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第七話 真昼の恐怖

いやいやいやいや!


すっげえいい笑顔でなに言っちゃってんの、この人?


求めていたのは否定なんですけど!


というか昨日見たアレが親友って言ったよな?勇者:巫女さんに真っ二つにされたあのメタキンが親友…だと…?


あまりのことに口をパクパクさせるだけでなにも言えない俺に代わって後藤が知りたかったことを聞いてくれた。


「ええぇ!あのメタキンもどきが親友ですか!?」


「…メタキンもどき?後藤君、ちょっと堕ちる?」


背筋の凍るような笑みで後藤を見る結美さんに本当に寒気を感じた。

いやなんか先輩の後ろにめちゃくちゃ美人なお姉さんが怖い顔で笑ってる気がしたから。

気のせいに違いないが。

そして俺はそれ以上に自分の中にこみ上げるなにかを堪えるのに必死だった。


……っ!


…いや、反応してない!


凍てつくような冷たい笑顔で結美さんが言った言葉におもわず変な声が出そうになりあわてて口を抑える。


だって!


"ちょっと堕ちる?"...だぞ!?


この人は昔俺が罹った恐ろしい病に侵されている気がしてならない。


やめてくれ…俺に思い出させないでくれ…!

俺はもう完治したんだ…!

思ってない!ちょっとかっこいいとか思ってないからな!


うめき苦しむ俺に気づいているだろうが、後藤は珍しく空気を読んだのか無視してくれた。

…たぶんちがうだろうけど。


「いやぁすみません。昨日の夜なんかよくわかんない半透明のブヨブヨした何かをメタルキングって呼んでたんで」


苦笑いで説明する後藤に結美さんは素っ気なく相槌を打った。


「ふうん。そういうことだったの。そっちじゃなくて、人の方。巫女の方。アレ、私の親友」


「あぁ。なるほど」


どうやら人違い(?)だったらしく、結美さんの言う親友がとりあえず人型ということにホッとした。

結美さんも誤解が解けて怒りを沈めてくれたらしい。



だが、謎が残る。


なんだって親友さんが昨日の夜あそこにいて、それを結美さんが知っているのか、だ。

あそこに居たのは一人の巫女さんだけだと思っていたのだが…


「えっと…先輩。聞いていいですか?」


聞くは一瞬の恥、聞かぬは一生の恥…ってな。

要するに、考えるのがめんどくさくなった俺は聞いてみることにした。


「なに?山手君」


「なんで俺たちが昨日ここに来たって知ってるんですか?」


結美さんは不敵な笑みを浮かべたまま首を傾げた。


「ん~?私、君に学生証返す時に、昨日の夜落としてったって言わなかったっけ?」


「え?…あ、そういえば」


結美さんは俺の様子を見て小さく笑った。


「ふふ、じゃあここで質問です」


え…俺の質問の答えは?と聞く間もなく、結美さんは質問して来た。


「どうしてそれを知っているでしょうか?」


えっと…それ俺が聞いた質問そのまんまじゃない?


なんだろう…ムズムズするよ…


こういう回りくどい言い回しが過去の自分を見ているようで歯痒くて恥ずかしくなってくる…!


過去に弟に結美さんが今、言ったような言い回しを使ったら『くどい』とバッサリ切られた経験が頭をよぎる。

あん時の冷めた目は、我が弟ながらかなりキツかった…


と…過去のトラウマを思い出してる場合じゃない。


俺は質問を頭で反復してみた。


確かにこの質問は少し考えればわかることだった。結美さんはわざわざ聞かなくても分かるでしょって言いたかったのかな。


「昨日ここにいたから…ですか?」


「正解。でも半分ね。もう半分は神社の入り口で君らと直接会ったから」


こっちを向かず楽しそうに話す結美さんの後ろ姿を見ながら俺は首を傾げた。


はて。昨日の夜、会ったっけなあ?

