7stage
Haematophilia Vampire Story
第7話 〜闇夜〜
一同の再会の場と出口はそう遠くなかった。走って4分の距離。今では逃亡者と生物兵器は入り乱れて戦っている。
「お譲ちゃんたちはここにかくれときぃや。化け物押しのけて道作るさかい、まっとれ。」
ゲートはとっくに大きな口を開けて待っている。
メガネの黒魔術師が一団を視認し、ゲートの下から声を張り上げる。
「ずいぶんと遅かったですねぇ!早く逃げましょう!車はもう来ていますよ!」
「すまぬ、合流に時間がかかってな!」
「さぁ、最後ですわね。やりましょう!」
「最後やて。よかったなぁ兄ちゃん?」
「・・・こんなこと・・・本当に最後にしないといけない。」
またもやダガーを両手に逆手で装備する疾風を見て男が鼻で笑った。
「ゆくぞ!!」
掛け声と同時に分散し、各個戦闘を開始する。
そこらじゅうに人型の死体が転がっている。やはり「「伝説の怪物」」だけあってそれぞれ強力な能力を持っている。
しかし数的には20対2000といったところで、こちら側には疲れも見え始めている。
「26・・・27・・・28・29・30!!!」
開始10秒で疾風は30体を沈黙させていた。
「我輩も負けていられんな・・・・・・。数も数だし・・・・・・いたしかたない・・・。
生命に通う森羅万象の盟友たちよ、今こそ血の結束の名において服従を示せ・・・!!!!!!!!
Bloody Extinction !!!!!」
一瞬の赤い闇が訪れ、やがて晴れる。闇に包まれていた直径20メートルの範囲に入っていた人型の体内から、血液が一滴残らず消滅し、干からびた肉体のみがそこにはあった。
「そんなことできるなら、初めから使ってください!」
「これを使うと疲れる・・・。」
いきなりクタクタになって座り込む男。その間にも、どんどん人型が増えていく。
「マズイ・・・多すぎる!」
狼男が叫んだ。
「早いとこ道作って、人間のお嬢さんたち助けようぜ!こちとらヘロヘロだ!」
そういいながらも、何時間も戦い続けている。かなりのタフガイだ。
「円陣防御で移動しましょう!」
「オーケイ、それでいこう!」
「手伝うわ!」
「俺も行くでぇ!」
「自分も加わります!早く終わらせましょう!」
こうして、狼男2人とヴァンパイア2人、それに疾風が加わって人型の中を人間を守りながら移動することになった。
他の脱走者は、人型の増加をとめるので手一杯だった。
「おし!みんな逸れんなよ!」
「円陣防御を組んでいるといっても、俺たちは速い!全力で走っていけ!」
「さぁ、今!」
人間を中心にして怪物たちが外を向いて戦っている。しかしより増加した人型におされ気味である。
「くっそ・・・なかなか減らない!」
「おい人間!大丈夫か?」
「はい、付いていくのが精一杯で・・・。」
「それでいい」
「私も・・・使うしかないか・・・・・・。」
「何を?」
「ふふふ・・・秘密。」
そういって、ヴァンパイアの一人が空中に飛び出した。
「古の覇王の血を継ぐ者の名において我、汝に命ず。我のゆく手を阻む愚かなる汚れた生命に裁きの鉄槌を下せ!
・・・・・・Judical Decision !」
途端にそのヴァンパイアの両腕に赤い雷が宿った。
「さあ、人間の愚行はおしまい!消えなさい!」
床一面に雷が降り注ぐ。その空間にいる人型は、激しく痙攣しながら次々と絶命していく。
「す・・・すげぇ〜・・・。」
「さぁ!今のうちに!」
死体の山を一気に駆け抜け、ゲートの直ぐ前に止まっている車に乗り込む。
そこに校長とフリクが現れた。
「あ!あの人達・・・!」
「校長・・・。」
「やぁ、みんな元気かね?念のために「「回収班」」を要請しといてよかったよ・・・。」
「どうゆうことですか?」
「いや、折角の研究をココで失うのはとても惜しい。よって、最小限のデータと資料だけでもとっておこうとおもってな。」
「また・・・同じ物が作られてしまうの・・・?そんなの、絶対にダメだよぉ!」
笑っていた校長の表情が急変する。
「五月蝿い小娘!貴様らのせいで大損害だわ!気に入らん!」
そういって懐からデザートイーグルを取り出す。
しかしそれと同時に、素早く取り出された進介のベレッタが、校長の眉間目掛けて火を吹いた。額に一円玉ほどの穴が開き、そのまま後ろに倒れた。
「校長・・・いや、田中光男・・・沈黙。」
「・・・さぁ、行くぜ!」
他の車はもう道路に出ている。
「俺は・・・残る!」
「は?何いってんの疾風!逃げるんだよ!一緒に逃げようよ!」
「そぉだよせんぱい!せっかく脱出できたじゃん!」
「・・・行くのですね・・・・・・。」
美夜が静かに呟く。どうやら疾風の心中を悟ったようだ。
「狼のおっさん!車出してくれ!」
「・・・わかった・・・お前はいいやつだよ」
「え?さっぱり意味わかんないんだけど?」
「説明は後で・・・浅木さんか狼のおっさんがしてくれるよ・・・。」
そういって車を降りる。
「・・・・・・・・・じゃあね、「「また会おう!!!!」」」
返事を待たないうちに途端に車のスキュール音が響き、疾風と友人たちを引き裂いた。