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第13話:不協和音の行軍

ハルモニアがダンジョンの奥底でハイオークを討伐し、アクーパーラと死闘を繰り広げていたその頃。隣国へと続く街道では、Bランクパーティ『オーバーロード』が奇妙な空気の中で進んでいた。

「……だから! なんでわざわざ時間のかかる護衛依頼なんて受けたのよ! 格下の魔物討伐を回した方が、よっぽど早くSランクになれるじゃない!」

静かな街道に、アンナのヒステリックな声が響き渡る。彼女は一刻も早くSランクに到達し、タケヒロを自らのコレクションに加えたい。ユウマが四魔獣を連れて動き出した今、焦りは募る一方だった。

「ユウマに会いたいんでしょ? こんなにのんびりしてたら、あいつに先を越されちゃうわよ!」

タケヒロは歩みを止めず、冷淡な視線をアンナに向けた。

「俺が決めたことだ。商人の安全を確保するのも冒険者の立派な仕事だろう。……もし俺のやり方が気に入らない、あるいは命令に従えないというなら、お前がこのパーティを抜ければいい」

「なっ……!?」

アンナが絶句する。女神である自分が、人間にこれほど強く出られるなど想定外だった。しかし、タケヒロを失うわけにはいかない。

「……わたくしも、タケヒロさんに賛成ですわ。アンナさんがそう仰るなら、わたくしもこれを機に抜けてもよろしくてよ?」

便乗するように、僧侶のカオルが控えめに、けれど確固たる意志を込めて手を挙げた。彼女にとっては、この過酷な冒険から身を引く絶好のチャンスだ。

「……っ、わかったわよ! 続ければいいんでしょ、護衛を!」

二人に詰め寄られ、アンナは屈辱に震えながらも折れるしかなかった。

その横では、拳闘士のリョウジが「ふんっ! はんっ!」と荒い息を吐きながら、歩行中にも関わらず猛烈なスピードでスクワットを繰り返している。

「ああ、時間がもったいない……。この移動時間で何回筋肉を追い込めるか。これこそが真の修行だ……」

彼にとって、パーティの口論など鍛錬のBGMに過ぎなかった。

数時間が経過した。

商人の馬車の横を歩いていたアンナが、突如として足を止め、顔を険しく歪めた。

(……アクーパーラが、やられた!?)

遠く離れたダンジョンで、自らが放った刺客が倒されたことを神としての感応で察知したのだ。しかも、あのアクーパーラを圧倒して浄化するなど、ただのFランクにできるはずがない。

「……チッ、使えない奴ね。あんな鈍亀、やっぱり最初から期待してなかったわ」

苛立ちを隠そうともせず、アンナは地面を強く蹴り上げた。その禍々しいまでの殺気に、周囲の馬が怯えていななく。

「アンナ、イライラしてるな? そういう時は筋トレが一番だぞ。ほら、一緒にスクワット1000回どうだ? 脳内麻薬が出て悩みなんて吹き飛ぶぞ!」

リョウジが爽やかな笑顔で、全く空気を読まないアドバイスを投げかける。

「うるっっっさいわね、この筋肉ダルマ!! 黙って筋肉だけ鍛えてなさいよ!!」

街道にアンナの怒号が響き渡り、タケヒロはそれを見向きもせず、密かに安堵の息を漏らした。

(よくやった、ユウマ。俺もここで、粘れるだけ粘ってみせる……)

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