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力の在処(ありか)


 明くる日の夕刻、キリルは王が意識を取り戻したと報告を受け、王の寝所へ足を運んだ。

 城に隣接する役所から城へ向かう途中、ふと空を見上げる。黄昏た空の下を、暗い雲が足早に駆けていく。今日は日没後にも雨が降るかもしれない。

 天気を気にして止まりかけた自分の足を励ます。自分の主人に会いにいくのに、未だに足が竦む。

 ミューザ王の側近くに仕えるということは、常にうなじに剣を突きつけられているのと変わらない。ランデレイルを奪われたという情報が伝わってきたとき、その剣はたしかに彼を殺すつもりだった。初めてのことではない。だがそのたびに、自力、他力を問わず、なんとか切り抜けてきた。

 それを思い出し、自分の心を奮い起こす。雷に撃たれることを恐れては、空を翔べない。ヒシュという名の地虫のまま、地面を這いずり一生を送るのは御免だ。

 すでに明かりを灯された廊下を抜けて、部屋の入り口に膝をつく。

「入れ」

 王の声に頭をさらに深く下げる。すでに部屋の両側には、三軍の長をはじめ、王の直属の戦士達が並んで座っている。末席には、キリルと同じく役所にいたはずの管理官の姿も、既にあった。

 王はと見れば、寝台に半迦の姿勢で腰をかけ、顎を手で支えている。その表情を見て、キリルは戸惑った。毒の影響からまだ抜けていないのだろうか。だが治療師はついていない。もう一度、同僚達の姿を見渡す。誰もが、彼と同じ戸惑いを共有しているようにみえる。

 ミューザ王との関係が、この部屋にいる誰よりも長いのが、キリルだ。ミューザがまだこの城の前衛軍軍長だった頃、同じく直衛軍の軍長だった戦士に、キリルは見出だされ、拾われた。その恩人はミューザが城主になった時にそのまま彼と主従契約を結び、そして王の勘気を被って、同時に首と命を床に落とした。王と呼ばれる前のミューザを知っているのは、今はキリルしかいない。

 その彼にして、これほど穏やかな表情をしたミューザ王を見たことはなかった。

「遅かったな。まあいい」

「はっ」

 キリルは管理官の向かいの壁際に膝行り、そこに胡坐を掻いて、王に向き直った。常に突きつけられていた剣を、まったく感じない。

「キリル。我が城は、いま幾つになった」

「は。現時点で三十二。契約は結んでいないものの、事実上支配下にある城が四。合わせて四十になります」

 ミューザ王と同等の戦力を持っていたアデミア王を討ってから、彼の勢力範囲は急速に広がっていた。

「この大陸に、城は幾つある」

「は……、統一法には、千二十四と記されております。ただ、幾つかの城は密林に還っておりますから、現在は千に少し足りないくらいかと」

「――まだ、力が足らぬな」

 王の言葉に、王の間近に座る三軍の長が、非難されていると感じたのだろう、俯く。



 キリルはその様子を、視界の端に捉えた。表情には決して出さないものの、彼には、力が足りないといわれて俯くことすら、キシュの驕りに思える。剣を振るしか能がない者共が、何の力を持つものか。彼らは万の戦力を、万としか使えない。その力を二倍にも、三倍にもして、全ての敵を撃ち破ってきたのは、キリルの知略だ。

 いや、それだけではないか……彼の知略が生かされるのは、ミューザあってのこと。それを忘れたことは、一瞬たりともなかった。そうでなくては、誰が剣も持てぬキリルの言葉に従うだろう。

 自分がミューザの軍を勝たせているという自負は持っているが、だからといってミューザに恩を着せようとは思わない。キリルがいなければ、ミューザはいま程までに勢力を拡大することは出来なかったことは確かだが、ミューザがミューザでなくなることはないだろう。王を王たらしめているのは、王自身であり、王でない者は、王に支配されるのが当然だ。

 だが、それでも――

 王と共に名を残すことは出来るだろう。

「力なら、ございます――まだ、確実なものとは言えませぬが」




いつもありがとうございます。

夏ホラーも無事こなし、後は同じ作品での「大人の夏ホラー」。トウヒョウヨロシクネ。コソコソ(笑)


  †

「今日のカレー旨いじゃん」

「ねえ」

「なに?」

「カレー味のウ○コと、ウ○コ味のカレー、どっちがよかった?」

「え……」

  †


赤天三部も、次で一幕が終わります。


次回予告っ!


屋根を叩く雨音が聞こえる。

しかしそれが本当に雨音なのか

それとも耳鳴りなのか

王の笑い声なのか……

キリルには分からなかった。


一幕最終話「スコール」

8/21 更新!!



今日の晩御飯、カレーだったちゅうねん(爆)

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