表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/119

リーズ



 風が耳元で囁いた。若々しい、しかし、木の洞を風が吹き抜けるような、虚ろでもある声で。

――よく使命を果たした。これからも、我のために働くことを、期待している。

「は――」

 謁見の間の端で、二人の兄弟は、頭を垂れる。しかし兄は、思い切って頭を上げて声の主を見た。視線の遥か先、巨大な法陣の中央に据えられた石造りの玉座に坐す、法王。

「ひとつだけ、お尋ねしたいことが――」

――何だ。

「使命の意味を。フォルビィはなぜ、死ななければならなかったのですか。私達兄弟が、なぜ見届けなければならなかったのですか」

「兄貴……」

――意味など、お前達が知る必要はない。

「陛下!?」

――意味があるということは、価値があるということだ。ものの価値など、見る者によって違おう。お前達にとって意味の無いことも、我にとってはある。そういうことだ。

「しかし――」

――納得できぬか。では、我からひとつ訊こう。未来は一つだと思うか。

「……陛下が見通されるのであれば」

――ならばなぜ我は、大陸中に目と耳を放たねばならぬ。

「それは――」

――未来は定まってなどおらぬ。我にできるのは、木々の間を擦り抜け、目指す場所へ届くように、羽を風に乗せることだけだ。木々の位置を知るためには目を凝らさねばならぬ。風を読むには耳を澄ませなければならぬ。それでも、すべての羽が風に乗るとは限らぬ。こたびの風に乗れるのは、あの娘であった。そういうことだ。

「わけわかんねえっ!だったら、俺があのミューザを斬ればすむことじゃねえか。俺じゃあ、奴には勝てなかったっていうのかよっ!」

「フェロ!? 控えろ!」

――止んだ風は、風ではない。これ以上、お前達は知る必要はない。だが、お前の望みは叶えてやろう。あの男と、戦いたいのだろう。

「やれるのか!?」

――いまは下がれ。追って使命を与えるまでな。


 二人の背後で、背丈の三倍はある扉が、大きく軋みながら閉じられていく。最後の隙間から、烏の鳴き声が聞こえた気がして、ロフォラは振り向いたが、その時には、すでに扉は閉じられていた。


_



更新日に読んでいただいた方には、merryChristmas。

そうでない方には、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。


赤い瞳の天第三部「毒蟲」

今更新分をもって、完結です。


次回更新より、本編は少しお休みさせていただいて、トワロの外伝をお送りする予定です……

あくまで予定は予定ですからねっ。


次回予告


薄汚れた場末の娼館。

トワロを一晩贖ったのは

彼女の罪、そのものだった。


赤い瞳の天・外伝〜贖うは罪〜(仮題)

12/29連載開始っ!


タイトルすら決まってない(泣)


一応外伝ということで、別作品として連載します。

投稿したらリンクしますから、引き続きお付き合いください……

お願い(泣)


12/29追記

外伝連載開始しました。

「贖われざる罪に祈りを」

小説ページトップまたは目次ページ下のリンクからどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