表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

5stage

Haematophilia Vampire Story

第5話 〜聖戦〜




前編



 午後九時


「よし・・・そろそろ。」


「えぇ。」


「ああ。」


「いくか・・・。」


「うん。」


「みんな、死ぬなよ。」


「お前もな。」


「やるしかない。」


「・・・ふっ・・・。」


「幸運を・・・。」


「神のご加護を。」


「アーメン、牧師さん!」


疾風の言葉を最後に3人の狼男が鉄格子をこじ開ける。



バキバキ・・・ギギギギギ・・・・・・ベキン!



2メートルほどに大きな穴が開く。


「よし、行こう!」


20人の人影が牢屋から姿を消す。


とたんに、赤い回転灯が激しく回りだし、警告音が鳴り響く。


こんなことは予想のうち。あわてる様子も無い。


「我々は出入り口を可能な限り確保する。あまり遅くなるなよ?」


「ああ、人間のお嬢さんたち助けたらまっさきに向かうさ!」


「じゃあ、「「また後で!」」」


そういって、各自二手に別れて突っ走る。


・・・まるで荒野を駆け抜ける一陣の疾風かぜのように・・・。





 警告音は社長室でも鳴り響く。


弱っていく少年少女をみて、校長が下卑た笑いを浮かべている最中だった。


電話機を取って社長が言う。


「何事か!」


「被験体保管庫から、全個体逃走したもようです!」


「なにぃ〜・・・?逃げただとぉ〜・・・?すぐさま確保しろ!実弾使用許可!ただし殺すな!」


「了解!」


ガチャ・・・


「なんてことだ・・・。」


「校長先生も行った方がよろしいのではないでしょうか。」


冷静に美夜が言い放つ。


「黙れ!言われずともそうするわ!」


そう言って、奥の部屋に消える。


「何があったか良くわかんないけど・・・脱走があったっぽいね。」


「今、逃げ時じゃない?私たちを見ている人なんて誰も居ないよ?」


進介と悠が続く。


「でも、実弾使用許可って・・・。」


「「「レシピ」」」が逃げたんだぁ〜・・・。」


しばし沈黙・・・。


そして全員同時に口を開く。



「今だ・・・!」



進介が靴を脱ぎ、ナイフ・・・もといC−4爆弾を取り出す。


そして靴を履きなおす。しゃがみ込んで床の爆弾を背面で取る。未だに手錠は架せられたままだった。


指の感覚を頼りに爆弾と導線に信管をセットし、爆弾をガラスの穴につっこむ。


使い方は、疾風が日常的に学校などで話していたので、迷うことは一つもない。


そして3メートルほどだろうか、いっぱいまでに導線を引き伸ばして声をかけた。


「部屋の隅っこにいて!爆風に巻き込まれるよ!」


一同は爆弾から一番離れた角に寄る。


「時限式か・・・助かる・・・。」


小型の起爆装置を握り締めながら、ダイヤル式のボタンに気づく。


めいっぱいまでダイヤルをひねり、進介も走って角によった。


「あとどれくらい?」


