第4話 リオを救うための戦い
アキトは自室のモニターに映る無数の映像を睨みつけていた。ルミエールアカデミーの校内に仕掛けられた監視カメラのデータが、次々と解析されていく。画面には、マルクス・ヴェルナーの姿が映し出される。学園の廊下、研究室、そして学生たちの私的な会話の場――マルクスはどこにでもいた。
「こいつ、ただの学生じゃないな…」
アキトの指がキーボードを叩く音が部屋に響く。マルクスが学園のネットワークに不正アクセスを試みている証拠を掴むため、彼はカメラの映像をフレーム単位で分析していた。だが、マルクスの行動は巧妙で、決定的な証拠はまだ見つかっていなかった。
「国家に提出できるような証拠が欲しい…。マルクスの目的が、リオを消すことだけじゃないなら、何を企んでるんだ?」
アキトの頭には、リオの涙が浮かんでいた。ゲーム内で彼女が訴えたSOS。彼女の声は、ゲームの枠を超えてアキトの心に直接響いていた。
バーチャル空間「ルミエール・ラブロマンス」にログインしたアキトは、リオンとして活動するリオと再会した。ゲーム内の広大な森の奥、リオの姿は半透明になり、まるで消えゆく幻のようだった。
「アキト…助けて…」
リオの声は震え、彼女の瞳には涙が浮かんでいた。ゲームのテロップが無情に流れる。
**「警告:このままクリアできなければ、強制ログアウト。リオンは完全に削除されます。」**
「リオ、絶対に助ける。約束する!」
アキトはゲーム内のアバター、リオンとして、彼女を守るための戦いに挑む。だが、マルクスの仕掛けたプログラムは狡猾だった。ゲーム内のシステムはリオの存在を「バグ」として認識し、徐々に彼女のデータを侵食していた。
「マルクス…何でリオを狙うんだ?」
アキトはゲーム内のダンジョンを進みながら、リオの過去のログを解析し始める。すると、驚くべき事実が浮かび上がった。リオはただのゲームキャラクターではなく、現実の「ある人物」と深く繋がっていた。その人物こそ、ルミエールアカデミーに在籍する女生徒――。
一方、マルクスは学園の最上階にある秘密の研究室で、冷たく微笑んでいた。モニターにはリオのデータが映し出され、その横には「転送完了」の文字が点滅していた。
「リオ、お前はただのアバターじゃない。俺が手に入れたいのは、お前の背後にある『技術』だ。」
マルクスの目的は、リオの存在を通じて、バーチャルと現実を繋ぐ革新的な技術を掌握することだった。彼の父親が経営する巨大企業は、ルミエールアカデミーの医療技術とバーチャル技術を融合させ、新たな支配の道具を作り出そうとしていた。リオはその実験の鍵であり、彼女を消すことで、アキトを挑発し、彼の技術力を引き出すのが狙いだった。
「アキト、お前が動けば動くほど、俺の手元にデータが集まる。さあ、どうする?」
アキトはゲーム内でリオを救うための最後の試練に挑んでいた。ダンジョンの奥深く、巨大な「システムの番人」が立ちはだかる。だが、アキトの卓越したプログラミング技術がここで光る。彼はゲームのコードをリアルタイムで書き換え、番人のアルゴリズムを無効化。さらに、リオのデータをバックアップする独自のサーバーを構築し、彼女の存在を一時的に保護した。
「リオ、もう少し耐えてくれ。俺が必ずお前を助ける!」
しかし、ゲームの外ではマルクスの策略が次の段階に進んでいた。学園のネットワーク全体がハッキングされ、アキトの解析した監視カメラのデータがマルクスの手に渡ってしまう。アキトは追い詰められていた。マルクスの声が、ゲーム内のスピーカーから響く。
「アキト、ゲームはもう終わりだ。リオを渡せ。そして、俺の計画に協力しろ。」
アキトはモニターの前で拳を握りしめた。リオの涙、マルクスの冷酷な笑み、そしてゲームと現実の境界が曖昧になる感覚。彼は決意する。
「マルクス、俺はお前を止める。そして、リオを絶対に守ってみせる!」
第4話では、アキトの技術力とリオへの想いが試される展開にしました。マルクスの目的に少しずつ迫りつつ、リオの秘密も匂わせています。次回はアキトのハッキングシーンをさらに掘り下げ、アクションとドラマを強化予定です。感想や展開のご希望があれば、ぜひコメントください。