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6stage

Haematophilia Vampire Story

第5話 〜聖戦〜




後編



「まってぇ〜・・・重いよぉ〜・・・。」


菜緒が情けない声を出す。進介の言いつけを守らずにかなりの爆装を纏いながら歩いていた。


「だからそんなに持ってくるなって言ったじゃないか!」


「使ったみたいのぉ〜・・・映画のヒロインみたいじゃない?」


「ふざけてる場合かよ!」


「だってぇ〜・・・。」


厳しく注意した進介も、二挺拳銃で映画のヒーローを気取っている。


しかしそれほど重荷にはならないので許せる範囲。


「まぁまぁ怒んないでよ。菜緒ちゃん、少し持つわ。」


「私も。」


悠と輝が菜緒が背負っていたリボルバーランチャーとM203付きM16ライフルを取り外す。


「ありがと!あぁ〜、楽になった・・・。」


一団は今、広い通路を歩いている。前方にシャッターがあり、行き止まり。


今まではロッカールーム以来、敵に遭遇していない。


「行き止まり・・・引き返しましょう・・・、え!?!?」


美夜が何かを見つけ、指を指す。


「あ・・・あれ・・・。」


「ん?旧生物兵器保管庫?」


「マズイんじゃない?」


「旧って何よ、旧って!?」


「なんか・・・来るよ!」


輝の言葉を最後に黙り込む一同。


次の瞬間・・・



ガインガインガインガイン・・・・・・ガチャン!



シャッターが開ききった、その先の闇から異形ものたちが続々と現れる。


巨大化したヒルが何匹も壁や天井からぶら下がっている。体調2メートルはゆうに越えている。


「わぁ〜・・・凄いね。」


「うん、スゴイ。」


「本当にすごいですよね・・・。」


「すごく凄すぎて、もうスゴイとしか言えないよぉ。」


あまりのも「「キショイ」」光景に頭がショートしてしまったのか、壊れたのか、いずれにしろ現実逃避。


人間の臭いを感知し、敏感に頭を振っている。


次の瞬間、全てのヒルが地面に落ち、一気に体を縮めて中に飛び出す。


1跳びで2メートルほど距離を縮めてきた。


「ひゃぁ!こっち来る!」


「ちょうどいい、撃つ練習しよう。みんな、クルツ持って。」


「このちっちゃいマシンガン?」


「そう。セレクターレバーの使い方は教えたよね?」


「このカチカチするやつ?」


「そうそう。連射できる状態にしてね。」


そういって、各々が構える。腰だめで撃つもの、正面で狙をいつけるもの、それぞれだ。


「マガジンの交換はさっき練習したよね?」


「うん、3秒以内でできるよ。」


「じゃあ、それぞれ撃ってみよう。どうぞ!」



パパパパパパパパパパパパパ・・・・・・


パパパ・・・パパパパ・・・



10メートル先にいるヒルが弾け跳ぶ。


少女達が構えるマシンガンで次々に飛び散っていく。なんとも奇妙な光景だ。


「気持ち悪いねぇ〜・・・。」


「言わないでよ、気にしないようにしてたんだから・・・。」


「なんていいますか・・・。」


「なんとも言わないでおこうよ。」



パパパパパパ・・・・・・


パパパパパパパパパパパ・・・・・・カチン!



「弾切れ・・・補充します。」


チ・・・カランカラン・・・ガチン!カシン!


