第一話 地獄?天国?上弦町?
やっちまった感が半端ないです。
活動報告に書いた通り、ルナサーさんとのコラボ小説です。
分担して作成しましたので、文体が少し変わっているところはご了承ください。
番外編ですので、私のところでは本編とはあまり関係ありません。
「妖怪化物怪奇現象なんでもござれの上弦町~♪」
どこにでもありそうな、それでいてどこにも存在しないような町で意味のわからない歌が響く。歌っている本人はリズムよく鼻歌を鳴らしながら、楽しくて仕方がないように、スキップを軽やかにしている。
「止めてくんない?その歌マジで止めてくんない?」
その横で、俺、山手和也はげっそりとうなだれていた。横にいた後藤が不思議そうにこちらを向く。
「なんか疲れてない?山手」
「嘆いてんだよ。自分の不幸な人生をっ」
真夏の照りつけるような太陽を背に、俺たちは歩き続けていた。汗がポタポタとアスファルトに落ちる様を呆然と眺めながら、俺は今日でもう何度目かもわからないため息をついた。
まず説明すると、ここは俺や後藤の地元の町ではない。正直に言うとどこなのか詳しい説明もされず、俺は町を歩いている。
まあただ単に聞かなかっただけの話ではあるが。どこか遠い地方だということだけは、これまでの長い道のりで把握した。
見慣れない遠方の地をなぜ後藤と2人して汗水垂らしながら歩き続けているのかと言うと、話したところでたいして長くもない事情がある。
遡ること、2日前。
「当たっちゃった!」
嬉しそうに手を振りながら、もうすでに40を超えたおばさん…もとい母が言った。
「なにが?」
TVを見ながら、うわの空で答える俺に母は上機嫌に答えた。
「これよこ・れ!ジャーンッ!豪華一泊二日浅草観光巡り~」
「へぇ…」
俺は意外そうにつぶやいてようやく母の方を向いた。母は満面の笑みでチケットをよこして見せた。
「すげーじゃん。これって一等?」
「そうよ~。駅前のスーパーでちょうど抽選やってて、ちょうど買い物した後だったの」
「ふーん。珍しいこともあるもんだな。母さんがツイてるなんて」
「失礼ねぇ。うふふ。今から楽しみだわ~」
母はユラユラと揺れながらチケットをうっとりと眺める。
この時の俺は呆れながらも、内心では母と同じようにウキウキと浮かれていた。
「で?いつ行くんだ?」
「明日よ。本当久しぶりでドキドキしちゃうわ~」
「なんで?」
母の次の言葉を聞くまでは。
「だって久しぶりの夫婦水入らずの旅行だもの。当然でしょ?」