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戦士達の休息


 閲兵場の闇を照らす大篝火をかすめて、黒い塊が落ちてきた。地べたに座り、兵糧の塩漬け肉をかじっていた金髪の戦士が、目を眇めた。その黒い塊が、もぞもぞ動く。

「問題。どうして烏は鳥目なのでしょう? 答え。烏は鳥だから」

「なんだ。くそがらすかよ。久しぶりじゃねえか。焼き鳥にされに来たのか?」

 イテテテ、と言いながら翼をばたつかせる烏に、フェロと同じように火を囲む戦士達の好奇の視線が突きささる。

「ねえ、あなたの肩を借りてもいいかしら」

 ふるいつきたくなるような女の声に、わけがわからないながらも、まわりの男共が、嘆声をあげた。

「いいぜ。そら」

 あっさりと首を傾けて、肩を突きだすフェロに、かえって烏が後退りする。

「本当にいいの? ぶったりしない?」

「しねえよ」

 そう言われて、翼の一撃ちで烏は戦士の鎧の肩に飛び乗った。

「おいおい、なんだよフェロさん、そいつは」

「みたらわかるだろうが。烏だ」

「しゃべってるじゃねえか」

「しゃべるさ。烏だから」

「烏がしゃべるわけないだろう」

「しゃべってるじゃねえか」

 わいわいと集まってくる戦士達に、フェロは意味もなく自慢げに応える。

「で、なんのようだ?」

 呆気に取られたように、嘴を半開きにして、まわりの様子の見回している烏に、手に残った肉を差しだしながら、フェロが訊いた。

「あ、ああ。ミューザ王と話がしたい。引き合わせてくれないか」

 その肉を飲み込んだ烏の言葉が、兄の声色に変わっても、フェロは眉ひとつ動かさない。だが、いいぜ、と立ち上がる彼と対照的に、まわりの戦士達は静まり返った。ロフォラの声ではなく、ミューザの名が引きだした反応だろう。

 フェロは、閲兵場のそこここに燈されている篝火と、そのまわりに群れて休んでいる戦士達の間を縫って、ここランデラルス城の主殿にむかう。

 ランデラルスは、ミューザの居城であるランデロウガの左に位置する城で、ミューザ領防衛の、南の拠点になっている。

 統一法が遵守されているかぎり、城や城下が戦の舞台になることはない。敵に攻め込まれれば、城主は城を出て迎え撃たねばならない。さもなければ、統一法によって保障されている地位を失い、配下の城兵や農業組合の戦力によって、討たれることになっている。

 しかし、ミューザはその段階を乗り切った。ランデレイル攻めにおける統一法違反が明らかになってから、さすがに勢力範囲は大幅に減少し、城兵達も多くが統一法に従って反旗を翻したが、それでも残った者達はいる。

 ミューザはすでに、統一法に従うことはない。統一法によらずしてミューザの下に集う戦士達が、城を頼って守りに徹すれば、いかに敵対する勢力が手を結んでも、容易に撃ち破ることは出来ない。そして、難航する攻略に、敵対勢力の足並みが乱れたいま、ミューザは反攻に転じていた。すでに三人の敵城主を討ち、城を二つ取り返している。いままた、ここから繋がるランデロールへ進撃しようと、戦力を集中させていた。

 だからいまこの城には、兵舎に入りきれないほどの戦士が集い、城から溢れんばかりになっている。その寝台からあぶれた戦士達が、自分達の間を肩に烏を乗せて歩くフェロに手を振り、声をかける。女戦士からの声に、とくに熱がこもっているのは、当然だろう。ほぼまるみを取り戻した月の明かりと、複雑な影を造る篝火の明かりの下でも、フェロの容貌はいささかも損なわれていない。

「お前、ずいぶん慕われてるな」

「ああ、俺は強いからな」

 兄の声で問う烏に、フェロは臆面もなく答えてみせる。

「お前の目的を、彼らは知らないのか?」

「いいや、みんな知ってる。王の命を狙うリーズの一味だってな。でも、関係ねえ」

 フェロは獰猛な笑みを浮かべた。

「結局、強い者が偉いんだ」

「じゃあ、お前はミューザ王より弱いのか?」

「……まあ、腕っぷしだけが強さじゃねえってことがわかるくらいには、俺も賢くなったってことだ。だからって勘違いすんなよ。俺が王の下に立ったってことじゃねえからな」

 フェロは、主殿へと続く階段を上がり、広間への戸口をくぐる。三百人が余裕を持って座れる大広間は、今は十ばかりの燭台に、ぼんやりと照らされているだけだ。その最も奥、床に置かれた二本の灯明に挟まれた主座に、男と女が差向いで、男は片膝を立てて座り、女は脚を横に崩して酒を呑んでいた。

 その男を見るたびに、剣を握るべき右手が疼く。己れが男を斬る使命を与えられていないことを、まるで嘆いているかのようだ。

「王。いいか?」

 フェロはそう声をかけ、二人の間に置かれた膳の横に、返事を待たず、座り込む。

「お前もやるか」

 上座に座る男が、椀をフェロの前に置いた。それに女が酒を注ぐ。男はもちろんミューザ王。女はこの城の城主である、エレイルだ。キシュにしてもかなり大柄な体付きだが、揺れる明かりに照らされたその顔は、まだ若く、優しげな表情をしている。しかし、この歳で城主を務めていることからわかるように、王が一目置くほど腕がたち、さらに重要なことに、王に心酔している。

「それは何?」

 そう訊く声も柔らかく、女らしい。

「ああ、こいつが王に会いたいというんだ。紹介しよう。リーズのくそがらすだ」

 烏は、が、と小さく喉の奥で鳴くが、場をわきまえているのか、いつものように減らず口を叩こうとしない。

「烏が?」

「ああ、これでも月の力を受けていてな。結構小賢しい口を利くんだ。ほら、お前がしゃべれ」

 そう肩を揺らされて、烏が一度頭を下げ、口を開いた。


いつもありがとうございます。


ホームページって、作るの難しいですね。

別のお遊びで作りたいんですけど、モバイル用のでさえ手に余ります。

一番の問題は、ビジュアル面での才能がまったくないこと。

素材サイトでこれだと思う画像をDLしても、ぜんぜんかっこよくなりません。

むう。


次回予告。


「汝に命じる。大逆者ミューザよ。ロイズライン城主、ロウゼンを討て」

くつくつと笑う声が、闇に響いた。王の笑い声。

「それは何の冗談だ?」


三幕第八話「謁見」

11/3更新予定


誰だよっ! ビジュアル面だけかって言ったのはっ!!

。・゜・(ノД`)・゜・。


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