「・・・気持ちいいかもぉ〜・・・。」


「へへへ、いいね、これ。」


本格的に壊れた少女たち。


「もう一度撃つ?」


「もったいないよ。練習はこれでおしまい。あとは俺がやってくるよ。」


「気をつけて。」


「あぁ・・・。」


殆どのヒルは、少女たちの一斉掃射でグロテスクなオブジェクトへと変わっている。


生きているのは2匹。進介が背中に背負ったナギナタを手にして手前のヒルに近づいていく。


不意に体を縮め宙に飛び出し、進介に襲い掛かる。


「わ!危ない!」


そんな諒子の声をよそに、思い切り空中のヒルめがけてナギナタを突き出す。


剣先がヒルの口から入り、背中から突き抜けた。刺したまま地面に叩き付ける進介。


恐ろしく無言で、さも当たり前のようにそれを見つめる。まだウネウネと動いている。


腰から日本刀を取り出し、片手で頭上に振り上げ足元のヒルに深い線を引く。


ズサッ・・・ヌチャヌチャ・・・・・・


切り口からはなんとも言えぬ「「物体」」がはみ出る。


それを見て少女たちは言う。


「もう、あんまり気持ちわるいとか思わなくなってきたねぇ・・・。」


「そんな自分が悲しいやら嬉しいやら・・・。」


「今はそっちの方が都合がいいよ。」


「なんか、また撃ちたくなってきた。」


もう一匹のヒルもジャンプして襲い掛かる。


難なく右に避けながら、着地したヒルに十字に切りかかる。


頭と胴体が離れた。


「また、つまらぬ物を切ってしまった・・・。」


「余裕ねあんた。」


悠が言った。確かに、異常事態にしては全員肝が座っている。


「あれ?あの壁に地図書いてない?」


シャッターをくぐってすぐ右の壁に地図が貼ってあった。少し湿っている。


それを引っ剥がして輝が言う。


「出口・・・遠いね。早く行こう。」


薄暗いシャッターの先の世界。ヘルメットのヘッドライトや銃器のフロントサイトベースにくくり付けられた、小型ビームライトを使用する。明るい光の筋が汚い闇を貫いた。


「さ、いきましょう。」


薄暗い程度でまったく見えないわけではないが、視界が明るいと何かと助かる。


「あれって、生物兵器かな?」


「まさかぁ〜!あんなウスノロ、私一人でも楽勝だったんじゃなぁい?」


「さぁ、どうだろうね。過去の失敗作とか。」


「何で今まで生きてるのさ?」


「知らないよ。」


ガヤガヤと話しながら歩みを進める。自然と、それぞれが違う方向を警戒しながら移動する面を見ると、彼らが利口だということは疑えない。


そこらじゅうに、人骨や得体の知れない生物の遺体が散らばっているが、何の不思議も感じない彼らは、敢えて口には出さなかった。


「ここで何が行われていたんだろうね・・・。」


「差し詰め、新生物の「「創造」」じゃない?」


「神様気取りかぁ〜・・・。なんだか同じ人間として嫌だなぁ〜・・・。」


「さっきはヒルだったから良かったのでしたけれど、人型兵器を撃てますか?元は罪の無い人間でしたのに、なんだか可哀想・・・。」


みんな気にしていたことを美夜が言った。


「私は、、、撃つよ。これから犯される罪の先触れじゃない?例え罪の無い人間だとしても、兵器で有っちゃいけないと思う。そして、こんなこと考えている校長先生みたいな人間も、撃たなきゃいけない。いや、本当に撃つべきはそっちだよね。」


強い口調で諒子が答える。


全員無言で頷いた。


「・・・。」


沈黙のまま、地図に従って道を進む。


大きな広場に着いた。中央には汚い水が溜まった50メートルプールがある。酷くホコリくさい。


「ここを・・・右の扉ね。」


ガチン・・・


「鍵がかかってる・・・。」


地図を持った輝ががっかりする。


「正面の扉からでも、奥で繋がってるみたい。迂回する?」


「そうしようか。」


「ちょっと待って!」


「どうしたの?菜緒ちゃん。」


悠が訊ねる。


「なんか泳いでる・・・大きいよ。」


「あれも生物兵器かな・・・?」



バキャーン!!!!



途端に正面の扉が破壊されて、大男が入ってきた。


胸に「a−09」の鉄板が貼り付けてある。


「人型だ・・・。」


「大きいね・・・。」


「スッポンポン・・・イヤン。」


大男は進介たちを確認すると、猛スピードで走り出した。


「来るよ!」


「構えて!」


「撃て!」


パパパパパ・・・カキキキキキン!


皮下装甲で鉛球が兆弾する。もちろんダメージは受けていない。


「弾かれたぁ!?」


「頭にも装甲・・・?みなさん、目を狙ってください。」


「あんなに小さいのに当たる?」


「撃ちまくれぇ〜!ヒャッホォ〜!」


悠はそう言って片手で撃ちはじめる。いざという時のためか、左手には手榴弾。


パパパパパパパパパ・・・グチャ!


