第6話:神託と不穏な胎動
ハルモニアの特訓場で四魔獣がその力を開放していた頃、遠く離れた地で『オーバーロード』はBランク向けの討伐クエストを遂行していた 。
魔物を一方的に射抜くアンナの動きが、ふと止まる 。彼女は遥か遠方から漂ってきた、かつて自分に歯向かった忌々しい四魔獣の気配を敏感に察知したのだ 。
「……生きていたのね。あの目障りな獣共が」
アンナの美貌が苛立ちで歪む 。ユウマを追放しただけで安泰だと思っていた彼女にとって、その生存と魔獣の顕現は許しがたい誤算だった。
同じ時、最前線で剣を振るっていたタケヒロの脳内に、直接語りかけるような荘厳な声が響き渡った。それは、女神の暴走を憂う男神からの『神託』だった 。
『聞きなさい、タケヒロ。お前が愛するユウマは今、過酷な運命の中にいる』
男神は、ユウマの体内に封印された四魔獣の真実、そして今まさにタケヒロの隣で微笑んでいるアンナこそが、世界を歪める女神の分身であることを明かした 。
「アンナが……女神……!? そんな馬鹿な。だったら今すぐここを抜けて、ユウマを助けに――」
激情に駆られ、パーティを離脱しようとするタケヒロを男神の声が制止する 。
『ならぬ。今お前が逃げれば、女神は即座にお前を石化コレクションに変えるだろう。さもなくば、お前への見せしめにユウマの命を奪うはずだ』
「くっ……! なら、俺はどうすればいいんだ!」
絶望的な状況にタケヒロが問いかけると、男神は静かに、けれど明確な指針を示した 。
『時間を稼ぐのだ。女神の目を逸らし、クエストにわざと時間をかけ、ユウマたちがSランクに到達するまでの猶予を作れ。それが、二人が再び結ばれる唯一の道だ』
タケヒロは背後にいるアンナを振り返り、その本性を隠した笑顔を直視する 。愛する人を守るため、彼は孤独で危険な潜入工作を開始することを決意した 。