「2秒。」


「は?」


悠の「は?」と同時に爆弾が起爆される。


ズバシュ・・・


という、かなり小さな音とともに薄い煙に包まれる。


しかし依然として巨大なガラスの影は聳え立つ・・・。


「失敗・・・?」


不安そうに諒子が嘆いた。


だんだんと煙が晴れていく。同時に、進介がニヤリと不適な笑みを浮かべる。


「いいや、ちょうど良かったよ。」


ガラスには十字に亀裂が入っていて、少しでも触れれば4つにばらけてしまうだろう。


進介はその十字の真ん中に足をあて、ゆっくりと前に体重をかける。


やがて、ガラスは自らの重さで自然に倒れてゆき、ほとんど音も無く絨毯に沈む。


「開通記念万歳。」


「ふざけてないで行くわよ!」


「ええ、急ぎましょう!」


奥の部屋はどうなっているか分からない。しかし飢え死にするよりは・・・、と心に留めながら一同は進んだ。


扉を開けてみると、そこは小さなロッカールーム。また奥に扉がある。


中央のベンチに大型拳銃・デザートイーグルが無造作に置かれていた。


当然一同は名称など知る由も無い。


「手錠、壊せる?」


「やってみよう。」


背中越しに腰の辺りでデザートイーグルを掴んだ進介がベンチに座り、背中合わせで輝が座る。


右手でグリップを掴み、悠の指示で、手錠の鎖だけを撃ち抜ける角度に合わせ・・・引き金を引く。


ドズゥーン・・・


という発射音のあと、すぐに輝の手錠の鎖が弾けて両手が自由になった。


しかし発射の衝撃で銃身が跳ね上がり、進介の手からすっぽ抜ける。進介の背中に、したたかにぶつかる。


「い・・・いってぇ〜・・・。」


「大丈夫?」


「泣きそう・・・。」


拳銃ほどの鉄の塊が直撃したのだ。泣きたくもなるだろう。


そうしている間にも、両手が自由になった輝が、両手でしっかり構えて鎖を狙って引き金を引いている。


が、やはり撃つ瞬間だけは目をつむってしまう。全員の手錠が二つに分かれた。


その時、不意に奥の扉が開いた。研究員が入ってきたのだ!


「・・・!?なにしてるんだ!」


幸いあっちは一人、仲間は居なかった。


目の前の光景に驚く研究員。無線機で連絡を取ろうと慌てて無線機を取り出すが、焦って前方に落としてしまう。


落ちた無線機に向かって、デタラメに弾丸を浴びせる輝。


5発撃って1発命中、無線機は砕け散り、ただの燃えないごみになってしまった。


ごみに出すときは、電池を抜いて正しく処理することを忘れてはいけない。


デザートイーグルはスライドストップがかかり、弾切れ。


「クソ!」


懐に手を入れようとする研究員に、爆弾が入っていた折りたたみナイフを逆手に持ち、前方にダッシュして一気に距離を詰める進介。もう彼の目には研究員の喉元しか映っていない。


懐から刃物が抜き出される。護身用の小型のナイフ。


しかし大きく腕を伸ばし体重を乗せて振られた進介のナイフのスピードには間に合わず、喉元にナイフが突き立てられる、取っ手しか見えないほどに、刃は深く差し込まれていた。