確かに目は小さい標的だが、マシンガンで、しかも5人で同じような場所を狙って撃ったのですぐに潰れた。


「グオォ・・・ゴ・・・。」


目から入った弾丸が脳まで届いたのか、大男は倒れた。a−09沈黙。チキンの疾風なんかより確実に早く殺した。


もう秒殺に近い勢い。しかし、今は武装しているからいいものの、これで街中で暴れられたら間違いなく甚大な被害が出る。


大量の血を流して痙攣を起こしている。すると急に水中から巨大な何かが飛び出してきた。a−09を丸呑みにする。


「あら、大きいカエルね。」


「血の臭いで出てきたのか?」


「5メートルはありますね。うろこまであります。」


さして動揺もしない。


「撃っとこうか?」


「念の為ね。」



パ・・・カチン・・・



「!!!弾切れ?」


「こっちも!」


「私も。」


「俺もだ!」


「装填急いで!」


大男に殆ど使ってしまったのか、運悪く全員のマガジンが空になった。


しかし最初に残り一発だけ出てしまった物があり、巨大なカエルは敵意をむき出しに猛スピードで突っ込んできた。


「うわぁ!」


「きゃ・・・!」


それぞれ左右に跳びなんとか突進は回避できたが、騒然とした広場に、プールから巨大カエルがまた2匹上がってきた。


「マジっすかぁ〜・・・?」


「二人で一匹を迎撃しよう!」


左に避けた菜緒と進介が突進してきたカエルを引き受け、右に避けた悠と輝が組み、美夜と諒子がそれぞれ組んだ。




 それぞれの戦いが始まる。




「かたまってると危ない、走るよ!」


「うん!」


悠の組が思い切り走りながら壊された扉まで移動する。片方のカエルもそちらに跳んだ。輝も悠も走りながら、弾創の装填は完了していた。


「当たれっ!」


「お願い、死んで!」


パパパパパパ・・・・・・ビシシシ!


しかし予想以上に硬いウロコに体全体守られていて、クルツの9ミリパラベラム弾では体内まで弾丸が届かない。


「これじゃダメだ・・・。」


「悠ちゃん、その背中にしょってるやつ!」


悠の背中にはリボルバーランチャーがあった。中には焼夷弾が6発詰められている。


「これ?確か燃えるやつだよね!」


「そうそう!乾物にしてやろうよ!」


肩に伸縮式のストックを当てて、狙いを定める悠。


日本人には大きすぎる銃だが、この際重さなんて感じていない。カエルがこっちを向いて口を開ける。


「え?」


「何?」


次の瞬間



シュ・・・バチーン!!!!ドスン・・・



カエルの舌が8メートル先から伸びてきて二人を勢い良く弾き飛ばす。同時に壁に叩き付けられる二人。


「うぐっ!!」


「・・・こんのぉ〜〜!!!!」


怒りを露に手榴弾を投げつける輝。温厚な彼女がここまで怒るのは生涯初。痛みなど忘れている。


輝の攻撃で、カエルの右前足が吹っ飛んだ。しかし気にもとめないでまた口を開け、舌を飛ばそうとしてくる。


「させないっ!」


悠は構えなおしたリボルバーランチャーで開いたカエルの口を狙い、引き金を引いた。


スパシュウ・・・ドシュン・・・


カエルの口から喉を通り、胃で燃焼が始まる。焼夷弾はかなり高温で燃え続けるので、カエルの体内は、臓物の焼肉状態。


「グゲゲゲゲゲ・・・!!!!」


体内で燃える焼夷弾をどうすることもできず、激しくのた打ち回るカエル。


ひっくり返り、やわらかい腹を見せる。



「死ねぇ〜!!!!!!!!!!!!!!」



弱点の腹に向けかって、輝がクルツの引き金を引く。



パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!!!!!!!



でたらめに撃ち込まれた穴から、時折焼夷弾の炎が舞い上がっている。


もはや動く気配もない。


「やった・・・。」


「はぁ〜・・・。」


「はは・・・はははは・・・。」


「女子高生って、強いね・・・。」


「うん、最強の生き物かもね!」




 こちらは美夜と諒子の組。美夜は背中に巨大な弾創リュックを背負っており、右手には小型のガトリング砲を持っている。


なんともミスマッチな構図。諒子は強力な毒が塗られたタクティカルボウガンを背中からとった。3連式のボウガンだ。


「ウロコが厄介・・・弱点は腹だけですね。」


「この矢が刺されば、一発なのにな・・・。」


「とりあえず、目を潰してみましょう。」


そういって、カエルの右目を狙って引き金を引く。



ヒュイイィィン・ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!!!!



一秒間に60発もの弾丸が浴びせられる。しかしカエルは腕で目をかばい、急所を守る。


水中でも生活できる彼らにとって、腕はさほど重要じゃないのかもしれない。


「弱点・・・見つけました。」


「え、どこどこ?」


「もう一度撃つので、見ててください。」


ヒュイイィィン・ズダダダダダダダダダダダ!!!


