第8話:それぞれの願いと、迫り来る土の轟音
特訓と並行して地道にクエストをこなした『ハルモニア』は、ついにEランクへの昇格試験に挑んでいた 。試験の内容は、近郊のダンジョン「試練の穴」の10階層に潜むハイオークを討伐することだ。
暗い通路を松明の光が照らす中、ユウマはふと思い立って話を切り出した。 「そういえば、みんなの願いをちゃんと聞いたことがなかったね。僕のわがままに付き合ってもらっているけど、みんながSランクになって叶えたいこと、教えてくれるかな?」
子供たちは、一歩ずつ地面を踏みしめながら、秘めていた想いを語り始めた。
「僕は、魔物に焼かれた故郷を再建したいんです。あそこには、僕の家族や友達との思い出がいっぱい詰まっているから」 カケルがハクの頭を撫でながら、静かに、けれど強く言った。
「あたいはね、魔物闘技場を建設したいんだ! 初めての実戦で命を落としちゃうような駆け出しを、あたいみたいなディフェンダーが守って鍛えられる場所を作りたいの」 マイは相棒のミーを肩に乗せ、快活に笑う。
「……私は、争いのない平和な世界を願います。国家間の戦争で家族を失うような悲劇は、もう二度と起きてほしくないから」 ナミアの冷ややかな毒舌の裏にある、深い慈愛の心。
「俺は……特に願いはないです! ただ、誰にも負けないくらい強くなりたい。その旅の目的自体が、俺の願いみたいなものです」 ハルトはニドを連れ、前を向いて真っ直ぐに答えた。
「みんな……。ありがとう。君たちの願い、絶対に一緒に叶えよう」 ユウマは、改めてこのパーティの「お守り」としての覚悟を固めた。
ハイオーク戦と、予期せぬ強襲
10階層の広間に辿り着くと、そこには巨大な棍棒を振り回すハイオークが待ち構えていた。
「ここはみんなだけで戦ってみて。僕は後ろで見守っているから」 ユウマはあえて剣を抜かず、後方に控えた。子供たちの成長を確かめるための試練だ。
「行くよ、みんな! 『ハク、氷の息吹を!』」
「『ミー、水流で動きを止めて!』」
特訓の成果は如実に現れていた。魔獣たちとの見事な連携攻撃が炸裂し、カケルの付与魔法を受けたハルトの槍が、ハイオークの心臓を的確に貫いた。
「やった……! 倒したぞ!」 歓喜に沸き、帰路に就こうとしたその時――。
ズゥゥゥゥン!!
ダンジョン全体が、これまでとは比較にならないほどの激しい地響きに襲われた。 「な、何!? 地震!?」
壁を突き破り、地中から現れたのは、巨大な甲羅を持つ土の魔獣。女神アンナが送り込んだ第一の刺客、アクーパーラだった 。
「……どうやら、昇格のお祝いにしては、少し刺激が強すぎる相手が来たみたいだね」 ユウマは表情を引き締め、腰の剣に手をかけた。




