?人?


あわてて振り返るも、すでに女の人は通り過ぎた後だった。なんというか…気配がまるでなかったぞこの人。

顔は見えなかったが、スレンダーな後ろ姿が印象的だ。

結美先輩と黒ずくめの人は、言葉を交わすことなくお互いに向けて視線を交わしたかと思うと、すぐに視線を外していた。

黒ずくめの女性はそのまま神社の奥へと消えて行った。


いなくなってから結美さんが肩をすくめる。


「あ〜あ。やっちゃった」


「せ、先輩…今の人、誰です?やっちゃったって?」


「ん?ああ気にしなくていいよ山手くん。こっちの話」


結局、今の人が誰なのか教えられないまま、俺たちは鳥居をくぐり中へ入った。

結美さんが先ほどとは違う、暖かな微笑みで言った。


「ようこそ、佐伯神社へ」


へー佐伯神社っていうのか、などと思いながら俺たちがなにか言おうとしたところ、またしても先ほどの冷えた声が聞こえてきた。


「……招かれざる客だ。早々にお引き取り願いたい」


見ると、先ほどの黒ずくめの人が巫女さん姿に変わって、憮然とした態度で立っていた。

声や雰囲気が同じだから同じ人に間違いないが、いつの間に着替えたんだというくらいの早着替えだ。

見るからに不機嫌そうに仁王立ちしている。

黒いセミロングがよく似合い、普通に美人なんだが、そのせいで迫力が凄まじい。

知らない人のために言うけど、美人が凄むとホント怖い。

それを見て結美さんが叱りつけるように言う。


「未希!参拝客にそんなこと言わない」


「…観光客の間違いだろ」


未希と呼ばれた巫女服の人は、表情を変えずに反論してきた。結美さんが苦笑する。


「否定は出来ないけど」


普通に話し込む二人に俺と後藤はポカンとしたままただ見ているだけだった。


「あの、さっきすれ違いましたよね?」


「………………」


聞いた俺に帰ってきたのは無感情の視線だけだった。


う〜ん…なんかここまで冷めた目をされると逆に気持ちいいな。

あ、変な意味じゃなく。


「未希!怯えてるじゃん!そんな目で見ない!」


結美さんに叱られても巫女さんはほとんど同じ無表情だったが、それでも少しだけ困ったようなニュアンスで呟いていた。


「…不可抗力だ…」


そのまま黙ってしまう巫女さんにため息をついて結美さんがこちらを向いた。


「もうっ!…ごめんね二人とも。彼女は私の友達で佐伯未希っていうの。お察しの通りここの巫女さん。無口もいいとこだし、初対面だと冷たい眼差ししか帰ってこないけど気にしないでね」


「…悪かったな」


正反対に見える二人だけど、仲はとても良さそうだ。結美先輩が友人って言ってるってことはこの人も先輩だな。

改めて佐伯未希さんを見て、(というか顔が見えた時点で反応してたんだけど)俺の中の中学二年生辺りに負った古傷が疼いた。


首にはネックウォーマー並に太くて黒いチョーカーを巻いて、極めつけは左目に眼帯だ。怪我しているのか、もしくはかつての俺のように重い病に罹っているのかどちらかは知らないが、これ以上刺激しないで欲しい。俺の完治したはずの病が再発したらどうしてくれるんだ。

てか、この人絶対中二病だよね!間違いないよああああぁぁあ見てるだけで恥ずかしいいいい!


「………堕ちたいのか…?」


佐伯さんはこちらを絶対零度の眼差しで見据える。なんだか初対面から怒っている感じがさらに悪化した感じ…ひょっとして怒らせた!?なんで?まさか……心読まれた!?

青ざめる俺の横で後藤がつついてきた。


「なあ山手。あの人の目……」


「あ?…………いぃっ!?」


俺は衝撃で変な声を抑えることができず、そのまま叫んでいた。


なぜならば、佐伯さんの唯一見えている右目が…黒目だったはずの右目が…赤く変わっていたんだから!!


ヤッベ!ktkr!!なんか知らんがかっこいいのきた!!


ヤバイ。怖いんだけどかっこいい……これは過去に中二病こじらせた人間にはたまらんだろうて!

目が赤くなるってどこの異能力者だよ!かっちょいいなおい!