全然覚えてない。


結美さんみたいな可愛い女の子なら絶対忘れないと思うけど。


首を捻る俺の横で後藤は楽しそうに手を上げた。


「へぇ!じゃあ先輩、俺も聞いていい?」


「なに、後藤君?」


「先輩も昨日の夜あそこに居たんなら見たでしょ?あの変な奴。あれって心霊現象ってやつですか?」


前を軽やかに歩いていた結美さんがピタリと止まった。

そのまま静止してしまい、答えてくれそうな感じではない。

まずい質問だったのか、それとも後藤の突拍子のない質問に呆れているのか、その背中からは感じ取れなかった。後藤は前者と受け取ったらしく、「じゃあ」と質問を変えた。


「心霊現象って起きると思いますか?」


ズバッといくなあお前。


呆れていると結美さんは妙にトーンを下げた声を出した。


「心霊現象かぁ…どうだろうね…」


こちらを見ずに結美さんは、まるでキンキンに冷えたビールのように冷たい声で続けた。

(…なにが言いたいのかと言うと、要するにめちゃくちゃ冷めた声ってことだ)



「でもそれってやっぱり君らの思い次第だよ…」


そう言って先輩は"体を前に向けたまま"こちらを向いた。


「え…あ……え?」


つまり首が180度回転したんだ。

おまけに瞳孔は開き、口を三日月みたいに開けて結美先輩は笑っていた。

人間の首はいつの間に180度回転可能なほど進化したのだろうか…


いや、あり得ない。

そんなことはあり得ない!


つまり、この綺麗で可愛い女の子は…本物の…


「ば…化け物…」


「プッ…クク…!あはははは!」


俺の前で、化け物もとい結美先輩はここにきて何度目かの大笑いしていた。

改めてみて見ると背中が見えているのに顔がこっちを向いているとか、瞳孔が開いているとかそんなことはない。至って普通の女の子だ。


普通に俺たちの方を向いて、普通に爆笑している。


「あはは!化け物はひどいんじゃない?それにしてもひっどい顔してるよ2人とも。クク…君ら本当に面白い…ああ山手君。怖い顔してこっち睨まないでよ」


「いやいや睨みますよ。マジで化け物かと思っちゃったから走馬灯が走りましたよ。

なんせ首が180度回ったみたいに見えましたからね」


どうやら先ほどのあり得ない情景は俺の妄想と結美さんのちょっとしたいたずらが生み出した残像だったようだ。

事実、後藤の位置からは変には見えていなかったらしく、さっきの結美さんを見ても騒がない。後藤は、結美さんに質問をあいまいに流されたのがショックだったらしい。

横で不満顔な後藤を無視して結美さんに先ほどの残像を説明すると結美さんはまたおかしそうに笑った。


「人間の首が180度回るわけないよ。鳥じゃあるまいし」


へ?鳥ってそんなことできんの?と目を見開いた俺に後藤が解説してくれた。


「鳥の中じゃふくろうだけですよね。回るの」


結美さんはこくりとうなずき、また歩き出した。


へー。そうなんだ。


豆知識がついて肝も冷えたところで一番上の鳥居に着いた。


やはり昨日の夜見たことは見間違いだったようだ。鳥居は綺麗に塗ってあり、はげているところもほとんどない。

昨日はかなりボロボロに見えたからなあ。

少し痛んではいるが、神社とはこういうものだ。


それにしても広い。山の上にあるといっても、これはかなり広い気がする。


「これだけ広いとそうじも大変そうだなあ」


「え~そうでもないよ~。人あんま来ないし。お祭りの時は人すごいけど」


結美さんが鳥居を見ながら俺のつぶやきに答えてくれた。


人、来ないのか。立派な神社なのに。

心霊スポットだからか?


「人来ないのに、この神社綺麗ですね。廃れてないっていうか。あ、でも夜に来た時はなんでかボロボロに見えました。何でだろう…」


首をかしげる俺に、結美さんは一瞬息をひそめるように一拍おいて答える。


「…昼と夜じゃ、見え方変わるよ。怖いと古く見えるでしょ…?」


「あー、それもそうですね」


後藤はのんきに残念がっているが、俺は見逃さなかった。


気づけよ後藤。つーか、そういうのに敏感なお前が気づかなくて、なんで気づきたくなかった俺が気がついちゃってんだよ!

サバサバ答える結美先輩が、さっきの質問には答えるのに一拍かかったんだぞ?


しかも一瞬だけ驚いた顔してた。


これは間違いなく俺たち、見ちゃいけないモノを見たんだって!


あー…最悪だ…平穏がまた遠ざかる…



俺がそんなことを考えて青ざめていた時だった。




「…入り口で止まるな…邪魔だ」





まるで自分が虫けらに思えてくるような、なんだか、とにかく冷め切った…ドMが泣いて喜びそうなくらい冷え冷えの女性の声に俺が恐怖の(歓喜ではない。決してない)悲鳴を上げたのは言うまでもない。


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