「・・・!」



声にはならない断末魔を残し、研究員が最後の力を振り絞って進介にナイフを振りかざす。


その腕の動きを察知した進介は、素早く喉元からナイフを抜き取り、心の臓目掛けて叩き込む。


骨と刃が擦れる感触は敢えて気にせず、非情に努めた。


やがて、壁にもたれかかるようにして沈んでゆく研究員。


進介の目には赤く汚れたタンパク質の塊しか映っていなかった。研究員のナイフを取り、投げ捨てる。


美夜以外は、目をつむったり視線を逸らしたり、なるべくその死体を見ないように努めていた。


「お怪我はありませんか?」


「・・・なんともないよ。」


美夜と進介が短く会話する。進介は返り血一つ浴びてない。逆手に握ったナイフは、赤黒く濡れ、滴る鮮血が涙を流して泣いているようにも見えた。


「体が・・・勝手に・・・。」


「それは「「仕方ない」」ことですよ。私がナイフを持っていたら、同じことをしました。」


「そんなこと、綺麗ごとだ・・・。」


「そうです。綺麗ごとです。」


そう言って、投げ捨てられた研究員のナイフを拾い上げる美夜。


中央のベンチに移動して頭を抱える進介。


「正当防衛・・・って言葉、あるじゃない?」


「そおだよ、「「レシピ」」でもない私たち、殺されちゃうところだったよ?「「材料は」」いくらでも、手に入るからね・・・。」


「しっ!もう一人来きます!」


一同が美夜の顔を見上げた瞬間、また研究員が入ってきた。



「な・・・!・・・!」



美夜が素早く左手で口を塞ぎ、後ろに回ってナイフで喉元をかき切った。


足元の同僚の死体に意識をひきつけられ、美夜たちの姿を確認できないまま絶命した。


「・・・ほら、私も同じこと、しましたでしょ?」


酷く暗い、しかし戦慄を覚えるまでに美しいその横顔。人を殺めた少女の横顔だとは誰も思うまい。


「もう、止まれないね。もともと止まるつもりなんてないけど。」


悠が現実を受けとめる。その場に居る全員が思い出す。そう、もともと死ぬ気で脱出を図ったのだ。


「武器は・・・無いか?」


目が座ってる進介。もうどうにでもなれという勢い。


不意にロッカーを開ける菜緒。中には・・・重く黒光りするものが大量に詰まっていた。


「銃?手榴弾も・・・あ、防弾チョッキ。」


菜緒が手にとって見る。全て本物だ。


それぞれが近くのロッカーを開け始める。


「この大きい筒、何?」


「日本刀?ナギナタ?」


「マシンガンだ・・・おもぉ〜いぃ・・・。」


「ヘルメットもあるよ。機動隊みたいな透明な盾も!」


「よし、みんな、念のため武装しよう。動きを考えると、重装備はできないけど、必ずマシンガンと予備の弾創は持っていこう。」


「弾創って?」


「マガジン・・・その、弾が詰まっている細長い箱みたいなやつ!」


「あ、いっぱいあるね!」


「それ、何?」


「ロケットランチャーじゃない?」


「・・・!?そんなもんまであんの?」


「持って行きます?」


「いや、重いし怖いし危ない。」


「これは?」


小型のタクティカルショットガン、ベネリM3の派生機を指して輝が言う。


「ショットガン・・・散弾銃だよ。」


などと、少しだけだが銃の知識がある進介が説明攻めになる。


結局、10分ほど使い方や装備について説明した後、防弾チョッキとマシンガンのMP5AK4クルツと予備弾創5本と手榴弾2つ、ヘルメットをベースに、好き勝手に持っていくことにした。




 「社長室は・・・どこ?」


「そんなもの我輩が知るか!」


「とにかく走って探すしかないですわよ。」


「早くしようや。」


5メートル四方の大きな通路を用心しながら進んでいくヴァンパイアの4人。


今となっては疾風もその一人。未だに腰のホルスターや足首にはナイフやダガーが付いている。


当初10本持っていたが、進介に渡したのが1本。人魚の少女が使ったのが1本だが、その少女が気に入ってしまったため、あげてしまったのだ。よって今は8本の刃物がある。


相変わらず警告は鳴り響いている。研究員の姿が見えない。恐らく避難したのだろう。


「ちょい止まってや。」


急に止まった若いヴァンパイアが話す。彼は日本人のヴァンパイア。細身でいかにももてそうな「「イケメン」」だ。


「そこの角曲がったら、いるで。あいつら。臭うわ。」


「生物兵器ですか?」


一同うなずく。



「面白い・・・。」



そういって、中肉中背の男のヴァンパイアが走り出す・・・というより跳び出した。


いつの間にか爪と犬歯が伸びて、背中にコウモリの羽が生えている。驚きもしない疾風。


男が角を曲がった瞬間、黄色い液体が大量に男目掛けて飛んでくる。酸だ。


横に転がって避けた男の前に4体の黄緑色の人間・・・人型生物兵器が喉を鳴らして待っていた。


酸が壁にかかり、じゅうじゅうと音を立てて穴を開ける、壁に埋め込まれた配線がむき出しになり、酸で断線する。途端に警告音や回転灯が止まる。


人型兵器は、それぞれ胸に「aー20」や「a−08」などと彫られた鉄板が付いており、彼らの「「番号」」を表している。つまり、「a−20」は、「a」タイプの製造番号「20」ということだ。