俺は変なテンションで思わず佐伯さんを凝視してつぶやいていた。


「あー…俺ももう少し中二病こじらせてりゃアレできたのかなあ。うわー惜しいことしたなあ。でもなあ、周りの目に耐えきれなくってさあ……でもできたのかなあアレ……なあどう思う後藤?」


「先輩って昨日の夜ここで戦ってた人ですか?あのプヨプヨしたやつなんなんですか?できればもう一回見たいんですけど」


聞けよおい。


俺の質問を完全スルーして佐伯さんに問いかける後藤。


お前がそういう心霊現象に興奮するように俺だって、興奮する要素があるんだよ!だから無視はやめて下さい。傷つくから!


佐伯さんはなんだかさっきよりも怒りが増してきている気がする。

だって、周りの空気が淀んでるもん。


これは後藤に怒ってんのか?それとも俺?


それにしてもやっぱ美人がキレると半端ない迫力だ。

瞳孔が縦に裂けてるみたいに見える。まるで猫だ。…………なにそれかっこいい!


「後藤!お、落ち着け!彼女はきっと、闇の世界から現れた異能力者なんだ!昨日の夜は、世界の平和をだな……」


「山手。お前が落ち着け」


後藤は俺の方を叩いて深呼吸するよう促した。


「なんだ。結局昨日のは心霊現象って認めるんだ?」


「ばっか!ちげーよ!幽霊なんていない!昨日のは………モンスターだ!」


「…ダメだこいつ。早くなんとかしないと」


後藤はため息をついて余計な一言をつぶやいた。


「いい加減幽霊の存在を認めろよな。霊媒師なんだからさ」


「だから、俺はーーー」



「………ほう?」


霊媒師なんかじゃない!と言おうとしたが、冷気を感じて口を閉じる。

冷気の元は佐伯さんだ。なんだ?


呆気にとられる俺たちに結美さんがなんだかすごく苦笑いをしているのが見えた。それと、やけに佐伯さんから距離をとっているのが気になるんですが。


佐伯さんが地獄の底から響くような声で告げる。


「その質問、まとめて答えてやる。…見せてやるよ……これが問いの答えだ」


「あーあ、怒らせた。君ら覚悟した方がいいかも…」


え?覚悟ってなんの?


全く状況が掴めていない俺と、妙にワクワクしている後藤を前に、佐伯さんはようやく顔の筋肉を使って不気味な笑みを作った。その笑顔のまま、俺たちを見て左手を振る。その手に紙みたいなものが握られているのが見てとれた。

そして、小さく囁く。


『来い。女郎蜘蛛』


そう佐伯さんが言った途端、なぜか突然突風が吹き荒れ、俺は目を開けていられなくなった。とっさに目をつぶり、砂煙から顔を守って、吹き止むのを待つ。風が吹き止んだかと、目を見開いた俺の目に飛び込んできたのは佐伯さんの後ろにある巨大な黒い足だった。

足と言っても人間の足じゃない。剛毛に覆われた、巨大な蜘蛛の足…そしてその本体がじっとこちらを向いていた。

わかるかなこの恐怖。馬鹿でかい害虫…おっと失礼。…蜘蛛が、七つほどの巨大な目で、こっちを見つめてるんだぜ?

体は軽く三mは超えている。

こんな巨体な蜘蛛、ハリー○ッターでしか見たことないよ。


この時俺が感じた凄まじい恐怖は多分俺と同じ境遇にならなきゃわからないだろう。なんせおととい実家で、一匹ご臨終させたばかりだったのだから。

俺は復讐しにきたのかとかなり怯えて一言も口が利けない状態だった。

もちろん蜘蛛本体もめちゃくちゃ怖かった。

ただ、幽霊じゃないことだけが救いだ。


後藤は目をキラキラと輝かせている。


「おおお!すっげえ!」


「…ふ、そうだな…中二病疑惑は撤回していないようだし、堕ちてこい……」


未希さんはニヤリと笑ったかと思うと、低い声でそう言った。


「「え?」」


え…あれ?なんか……前がよく見えな………


後藤と2人して問い返す前に、俺たちの意識は暗闇の中に落ちていった。




***



意識が戻って、最初に見たのは古典的な日本家屋の建て付けの悪い扉だった。


アレ?なんで後藤の親戚の家の前に倒れてんだ?


まだふらつく頭で周りを見渡すと、すぐ横に後藤が倒れているのを発見した。

とりあえず肩を揺すってみる。


「おい後藤!」


「………ん、あれ?なんで親戚の前に…?」


「わかんね。さっきまで俺ら…」


あれ?ひょっとして今までの全部夢?俺の妄想?


