第11話 ゼピュロスたちとプシュケー
プシュケーの適応力は高いようです
アモール
プシュケーにそう呼ばれる毎に、目を輝かせ、心を蕩けさせられるクピドの様子は、ゼピュロスだけでなく、その他大勢の精霊たちの稀なる見世物となっているのでした。
もちろん、精霊たちはクピドの恐ろしさ、オリュンポスのどの神にも怯むことなく
悪戯を仕掛ける純粋さを見知っています。
そんな己を――少しでも、見世物にして愉しんでいるのを知れば、精霊たちの命の灯は
消されることになるでしょう。
自分達の愉悦をクピドに悟られることがないのは、他ならぬプシュケーのおかげでした。
アモール
愛しい人よ
そう呼ばれるたびに、クピドは姿を現すことができない苦しさに胸を痛めながらも、プシュケーへと愛を注ぎます。館の中は、心地よい音楽にあふれ、磨かれた床、爽やかな壁、煌びやかな装飾の数々。象牙や大理石、黄金などのありとあらゆる全てがプシュケーへの愛と気遣いにあふれているのでした。
姿が見えないクピドやゼピュロスに案内されて、館を感嘆の声を上げながら見回るプシュケーに精霊たちが話をすることを許されて、そっと囁きます。
「ここの全ては、奥様、あなた様のものでございます。まずは、ゆっくり寝て、疲れを癒してくださいまし。そのあと、私たちがあなた様の湯治のお世話をいたします」
クピドの命を受けたゼピュロスや精霊たちは、この束の間の新婚生活を楽しむためにも、自分達の身の安全のためにも、プシュケーに誠心誠意、尽くすことを誓うのでした。
プシュケーは、精霊たちの声に従い、ゆっくり疲れを癒すのでした。
円形のベッドに入ったプシュケーの寝顔をこれでもかというほど見入ってしまったクピドですが、精霊たちに促され、夜になるまでは寝所に入るのは失礼だと諭され、しぶしぶ、館の自分の部屋へと戻ったのでした。
続きます