体中は粘液が付着しており、異臭を放っている。背丈は全て190センチはある。


筋肉質な体つきで衣服は一切まとっていない。体のどこを見ても体毛は存在せず、性器も見当たらない。


目は開きっぱなしの真っ黒な目。瞳は無い。口にいたっては、何故か上下ではなく左右に開いていた。


「ウゲ・・・バイオハザードみたい・・・。」


「だからどうした、潰すまでのこと!」


その中の一体が男目掛けて猛スピードで走ってくる。見かけより早く動ける。


指の爪が50センチほどまでに伸びた男がa−20に向かって爪を振りかざしながら高く跳ね上がった。


後ろに居た3体が口から酸を吐き出すが、男の羽ばたき一つで相殺され、虚しく地面に酸が落ちる。


「ほら、お主らも戦ってはどうだ?」


3人は自分たちの爪を見た。疾風以外は20センチほど爪が伸びている。


「なんだか気持ち悪いけど、行くしか無いわね・・・。」


「兄ちゃん、戦えるか?」


「刃物はあるし、殺人術や体術はならったことありますが・・・通用する相手でしょうか?」


「大覚醒が起きる体なんや・・・いけるはずやで。」


疾風は思った。どうせ人間だったら一度は死んだこの身、友人のために捧げてみようでしゃないか。


現に、自分の友人の為に、見ず知らずのヴァンパイアが戦っていてくれる。



「・・・行く!」



そう言って走り出す疾風。後ろの3体にむかって走り出す。距離は30メートルほどであったのだが、走り始めて2秒後にはもう目前に3体が立っていた。


「うわ!早!」


「それがヴァンパイアの動きや。そのうち慣れる。」


「私は真ん中のを潰すわ。」


「そんなら俺は右やるわ。」


「・・・俺は左か・・・。」


別にどれでも同じなのだが、それぞれに分かれる。


その時彼らの後方では、男とa−20の戦いは続いていた。


「なかなか「「硬い」」な・・・。鋼鉄並みの我輩の爪が刺さらんとは・・・。」


先ほど飛び上がったときに落下に任せて脳天に爪を立てた男だが、皮膚は容易に貫通したものの、頭蓋骨が貫通しない。体中のどこを切りつけても皮膚しか切れないのだ。


太い腕を振られ、弾かれて壁に叩き付けられる。


「ハァ〜〜・・・・・・ハァ〜・・・・・・。」


と、くさい息を吐いては時折酸を飛ばしてくる。


「皮膚の下は急所の要所要所に合金の鎧が入っているのか、それなら・・・!」


わざと懐に飛び込み、取っ組み合いになる。片腕でaー20の両腕を押さえ、もう片腕で瞬時に両脇腹に、切込みを入れた。そして皮膚を剥がす。それを体全体に、なんども取っ組み合いに持ち込んでから行う。


しまいには全て剥がしてしまった。


「胴体の前後1枚づつ・・・頭蓋骨は全て合金。下半身と腕は前方のみ。なるほど・・・こうなっていたか。」


激しく吐き出される酸に気をくばりつつも、正確な分析を始める。


「さて、どうやって倒すか・・・剥がしてみるか・・・。」


そういって最後の取っ組み合いに挑む。


相手の両腕を使った攻撃を片手で受け止める。そして右手の爪を僅かな合金と合金のあいだに滑り込ませた。



「ギャァァァ〜〜〜〜!!!!」



暴れだすa−20。構わずに思い切り胴体の前方をカバーする合金を引っ剥がす。


メキャメキャ・・・ベリベリベリベリベリベリ!!!!!!


