第14話:つかの間の休息と、お守り役の献身
祝勝会の翌朝、宿屋のロビーに集まったハルモニアの面々を前に、ユウマは革袋から取り出したものをテーブルに並べた。
「みんな、これを受け取ってほしい。一人金貨2枚ずつだ」
眩い光を放つ金貨を前に、カケルたちは目を見開いて硬直した。
「き、金貨2枚!? 師匠、これ……Fランクの依頼何十回分ですか!? 受け取れませんよ!」
ハルトが慌てて手を振る。16歳の彼らにとって、金貨1枚でも中々手に入らない大金だった。
「いいんだ。僕は『オーバーロード』にいた頃から物欲がなくてね、貯金はそれなりにあるんだよ」
ユウマは穏やかに微笑み、諭すように言葉を続けた。
「君たちがいてくれなきゃ、僕はSランクを目指すことさえできなかった。これはそのお礼だ。それに、昨日アクーパーラと戦ってわかっただろう? アンナが従える残りの魔獣たちがいつ襲ってくるかわからない。より性能のいい武器や防具を揃えて、万全の準備をしてほしいんだ」
ユウマは立ち上がり、外を指差した。
「明日からまた厳しい訓練とクエストの日々が始まる。だから今日一日は、このお金で装備を整えたり、溜まった疲れを発散したりしてきて。これは、リーダーでありお守り役である僕からの命令だよ」
「……師匠。ありがとうございます!」
4人は顔を見合わせ、深々と頭を下げた。そして、弾かれたように武器防具屋へと走り去っていった。その背中を、ユウマは兄のような優しい眼差しで見送った。
新調した装備を身につけた4人は、それぞれの過ごし方で休日を楽しんだ。
ハルトとカケルは、じっとしていられずダンジョンの1階へと向かった。
「見てくれよカケル、この槍! 前のよりずっと軽くて、魔力の通りがいいんだ!」
「僕の杖もだよ。これなら付与魔法の維持がもっと楽になりそう……ハク、行くよ!」
新装備の性能を確かめるべく、二人はハクとニドを連れて、模擬戦に汗を流していた。
一方、マイとナミアの女子組は、街の目抜き通りでスイーツ巡りに興じていた。
「ナミア、見て! このパフェ、クリームが山盛りだよぉ!」
「……食べ過ぎて動きが鈍くなったら、ゲンとミーが泣くわよ。でも、このタルトは確かに美味しいわね」
マイの膝の上でゲンがイチゴを噛み締め、腕に巻きつくミーがクリームを舐める。ナミアの肩ではカラが甘い香りに喉を鳴らす。戦いの緊張から解き放たれ、少女らしい笑顔が溢れていた。
その頃、賑わう街から少し離れたギルドの資料室。
ユウマは一人、膨大な過去の依頼書と地図を広げていた。
「このルートなら、魔獣の気配を避けつつ経験値を稼げるか……? いや、みんなの今の成長速度なら、あえてこの強敵に挑ませるのも……」
4人が楽しんでいる間、ユウマは彼らの訓練メニューと、Sランクへと続く最短かつ最も効率的な道のりを必死に考えていた。自分にできるのは、彼らを死なせず、確実に強くすること。
タケヒロとの再会という私的な願いに付き合わせてしまっている彼らを、何があっても守り抜く。
ペンを走らせるユウマの瞳には、かつての「お守り」としての責任感を超えた、深い決意が宿っていた。




