12、竜を統べるものが持つ遺物
今回はちょっと短めのお話です。
竜に関して重要な部分がチラ見せ程度ですが含まれています。
前半に竜に関する話、後半は兄と護衛のコント色が強めかな。
ディークファルトの耳元で光るものを見つけ、マリエルはジッと見つめた。
「ディー様、珍しい耳飾りですわね」
ディークファルトの両耳に黒曜石にしては透明度のある石が着いていた。イヤリングが主流のデュリカーナでは見ないデザインだった。体に埋め込んだような耳飾りから吸い寄せられるようにマリエルは目が離せなかった。
「・・・これか」
ディークファルトは耳元に手をやり困ったような表情を見せた。
「これはオルリアで竜の世話をする者が代々受け継ぐ耳飾りなんだ」
「お世話、ですか?」
そう、と頷きながらディークファルトは言葉を紡いだ。
「代々、王がその総責任者で俺の先代はもちろん父王だ。ただ今は俺たち兄弟はそれぞれの分野で役割を決めて行動しているから、竜に関しては第四王子にと正式に決まった7年前、ちょうど俺が二十歳の時に父から譲渡された」
「そうなのですね・・・・綺麗ですわね」
ディークファルトの髪色と同じ色合いに今まで耳に飾りがあると気が付いていなかったが、一度目にすると気になるもので彼の動きに合わせて目で追ってしまう。
ディークファルトは耳飾りを触りながら重い口を開いた。
「・・・なぜ竜の世話をする者に、代々受け継がれているかわかるか?」
「いいえ」
「これを着けている者は、竜と意志の疎通が図れるからだ」
マリエルは意志の疎通が図れるという言葉を聞いて、引っかかるものがあった。
親愛の証に竜から貰った鱗は、遠く離れていても声が届くほどの効力を持つと十年前に他でもないディークファルトから教わった。
そして竜のことを調べていてわかったこと。彼らは魔法のようにそれぞれ能力を使うことができると言われている。おそらく昨晩ディークファルトが言っていた属性といったものに属し、火を吹いたり、風を起こしたりすることが出来るのだろう。実際にその能力を使う所は見たことはないが、そんな彼らと意志の疎通が図れると言うことは、その媒体とはもしかして・・・。
「では・・・それは鱗ですか?」
困った表情のディークファルトは否定も肯定もしなかった。
しかし、その色は黒曜石に似た色。
つまり黒!!!
「なぜ・・・」
ジュリアスを連れ去った黒竜の鱗など!!顔が険しくなるマリエルの意識を逸らすためにディークファルトは手で制しながら言葉を発した。
「落ち着いてマリー。少なくとも、この耳飾りは2800年前から受け継がれている」
あまりに膨大な時間引き継がれた事実にマリエルは驚いた。
「2・・・・・・2800?!」
「そうオルリアが建国された時にはすでにこれはあったと言われている」
つまり竜の個体によって寿命は千差万別とされ500年〜1000年程と言われていることから、少なくともその耳飾りの鱗の持ち主はジュリアスを連れ去った黒竜のものではないということだ。
ただここで疑問は残る。なぜ王竜の青ではなく黒なのか?
そもそも黒竜の位置付けは何。昨夜の話の中では黒竜には触れていなかった。
「なぜ青ではなく黒なのですか」
昨日の話でも出て来なかった黒竜の話は、今日話題に出てくるだろうと思っていただけにディークファルトも俯きがちになったが、こればかりは今のマリエルには教えられなかった。
「・・・それを知る権利を持っているのは、俺と結婚する者だけなんだ」
今はここで言う訳にはいかないと示唆する言葉に、マリエルは愕然とした。
オルリアの建国以来の秘宝でもあるその耳飾りと情報は当然秘匿と考えるべきだ。誰彼が聞いていいものではないと彼が言う以上そうなのだろう。
私にはその資格がないということだ。
(そうよね。だって私はディー様の婚約者ではないもの)
その線引きに憤りを感じる、と同時にもし自分ではない者がディークファルトの横に立ち、その権利を得たら?
ゾワリとした嫌悪感とドス黒いものが心の中を埋め尽くした。
これは、何?この感情は何なの?
マリエルの顔から感情が消え、考え込んだのを見てディークファルトも眉を下げた。
ディークファルトは敢えて、その権利を手にしてみないか?とマリエルに問うことを避けた。
彼女の今の様子では昨夜、ディークファルトが結婚してもいいと言った言葉はどこかにいっていることはわかっていた。
口説きはするが、最後の決断はマリー自身が結論を出して決めるべきだ。
一方的な感情を押し付けられる不快感は自分がよく知っているからこそ、彼女の気持ちを最優先に考えるべきだと何度も自分に言い聞かせた。
だからこそ確信を付くようなことはしない方がいいと思ったのだ。この駆け引きがどこまで有効かは、見てみないとわからないが。
吉と出ることを祈るしかないと思った。
俺は俺のできる最善の策で彼女の気持ちを少しでも自分に向いてもらえるように動くしかない。
先ほどまでの幸せな時間は過ぎ去り少し重たい空気になってしまい、残念に思ったディークファルトは予定よりも時間は早いが、気分転換に空の散歩と行きますか。と、気持ちを切り替え、生垣の向こうに視線を送った。
(ここでは、野次馬がうじゃうじゃいて落ち着かないしな)
そこにいるだろう人物に睨みを効かせた。
「あ、バレてる」
ディークファルトに睨まれて、苦笑いしたのはアランだった。
「ま、当然でしょう。気付いてないのは姫さんくらいでしょう」
護衛のことばに肯定したのは王太子だ。
「仕方ないさ、あえて鈍感に育てたからね、あの人が」
肩を竦ませた王太子に侍女のマーシーが実況を告げた。
「あ、二人でどこかに行くようですわ」
視線を向ければ、マリエルの手を引いて北東丘の方へ向かって行こうとしているディークファルトが目に映った。
その時またディークファルトが一瞬こちらへ顔を向け、視線を受けたアランは目を見開き、苦笑いの後、両手を上げた。降参ポーズだ。
それを見たディークファルトはニヤリと笑って、丘に向かって行った。
「何です、今の」
「余計なことはするな。だってさ」
「・・・牽制されたんすか」
「ま、当事者本人がそう言うんなら、もう任せるしかないよね」
そりゃそうだ。いくら妹が心配と言っても干渉しすぎだとジオンも苦言を言う。
「あなたは自重してちょうどいいくらいだ」
「何でさ!」
不満!と言いたげに突っかかて来る王太子に護衛も負けていなかった。
「極端なんすよ!やることが!!」
王家の秘薬って一時的に子ができないようにするやつだろう?!それを他国の殿下に盛るって、どうなんだよ!
「やるからには徹底的に、だろう」
王族であるならその考えも間違いではない。
「国を守るなら、そうしてくれ。むしろありがたい。けど姫さん個人のことには踏み込み過ぎだ!王となんも変わらん!」
事実を言えば、一番言われたくない言葉だったのか、事実を認めたくなかったのかアランはガーーーーーーン!!と白目で魂が抜けたようになった。
そんなアランを横目にマーシーが自身の夫にジト目を向けた。
「トドメ刺してどうすんのよ」
「それでも行き過ぎだ」
怒りが収まらず鼻息が荒い夫にマーシーは呆れ顔を向けた。
「よくそれで不敬罪で捕まらないわね」
「俺の人徳だ!ほっとけ」
腕組みしてそっぽを向いたジオンに逆にマーシーはほっとけるか!妻ゆえに!わかれよ、それくらい。と素直になれない妻は心の中で突っ込むのだった。
明日もう1話UPします。




