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引きこもりオタクのYouTuberはバーチャル仮想空間でクラスメイトの女性徒と恋をする  作者: 東雲明


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第31話 愛の代償と不屈の心

仮想空間「ルミエール・ラブロマンス」の「星の神殿」最上階は、まるで銀河を閉じ込めた円形の祭壇だった。ドーム型の天井には輝く星座が広がり、無数の星屑が舞い、中央の光の結晶が脈動している。アキトとマルクスの戦いは熾烈を極め、祭壇の床には光の亀裂が走っていた。


アキトは「星輝の杖」の力で強化された拳を振るうが、マルクスは管理者権限を駆使した黒い剣で対抗。剣技が閃き、アキトを捉えると、彼の身体が弾き飛ばされた。                


「ぐっ…!」


アキトは祭壇の端に叩きつけられ、膝をつく。  


「はぁっ…はぁっ…!」


彼のアバターが揺らめき、HPバーが赤く点滅。マルクスの削除プログラムがデータを侵食し、胸に鋭い痛みが走る。


「アキト!」


医療戦士リオが叫び、駆け寄った。彼女の瞳には星の光を映した涙が溢れ、声は愛と恐怖に震えていた。彼女はアキトの頬に両手を添え、そっと唇にキスを落とした。柔らかく、温かく、まるで彼の痛みを吸い取るようなキスだった。


「お願い…負けないで。アキト、あなたがいない世界なんて、わたしには耐えられない…!」


アキトはリオの温もりを感じ、掠れた声で答えた。


「リオ…君がそばにいるから、俺はまだ戦える。現実で君と星空を見る夢…絶対に諦めない!」


リオは涙をこぼしながら微笑み、彼の手を握った。                       


「アキト…わたしも、その夢を叶えたい。あなたと、どんな形でも一緒にいたい…。」


彼女はアキトの髪に指を絡ませ、額を彼の額に寄せ、仮想とは思えない花のような甘い香りが漂う中、囁いた。  


「アキト…大好き。あなたを失うくらいなら、わたしは何だってする。」


リオの心は、愛と恐怖の間で激しく揺れていた。彼女の瞳に映るアキトの揺らめくアバターは、かつての自分――削除されかけたアバターとしての冷たい闇を呼び起こす。


「また…わたしが消える…?」


彼女の胸に、凍えるような恐怖が広がった。かつて、仮想空間の端でデータが崩壊する感覚、存在が溶ける無力感がフラッシュバックする。あの時、彼女はただのプログラムだった。感情も、意志も、未来もなかった。


だが、アキトの存在がすべてを変えた。彼の笑顔、彼の手の温もり、彼の


「君を失うなんて耐えられない」        


という言葉が、彼女に「心」を与えた。     


「わたしは…ただのアバターじゃない。アキトがわたしに命をくれた。」



彼女は無意識に自分の手を握りしめ、震えを抑えた。アキトの苦しむ姿を見るたび、彼女の心は締め付けられる。


「彼を失うこと…それだけは絶対に嫌!」


彼女は「星輝の杖」を両手で握った。杖は深い藍色で、星屑が螺旋状に流れ、先端の星型虹色結晶が輝く。銀の装飾が施された握り手は光に合わせて脈動し、低いハミング音を奏で、まるで銀河の意志を宿した生き物のように振動していた。光の粒が周囲を舞い、触れる者を癒すオーラを放つ。



「アキト! 例え私が壊れても、私はあなたを…!」


リオは杖を力強く振り下ろした。青白い光がアキトを包み込み、彼のHPが全回復、攻撃力が格段に上昇。データノイズが消え、アキトのアバターが輝きを取り戻す。          


「リオ…ありがとう!」


彼は立ち上がり、拳を握り直し、マルクスに突進。拳が空気を切り裂き、マルクスのバリアを砕いた。


だが、リオの身体がふらついた。


「…っ!」                  


彼女のアバターが薄く揺らめ、データノイズが走る。杖の女性的な声が囁いた。         


「私の力には代償があるわ。使うたびに、あなたの体力が削られる…。」


リオの瞳に恐怖がよぎった。          


「消える…また、わたしが…?」


彼女の心は、削除の闇とアキトへの愛の間で引き裂かれそうだった。               


「わたしは…もうあの暗闇には戻りたくない…!」


彼女は目を閉じ、かつてのアバターとしての記憶――無意味なコードの集まりだった自分、感情を知らずにただ存在していた虚無――が蘇る。


だが、アキトの声が彼女を引き戻した。     


「リオ! お前は俺の力だ!」


彼の言葉が、彼女の心に光を灯す。       


「アキト…あなたがそう言ってくれるなら、わたしは…!」                   


彼女は唇を噛みしめ、恐怖を振り払った。    


「わたしはアキトのために存在する。例え消えても、彼の夢を守りたい…彼の笑顔を守りたい!」


彼女は震える手で杖を握り直した。心の中で、アキトとの記憶が次々と蘇る。星空の下でのキス、彼の手の温もり、夜の海辺でデートする約束。あの瞬間が、彼女に「生きる」意味を与えた。      