またさっきのように腕で目を隠している。



「あ!前足の裏!ウロコがない!」



「ええ・・・。」


ゆっくりと頷く美夜。


「案外早く終わるかもね!でも、あんなとこに当たるかな?」


「やってみるしかないですね。失敗したら後は・・・撃ちまくるだけです。」


「うん・・・。」


しっかりとボウガンを構える諒子。


「いきますよ・・・!!!!」


またもや、ガトリング砲のモ−ター音の後に、耳が劈けそうなくらいの発射音が響く。


ヒュイイィィン・ズダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!


同じように腕で目をかばうカエル。


冷静にそれを見つめながら、ボウガンの引き金を引く諒子。


「・・・喰らえ!」


スタタタン!・・・ザシュザシュ!


3本中、2本の猛毒の矢が命中した。


「やったぁ〜!」


「・・・まだです。」


カエルはぐったりと突っ伏しているが、未だに呼吸は続いている。


しかし止めなどいつでも刺せる状態だ。転がっていたコンクリートの破片を投げつけてみる。


ゴン・・・


なんの反応もない。呼吸しているだけで精一杯なのだ。


二人でカエルの頭に上った。諒子が、お尻あたりにつけていた長身両刃の西洋刀を、ウロコの間に突き刺す。


「せえのぉ!!」


梃子の原理を利用して、西洋刀のグリップに二人で体重をかけ、ウロコを剥がした。将棋盤ほどの厚みが重々しい。


カエルは息を荒げるが、動けない。その剥がした部分にピンを抜いた手榴弾を置き、急いで頭から降り、物陰に隠れる。



チチチチチ・・・カシン・ズドーーーーーーン!



ビチャ!ビシャビシャ・・・


爆発と共に硬いウロコが剥がされた頭頂部が吹き飛ぶ。脳や肉の付いた骨片が赤緑の血を纏いながら、四方八方へと放射状に飛び散った。洗面器ほどの大きな目が二人の前に転がる。


「死んだ・・・よね?」


「これで生きていたらどうしましょうね?」


「あはは!そだね、逃げよか。」


「そうですね・・・早くこんなところ逃げ出したいですね。」


「うん・・・。あ・・・こんな時になんなんだけど・・・。」


「はい?」


「お腹空いたぁ〜・・・。」


「私も・・・なるべく気にしないようにしていましたが・・・。」


「目の前に大きなお肉、あるのにね〜。あれは食べちゃだめだよね。獲れたて新鮮なのに。」


頭部が吹き飛んで、ピクピクと痙攣を起こしているカエルを指して諒子が言った。


小型のガトリングをバックパックに固定しながら美夜が答える。手にクルツを持ち直している。


「無事に逃げることができたら、美味しいお店で奢ります。だから今は我慢しましょう。」



ク・・・クキュルル・・・



特殊部隊用ヘルメットの位置を直していた諒子のお腹が可愛く鳴った。




 突進してきたカエルを回避した瞬間、菜緒はド派手に尻餅をついてしまっていた。


すぐさま二人に向き直るカエル。大きな目で二人を見下ろしている。


「大丈夫!?さぁ!」


菜緒を立たせようと手を差し伸べた進介の力を借りて菜緒が立ち上がる。


「いったぁ〜い・・・痣になっちゃうかもぉ〜・・・。」


「そんなこと気にしている場合じゃないよ!来てる!」


ベタベタと這いつくばって迫り来るカエル。こんな巨体がこんなスピードで動けるのかというほど、不気味なまでの速さで近づいてきた。


「走れ!」


カエルに背を向けて反対方向に走り出す。全力疾走だ。


「どうするんですかぁ?」


「今考えてる!・・・ってゆうか菜緒ちゃんも考えてよ!」


「頑張って倒すぅ!」


「だからどうやってさ!?」


「頑張るんです!」


「今だって一生懸命頑張ってるよ!」


途端に、二人の間を赤い何かが目にも止まらぬ高速ですり抜けていった。それは正面のプール監視台にぶつかり、それを弾き飛ばした。その赤いものが再び二人の横をすり抜けて後方へ消えていった。


それを目で追った進介が言う。


「し・・・舌ぁ!?」


「舌?牛タンだったらなぁ〜。」


「あのねぇ!そんな冗談かましてる場合じゃないの!」


「冗談じゃありません!本気ですぅ〜!失礼しちゃう。」


ふと考える進介。・・・舌?口を開けるのか?ならば口を開けた瞬間に鉛弾を叩き込めば・・・。


いや、空いている時間が少なすぎて効果的なダメージは期待できないだろう。かと言って強力な弾薬兵器は、目標到達までに時間がかかりすぎる。口が閉じてしまえば、強固なウロコで守られてしまう。


どうすれば・・・。


「石森先輩!目の前壁!」


「右へ曲がって!」


プールを挟んで右側では悠と輝も全力で走りながらカエルと駆け引きをしていた。


あまり近づきすぎると、あちらのカエルも相手にしないといけなくなる。


「銃撃がダメなら・・・斬撃!」


「斬撃?」


「菜緒ちゃんは背負ってるショットガン構えて!」


「これ?やったぁ〜!使ってみたかったんだぁ〜!」


タクティカルショットガンを右手で持つ菜緒。小型で軽量。ショットガンには珍しく照準装置が付いている。


セミオートマチックで発射毎のコッキング操作が不要なため、早いサイクルで銃撃ができる。


「俺が口を開けっ放しにしてやる!そしたら舌の付け根狙って撃ちまくって!」


「りょ〜かぁ〜い!」


急に立ち止まって腰の日本刀に手をかける進介。その日本刀には「「明守ひかりのかみ」」と名前が刻まれていた。


僅かに刃を滑らせ腰を落とし、居合いの体勢を見せた。その目は開きかけられたカエルの口を捕らえている。


「開いた!」


次の瞬間、赤い舌が再びこちらに襲い掛かってきた。目をつむって思い切り振った刀が空中に弧を描く。



ザクッ!!



進介のちょうど前方50センチで、刃が太さ30センチは有ろうかという舌に空中で深々と突き刺さっていた。


いまや鈍角的にまで開いた傷口が、夥しい量の汚い血を吐き出している。


「ゲグ!ギギギギギィ〜!!!」


激痛にのた打ち回り、口を閉じられないカエル。弱点が丸見えである。


激しく動き回るカエルに、なかなか弱点に照準が合わせられない菜緒。


「ここからじゃダメだぁ〜・・・・・・よぉし!」


肩に銃床をしっかりと当てたまま、ジリジリとカエルとの距離を殺す。


「菜緒ちゃん!」


進介の声が聞こえているのかいないのか、カエルの前方2メートルまで接近した。


赤い舌の付け根が良く見える。それ目掛けて、引き金をしき絞った。


ズドーン・・・・・・ズドンズドン!・・・ズドンズドンズドン!バチン!


太いカエルの舌も容易に千切れてしまった。千切れた舌が激しくのた打ち回っている。


同時にカエルの口から何リットルもの血が噴出し、5メートル先の床まで真っ赤に汚した。


勢い良く血を噴出したカエルは、痛みにもがきながらもプールに飛び込んで非難したが、やがて周囲の水に血を漂わせながら、沈黙と同時に水面に浮上した。



「・・・。」


「・・・・・・・・・また、つまらぬ物を斬ったか・・・。」



血を払い、パチンと音を立てて「「明守」」が鞘へ収められた。


「かっこつけすぎですぅ〜!」


「菜緒ちゃんも何かいったらいいじゃん?」


「じゃあ・・・「「大当たり!!!」」ってのはどうでしょう?」


「なにそれ?」


「分かる人には分かるんですぅ!」


「・・・・・・マニアックなんだ・・・・・・。」




 ほぼ同時にカエルを葬り去った一同は、壊れた正面の扉の下へ集まって作戦会議を開いている。


「みなさん、ご無事で何よりです。無駄弾もあまり使わずに済んでよかったですね。」


「あぁ、みんな本当に良くやったね。」


「私たちって結構強いんじゃん?」


「でも、カエルの舌・・・痛かったよぉ〜?」


「いつまでもここにいるわけにはいかないよねぇ〜。早く次行こうよぉ!」


「この先からさっきの人型が入ってきたんだから、絶対に他にもいるよね。注意していかないと。」


弾薬や爆装はまだ充分にあるので、装備的な心配は無い。


「今思ったんだけどさ、この地図見る限りでは出入り口は最初にくぐった門しか無いよ。


もしかしたら・・・脱走した「「レシピ」」と鉢合わせになるかもね。」


「それは好都合なのかな?」


「さぁ〜・・・とにかく進もう?」


「各自装備の確認!実弾使用許可って校長が言ってたから、途中で武装した人間に会うかもしれないけど・・・・・・。撃ってくるようならば・・・・・・ね!」


「うん。」


「わかっています。」


「はぁ〜い。」


「了解。」


「・・・撃つ!」


そう確認しあい、再び生存への摸索を始めた。


広場を抜け、再び闇に包まれる。




・・・強力なライトが彼らを未来へと導き出すかのように・・・・・・。


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