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いいわけ



 白む空の彼方で、烏が鳴いた。だが、密林の中の道を走るフェロには、それに気づく余裕はなかった。

「くそっ!なんでだっ!!」

 肩に担いだ荷が熱い。その熱が失われる前に――。焦燥が背を押す。

 戦の勝負は、呆気なく着いた。

 敵を囲みに誘い込むために、正面にミューザ王は陣取っていた。包囲されたと知れば、いかなる軍もその勢いを減じる。たとえそうはならなくとも、一万や二万の雑兵ごとき、フェロの剣一本で受け止める自信はあった。

「なんでだよっ!!」

 敵の先頭を突き進んでくる男の姿が目に映ったとたん、足が動かなくなった。

 すべてが自分を置き去りにしたまま動き続けた。先頭の男が、渦を巻きながら突進してきて、王との間に立ち塞がった側近達を弾き飛ばす。

 その力に気づいたのだろう。右翼のエレイルが手勢を引き連れて、駆け寄ってくる。

 だがそれよりも早く、動けぬフェロを尻目に、王が男に斬り掛かる。

――王っ!?

 エレイルの悲鳴とともに、フェロの時間が動きだした。吹き飛ばされた王に走り寄る。

――フェロ殿っ! 王をっ!

 エレイルが叫び、男に斬り掛かり、そして、月明かりの下では黒い血煙を吹き出して、倒れる。その隙に、フェロは王を抱きかかえ、戦いに背をむけ、そして、走った。

 王の呻きに我に返り、彼をそっと降ろす。右腕が二の腕の中央からない。その腕を断ち切った剣は、そのまま脇まで切り裂いていた。急いで切断面の上を、革紐できつく縛り付け、止血する。脇の傷は、吸血ヅタの鎧下のおかげか、出血はそれほどでもない。しかし、無視できる傷でもない。立ち上がろうとする王を、担ぎあげる。

「辛抱してくれよ。兄貴なら、絶対あんたを助けられる」

 ミューザは、従軍の治療師を連れていなかった。民を無差別に殺すような戦に、ヨウシュを連れていけるはずがない。彼らの細い神経は、その光景に耐えられないだろう。

 だからフェロは、王を担いで、走っていた。

 こんなはずじゃあなかった。強い相手と戦うことを、楽しみにさえしていたのに。なにかが間違っている。やり直したい。そのためには、ミューザに死んでもらっては困る。

 くそう。あれが烏の言っていた、ロイズラインのロウゼンか。なぜ俺は奴と戦わなかったんだ。

「畜生ッ! 俺は逃げたんじゃない! 負けたんじゃない! 使命を果たしているだけだ!」

 そうだ。烏が言っていた。王を、あの女の所へ連れて帰らなくては。

 ロイズリンガから、フォルビィの待つランデロウガまで、通常の行軍で三日、牛車を連れていれば十日かかる。その距離を、フェロはミューザを肩に担いだまま、一日かからずに駆け通した。



いつもありがとうございます。


別に場面をひとつ飛ばしたわけじゃないですから。

あっけない終幕を表現したかったというか……

なんというか……

まあ、サブタイトルらしいあとがきということで、ご勘弁を。


次回予告。

「烏が、鳴いてる……」

フォルビィは、荒い息をおして、寝台から降りた。

「ロフォラ、お願い」


四幕第十三話「終焉、そして……」

12/18 更新予定。


予定通り、クリスマスに終われそうです。

そのあと?


……お正月?

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