そうだったら、ホッとするようなしないようなと考えていると、後藤が俺のつぶやきの続きを付け足した。


「結美さんと佐伯さんと一緒に佐伯神社にいたよな?そんで佐伯さんの後ろにめっちゃでかい蜘蛛がいて……」


あぁなんだ。やっぱ現実だったか。


それにしてもなんでこんなところに倒れてたんだっけ?蜘蛛が現れたあとがどうしても思い出せない。


ぼんやりしているとその場にふさわしくない電子音が突然響いた。ポケットに入っていた携帯だ。

続いてタイミング良く後藤の携帯も鳴る。


「携帯鳴ってるよ山手」


「お前もな」


携帯を開き、中をみると、一件のメールが届いていた。知らないアドレスだ。


誰だ?


眉を寄せる俺に、先に開いた後藤が俺の携帯をひょいと覗いて言う。


「結美さんからだぞそのメール」


「マジ!?」


「俺んとこにも同じやつきてる」


あわてて確認すると、本当に結美さんからだった。


内容はなんとも形容し難いものだった。


『やっほー!さっきぶり!神城結美だよ〜。急にゴメンネ。勝手に携帯使ってメアドもらっちゃった。テヘペロ。あ、そうそう、2人のこと未希が気に入ったって言ってたよ。ヨカッタネー。今度くる時は"未希先輩"って呼んであげて。絶対喜ぶから!じゃ、私たちのこと覚えてるようならメールの返事待ってま〜す』


……あれで気に入ってくれてたのか?絶対零度の未希さんの顔を思い浮かべて複雑な気持ちになっていると、スクロールさせるとまだ続きがあることに気がつく。


『PS.未希から。中二病疑惑は撤回してくれたようだな。……また来るといい』


俺はしばらくメールを数回読み返してから携帯をしまった。

ずっとなんでこの人はこんなに中二病臭いのかと思っていたけど、ようやくその答えがわかった。

格好だけじゃなく、言葉使いが古臭いからだ。

あと、ラスボス臭半端ない。


後藤はすでに携帯をしまっており、こちらを見てにこりと微笑んだ。


「面白い体験だったなあ山手!来て良かっただろ?」


俺は鼻を鳴らした。


「冗談じゃねえ。意味のわからんものに出くわすわ、足は痛いわ、危うく中二病が再発しそうになるわ、散々だったよ。…結美さんらに会えたのは良かったけどさ」


「最後にすげーの見れたしなっ。アレって未希さんが出したのかな?あの人…ていうかあの人らって何者なのかな」


「さあな。俺らが関わっちゃいけない世界の住人なんじゃね」


後藤が呆れた声を出す。


「また中二病かよ。マジな話だよ」


「俺だって、マジな話だっての。俺らと住む世界が違うんだよきっと。あー…体いってー!変な幻見るし、ホント散々だなこの町は」


身体中をさすりながらうめく俺に後藤が不満タラタラな顔を向けた。


「……なんだよ」


「またそうやって、幻とかで済ませようとしてるし!あの蜘蛛は山手だってはっきり見ただろ?」


俺は疲れた表情で笑ってやった。


「おー見た見た。幻じゃなきゃ、ギネスブックばりのでか蜘蛛だなありゃ」


「またはぐらかしてる」


ジト目で見られ、俺は頭を搔いた。


めんどくさい奴め。



「結美さんが言ってただろ?信じる信じないは君ら次第って。お前は信じてりゃいいじゃんか。俺は信じないけど」


「目の前に現れたのに?」


「そうだな。あの蜘蛛の存在は認めるよ。スライムとか、妖怪やら化け物なんかも、見たら信じてやってもいい。けど……」


「けど?」


俺は伸びをして答えた。伸びた瞬間、背中がぼきぼきと嫌な音で鳴った。


「幽霊だけは信じないし、認めない。たとえ目の前に現れてもな」


俺のはっきりとした言葉に後藤が少しだけうろたえた。


「なんでそこまで頑なに否定すんだよ。怖いからとかだけじゃないだろそこまで来ると」


「うっせえ。俺にもいろいろあんだよ」


「霊媒師のくせに…」


「またそれかよ」


俺は苦笑して再び携帯を開いた。


結美さんからのメールを改めて眺めて、ふと思う。


未希さん、相当中二病扱い嫌なんだな。すげえ気にしてるし。

俺の中では未希さんは中二病末期患者決定なんだけどな…あー…多分これは言わない方がいいな。たぶん100%殺される。


今だって寒気がするもん。


そんな若干の恐怖を最後に味わいつつ、こうして、俺の上弦町での波乱の一泊二日は終わった。


果たして結美さんや未希さんが言うようにまたこの町にくることなんてあるのだろうか。


できればもう一生来たくはないのだけど、と思わずにはいられない俺であった。




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