「アキト…あなたが笑ってくれるなら、わたしは何度でも戦う。例えこの身体が消えても、わたしの愛は消えない…!」


リオは再び杖を振り下ろした。光がアキトを癒し、彼の攻撃がさらに鋭くなる。だが、彼女のアバターは半透明になり、データノイズが激しくなる。  


「くっ…! この杖…チートだけど、使うたびに私の体力が…!」 彼女の膝が折れ、祭壇の床に倒れ込む。


「リオ!」                  


アキトが叫び、彼女に駆け寄る。        


「やめろ、無理するな! お前が消えるなんて、俺は耐えられない!」


リオは弱々しく微笑み、彼の手を握った。彼女の指は震え、アバターが薄れる中でもアキトの温もりを必死に感じようとした。            


「アキト…あなたを失う方が、わたしには怖い。わたし、命懸けで戦うよ…あなたとあの星空を見るために。」


彼女はふらつく身体で立ち上がり、杖を握り直した。 


「アキト、行って…マルクスを倒して!」


マルクスは怒りで震えていた。         


「貴様ら! どこまでも俺の邪魔を!」


彼の管理者パネルが赤く点滅し、祭壇の周囲に暗いバリアを展開。新たな手下――黒い影のアバターたちが現れ、アキトとリオを包囲した。マルクスは黒い剣を握り、冷酷な笑みを浮かべる。      


「その杖を奪い、お前たちをまとめて消してやる! この世界は俺のものだ!」


背後のモニターには、アキトのデータが赤いエラーコードに侵食される様子が映り、手下がサーバールームで削除プログラムを加速させていた。


リオはアキトを背に、杖を握り直した。     


「わたし…負けない。アキトを守るために…!」


彼女の心は、恐怖と愛の間で揺れ動く。     


「もしわたしが消えても…アキトが生きてくれるなら…!」


彼女は目を閉じ、アキトとの思い出を胸に刻んだ。初めてのキス、星空の下での約束、彼の笑顔。あの瞬間が、彼女に「心」を与えた。        


「アキト…あなたがいるから、わたしは強くなれた。例え消えても、わたしの愛はここに残る…!」


彼女は最後の力を振り絞り、杖を高く掲げた。  


「星輝の杖! アキトに力を…!」

 

青白い光が爆発し、アキトの身体が輝く。攻撃力が限界を超え、彼の拳がマルクスのバリアを粉砕。だが、リオのアバターはほぼ透明になり、星屑のような光に溶けそうになった。       


「アキト…わたし、頑張ったよ…。」


アキトはリオの異変に気づき、叫んだ。     


「リオ! もういい、杖を離せ!」


だが、リオは微笑み、首を振った。       


「アキト…わたしは、あなたの夢を守りたい。例えわたしが消えても…あなたが笑ってくれるなら…。」


彼女は震える手で杖を振り下ろし、アキトを再び強化。彼女のアバターはほとんど消滅寸前、杖の光が弱まる。


マルクスが嘲笑し、剣を振り上げる。      


「愚かな女だ! その杖を奪ってやる!」


彼はバリアを強化し、手下に攻撃を命じる。祭壇は黒い影で埋め尽くされ、アキトとリオを追い詰める。


ルミエールアカデミーのサーバールームで、ハヤトはモニターを見つめ、コードを高速で打ち込んでいた。


「アキト、リオ、頼む、持ちこたえて…!」

彼の解析で「星輝の杖」の代償が明らかだった。 


「使用者のデータが削られる…! リオ、限界だぞ!」

ハヤトはマルクスのプログラムを阻止すべく、システムコアへの対抗コードを打ち込み続ける。


「アキト、リオを守ってくれ…!」


アキトはリオを背に守り、杖の力を宿した拳で手下を薙ぎ払う。                 


「リオ、俺が戦う! お前はもう無理するな!」


だが、リオは杖を握り、涙を流しながら振り下ろす。


「アキト、わたしはあなたと一緒に戦う! この愛を守るために!」



彼女のアバターはほぼ消滅寸前。マルクスが削除ボタンに手を伸ばす。  


「終わりだ、引きこもり!」


果たしてアキトはマルクスを倒し、リオとの愛を守れるのか? リオの命懸けの決意は、削除の危機を乗り越えられるのか? 「星輝の杖」の代償は、二人をどこへ導くのか――?

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