激しく音を立てて、合金が引き離される。丸出しになる臓物。


一緒に筋肉も剥がされてしまったのか、アバラ骨と内臓がくっきり見える。


配置は人間のそれと変わりはないが、胃が異常に大きかった。仰向けに倒れ、もはや絶命寸前のa−20。


今なお激しく心臓が脈を刻んでいる。


「吐き出していたのは胃酸か・・・。」


そういって爪を一本立てて胃を切り開いた。溢れ出る胃酸に周囲の臓器が溶けてゆく。


それが心臓まで及んだ。もはや声は無く、ビクンビクンと動くばかりのタンパク質。


異臭を漂わせて、今なお心臓は動き続けている。


その周辺に左手の5本の爪を立て、突き刺す。そしてドアノブをひねる様に回した。



グチュッ・・・



完全に心臓が孤立した。a−20、沈黙。


「なるほどな・・・おい、これを見ろ!」


「今それどころじゃないわ!」


「じゃあ、聞け!わきの下に小さな隙間がある。そこから爪をすべりこませれば心臓を刺せるぞ!」


「りょ〜かい、やってみます〜。」


「爪?2ミリしかないよ・・・。」


「おい少年!手伝ってやろうか?」


笑いながら男が言う。


「冗談!俺だってヴァンパイアなんだ!一人でやります!」


満足そうに微笑む男。疾風の内心はヘルプミー警報鳴りっぱなし。


「俺には爪も牙も無い・・・あるのはナイフ・・・。全部小型で、心臓に届きそうなのは無い・・・。懐に潜り込んだら確実に振り払われる。あんな太い腕で殴られたら痛いだろうな〜。潜り込んで、振り払われる前に息の根を止められるか?」


敵はどんどん迫ってくる。無意識に両脇に携帯していたダガーに手が伸びる。鞘から抜かれたダガーを見て、自分の武器の効果に気づいた。


両脇に携帯していたダガーには、猛毒が仕込まれている。刃も側面の溝も動物性の毒で湿っているほどにだ。


象でも即死の猛毒だ。これを体のどこかに突き刺すことができたらこっちの勝ち。潜り込んで失敗したら負け。


「来い!」


ダガーを握り締め、脇一点に狙いを定めた。


首を掴もうと、左腕を伸ばしてくる。難なく左に避けて足払いをかけた。


しかしよろける程度に終わり、再び腕を伸ばしてくる。しかも両手。


腕の裏側は合金が無いことを思い出し、敢えて首を掴ませる。



「うぐっ!?!?」



掴まれた首をへし折らんばかりの予想外の力で締め上げられ、思わずダガーを離してしまった。


「う・・・ぐ・・・。」


マズイ、殺される・・・畜生!


声にならない叫び。頭の中がだんだん白くなっていく。


人体急所を思い出す疾風。幼いころから習ってきた殺人術や護身術を思い出す。


ここから手を伸ばしても、相手の胴には届かない。範囲はせいぜい肘ぐらいか・・・。


とっさに腰のダガーに両手を伸ばし、相手の手首を深く切り込む。


そう、合金に覆われていない弱点もあったのだ。


左右手首の腱が切れ、物を握れなくなる。当然疾風も抜け出す。


「苦しがってる暇は無い!」


そう自分に叫んで未だに伸ばされている相手の肘裏を切り裂く。


腕の腱を切った。これで腕を動かすこともままならないだろう。


「グ!?」


敵が短く叫び、一歩引いた。今やこっちが優勢。


素早く前転し、相手の足元で刃を走らせる。


バチン!


という音がし、ガタガタと倒れこむ生物兵器。


立てないようにアキレス腱を狙った連撃が成功した。


下敷きにされないように素早く飛びのく。


「・・・!ゲホッ・・・っぅ!」


さっきまで絞められていた首が、苦しみを取り戻す。


隣では、腱を切られ思い通りに動け無くなった巨体がバタバタともがいている。


「止めを・・・刺さなきゃ・・・。」


落としていた毒入りダガーを拾い上げ、腕の内側目掛けて投げ込む。


ダガー投げが得意な疾風は、確実に思ったところへ突き刺せる。


左の二の腕に突き刺さり、5秒ほどもがいたものの、直ぐに動かなくなる。


「はぁ・・・疲れた・・・。」


死の恐怖は、もう無い。ちょうど他の二人も、心臓を刺し終えて決着が付いたころだ。


「よくやった。」


「へぇ〜、本当にやっちゃんたんだ?」


「さすがね。」


ちっとも嬉しくない。そんなことを思いながら、毒入りダガーを向き取る。


鞘にしまえばもう一度毒が付着するので、ある程度は使えるはずだ。


「・・・先を・・・急ぎましょう。」


勝利に酔いしれている暇など無い。


無言で一行は走り出す・・・宛ても無く・・・。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