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第3話 クピドの自業自得

クピドは、キューピッドの別名です。幼少期の「彼」の呼び名として使用しています。

悪戯好きの彼に降りかかった災厄のお話。

母アフロディーテの命を受け、外界に降りたクピドは、プシュケーの姿を確認できる場所を探しました。

本来、クピドの持つ弓矢は外界に降りずとも、天界から射掛けることが可能です。

神の子であるクピドなら、天界からプシュケーの姿を見ることも可能です。

なのに、クピドは自ら下界し、プシュケーの姿をなるべく近くで見ることを選びました。


そう、クピドは興味を抱いたのです。

母アフロディーテの再来と言われるプシュケーに。


もともとクピドは、好奇心の塊と悪戯が大好きな純粋な存在です。

下界の皆が知るように、クピドは予言の神アポロンと戦争の神アレスにさえ、無邪気な悪戯や

出来心による他愛もなく、意味のない仕掛け事を好む性根を持っていました。


父ゼウスと母アフロディーテは、そのクピドの性根を彼特有の「らしさ」として捉えつつも

いつか、己の身によって、その行為の代償を受けるだろうということを、危惧していました。


その危惧は、今日、この時、本日に結実してしまうのでした。


プシュケーの美しい姿が目に入った途端、クピドの弓を構える姿勢が崩れ

射貫かれた誰しもが恋に落ちてしまうと言われるクピドの矢は

クピド自身の掌に刺さってしまったのです。


クピドは、矢の痛みに耐えながら、手を胸に押し当て、手の疼きとは違う胸の痛みにも耐えるのでした。


「ああ・・・・・!!手の傷よりも胸の痛みよりも、頭に焼き付いたプシュケーの姿が、何よりも耐え難く、痛い。これが、恋なのか?いや、この矢に刺さった者の運命の疼きなのか・・・!!」


プシュケーへの恋へと堕ちてしまったクピド。

矢は、互いに射貫かれた相手同士を結び付ける性質を持ちますが、神となると話が少し変わります。

神に刺さると、刺さった時に見た相手へと恋に落ちてしまうのでした。


彼の唯一の幸いは、性根も見目も王国イチ醜悪な男に、矢を射る前だったことです。

男に射った後の矢をプシュケーへと射かける時に、うっかり間違えて自らへと刺してしまったのなら

違う物語が始まるところでした。

クピドは、速やかに自らを射た過ちの矢を消し去りました。


「あとは・・・・・・あの娘、プシュケーを僕のものにするのみ」


何も知らない、あどけない笑みを浮かべ、従者と歓談するプシュケーを背に

クピドは、急ぎ、背中の翼をはためかせ、友人である予言の神アポロンの許へ急ぐのでした。

続きます

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