第1話:恋の終わりと、小さな希望の始まり
「悪いけど、アンタみたいな『中途半端』はもういらないのよ」
Bランクパーティ『オーバーロード』の拠点。ピンク色の髪をなびかせ、弓使いのアンナは冷酷な笑みを浮かべて言い放った 。
「え……? 追放、ですか? なぜ……タケヒロは、彼はなんて言ってるんですか!」
黒髪の青年、魔法剣士のユウマは愕然とした 。彼には、このパーティに残らなければならない理由がある。同じ剣士のタケヒロと、密かに愛を育んできたからだ 。
「タケヒロなら今ぐっすり眠ってるわ。それにね、ギルドから新しい通達があったの。『パーティ内恋愛禁止』。これに抵触するアンタはクビ。決定事項よ」
アンナの瞳には、慈悲など微塵もなかった 。同じパーティメンバーのリョウジは筋トレに夢中、カオルに至ってはアンナに無理矢理冒険に付き合わされているため心底興味なさそうにため息をついていた。
翌日から、ユウマの地獄が始まった。 タケヒロとの再会、そして彼との同性婚を叶えるためにSランクを目指そうと決意したものの、パーティを組まなければギルドに登録すらできない 。
「お願いします! 僕をパーティに入れてください!」
「あぁ? お前、あの追放された魔法剣士か。剣も魔法も中途半端なヤツなんていらねぇよ」
「おまけに男に欲情する変態なんだろ? 気持ち悪いんだよ。俺たちの背中は預けられねぇな」
街の冒険者たちは、ユウマの事情を知るや否や、露骨な嫌悪感を示した 。何度も、何度も頭を下げた。だが、返ってくるのは罵声と蔑みの視線だけだった 。
夕暮れの噴水広場。ユウマは膝をつき、絶望に打ちひしがれていた。 (やっぱり、僕みたいなのは……一人じゃ、何も……)
「……いつまで座り込んでるんですか。見苦しい」
不意に、冷ややかな声が降ってきた 。 顔を上げると、そこには4人の少年少女が立っていた。中心にいるのは、緑色のボブヘアが印象的な少女、ナミアだ 。
「君たちは……?」
「Fランクパーティ『ハルモニア』です」 ナミアは淡々と告げた。「私たち、ちょうど『お守り』を探していたんです。中途半端な魔法剣士でも、いないよりはマシですから」
「お、おい、ナミア! 言い方!」 水色の髪をした少年、ハルトが慌てて割って入る 。「悪いな、こいつ毒舌なんだ。俺はハルト。槍使いだ。……正直、アンタの加入には反対だったんだけど、ナミアがどうしてもって」
「お兄さん、かっこいい……! あ、あたい、マイ! 運命感じちゃう!」 赤髪の少女、マイがキラキラした目でユウマの手を握る 。
「ぼ、僕、カケルです……。よろしくお願いします、ユウマ兄さん!」 金髪の少年が、恐る恐る、けれど温かい笑顔を向けた 。
追放され、蔑まれ、すべてを失ったはずのユウマ。 けれど、目の前の少年たちの純粋な眼差しに、凍りついた心がわずかに溶けるのを感じた 。
「……僕で、いいのかい?」
「ええ。あなたの実力、隠せていませんから」 ナミアがフンと鼻を鳴らした 。
こうして、魔法剣士ユウマと、4人の新人たちによる「Sランクへの無謀な挑戦」が幕を開けた 。 その時、ユウマの体内で「四つの小さな胎動」が呼応するように跳ねたことを、まだ誰も知らない 。




