第12話:昇格、手紙、そして変わらぬ日常
アクーパーラとの死闘を終えたユウマたちは、満身創痍ながらも晴れやかな表情で冒険者ギルドの門をくぐった。
「お疲れ様。ハイオークの討伐、確認したわ。……まさか、あの場にアクーパーラが現れるなんてね」
受付嬢は驚きを隠せない様子だったが、正式に彼らの功績を認め、ギルドカードを更新した。
「おめでとう。今日からあなたたちはEランク冒険者よ」
「やったぁぁぁ!」と飛び跳ねるハルトとカケル。ユウマもまた、一つ目標に近づいた安堵感に包まれていた。すると、受付嬢が「そうそう、ユウマさんにこれを」と一通の手紙を差し出した。
「これ……タケヒロから?」
差出人の名を見て、ユウマの心臓が大きく跳ねた。急いで封を切ると、そこには見慣れた力強い筆跡でこう記されていた。
『ユウマ、元気か。俺たちオーバーロードは今、商人の長期護衛で隣国へ向かっている。しばらくは街を離れることになるが、お前のことを信じている』
「隣国まで護衛……?」
ユウマは首を傾げた。オーバーロードのような実力派パーティなら、もっと短期間で高報酬の魔物討伐依頼がいくらでもあるはずだ。わざわざ時間のかかる移動主体の依頼を受けたタケヒロの意図がわからず、小さな疑問が胸に浮かぶ。
(……でも、タケヒロが頑張っているなら、僕も立ち止まっていられないな)
「よし、みんな! 今日はEランク昇格と、新しい仲間ゲンの歓迎会だ。僕の奢りでパーッとやろう!」
「わーい! 師匠、太っ腹!」
「あたい、高いお肉いっぱい食べるからね!」
一行は馴染みの酒場へと繰り出した。新しく加わった小亀のゲンも、マイの膝の上で美味しそうにレタスを頬張っている。
「ねえねえ、ユウマ!」
宴が盛り上がった頃、顔を赤くしたマイがグイッと距離を詰めてきた。
「あたい、今日確信したんだ。ユウマと一緒に戦って、あのアクーパーラを倒して……これってもう、愛の共同作業だよね!? だから、今すぐ結婚しよう! ほら、このゲンが仲人の亀ってことで!」
「いや、どういう理屈だいそれは……。それにゲンも困ってるよ」
「照れなくていいんだよぉ! タケヒロさんは遠くにいるし、あたいが一番近くで支えてあげるから!」
「気持ちは嬉しいけど、僕の心にはタケヒロしかいないんだ。ごめんね」
「もー! 鉄壁の甲羅よりユウマのガードの方が固いんだから! 好き!」
いつものように全力で空振りするマイの求婚と、それを華麗にスルーするユウマ。そのやり取りを、ハルトたちは笑いながら見守り、ナミアは呆れたように毒を吐く。
「……バカね。でも、このバカバカしさだけはSランク級かも」
束の間の平和。しかし、彼らはまだ知らない。隣国へ向かうタケヒロが、女神アンナの監視の目を盗みながら、命懸けの「時間稼ぎ」をしているということを。




