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引きこもりオタクのYouTuberはバーチャル仮想空間でクラスメイトの女性徒と恋をする  作者: 東雲明


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第16話 グッズの重みと心の波

ルミエール王国の仮想空間に、イベント開始を告げるファンファーレが鳴り響く。青く澄んだ空の下、遠くの山脈に白い雲が漂い、風に揺れる花畑が色鮮やかに広がる。だが、アキトの心は嵐のように乱れていた。画面にポップアップした


「逃げたテリアを再び捕まえよう」


のルール説明が、彼の胸を締め付ける。


「ルミエール王国中に散らばったリオのグッズを集めよう! 全て集めれば、テリアの居場所が書かれた地図が手に入るよ!」


画面に映し出されたのは、アキトが心血を注いで作ったリオのグッズたち。缶バッジ、キーホルダー、アクリルスタンド、タペストリー、そして…抱き枕カバー。ピンクの看護服を着たリオが、『ナースエンジェル⭐︎リリカSOS!』のヒロインさながらに魔法のステッキを振り回すイラストが、キラキラと輝く3Dモデルで表示される。アキトの心臓がドクンと跳ね、喉がカラカラに乾く。


俺は毎日タペストリーのイラストにリオと姉の笑顔を思いながら話す練習をしていた。


(やばい…これ、全部俺の愛の結晶なのに…!)


入学式の時初めて見たリオの笑顔を想像して夜なべして作り、いつか学校に行けたらちゃんと話をしようと思って毎日タペストリーに向かって話す練習の日々を続けた。


隣に立つリオのアバターが、ゆっくりと振り返る。その瞳には、怒りと失望が渦巻いていた。 


「アキト…これ、全部あんたが作ったの?」


彼女の声は氷のように冷たく、鋭い刃のようだ。 


「学校サボって…こんな、こんな恥ずかしいものばっかり作ってたの?!」


アキトの心がギュッと締め付けられる。 


「ち、違うんだ、リオ!」


彼は必死に手を振るが、声は震えていた。


「これは…君にピンクの看護服を着て、魔法のステッキを振り回してほしくて! 『ナースエンジェル⭐︎リリカSOS!』のヒロイン、リリカみたいに、君が…超可愛いって、俺、ずっと思ってて…!」


だが、言葉を重ねるほど、リオの瞳は冷たく凍りつく。ステータス画面がピコンと鳴り、恋愛ゲージが30%も急降下。HPもジリジリと削れ、アキトの胸に突き刺さる痛みが走る。(リオに…こんな目で見られるなんて…!)彼女の呟いた「…最低」の一言が、アキトの心にクリティカルヒットとなって突き刺さる。彼は膝をつきそうになり、視界がぼやける。


(俺の推しへの愛が…こんな形で裏目に出るなんて…! でも、君を救いたいんだ、リオ…!)


そこに、マルクス・ヴェルナーの嘲笑が容赦なく追い打ちをかける。


「ふん、引きこもりのガラクタ集めか。くだらない趣味だな、アキト。こんなものに執着するなんて、救いようがないぞ。」


金髪をなびかせ、課金装備でキラキラ輝くマルクスのアバターは、まるで王者のように君臨している。


どうだ見たかマルクスめ。このガラクタ作るのに俺のテクノロジーと◯万円の金を出して作ったんだぞ。テメェの汚い金なんか一捻りだ。限界キモオタの実力を思い知れ。


「テリアを先に捕まえるのはこの俺だ。覚悟しろ!」


彼の声には、どこか楽しげな響きが混じる。だが、その目に一瞬だけ浮かんだ影に、アキトは気づかなかった。


リオが突然、カッと目を吊り上げる。


「ガラクタ?! 私の…いや、アキトのグッズをガラクタ呼ばわり?! マルクス、ふざけないで!」


彼女の怒気が爆発し、マルクスのHPが一気に20%ダウン。逆にアキトのHPがわずかに回復し、恋愛ゲージもほんの少しだけ上向きに。リオは拳を握りしめ、アキトを見つめる。 


「アキト! こうなったら、マルクスより先に私のグッズを集めてよね! 絶対負けないで!」


その言葉に、アキトの心に熱い炎が灯る。


(リオ…君が怒ってるのに、俺を応援してくれる…! 君のその気持ちが、俺の全部だ!)


「よ、よし、リオ! 俺、絶対にテリアを見つけて、君を救うから!」


アキトはコントローラーを握り直し、涙目になりながらも決意を固める。


「途中で行われるミニイベント、最新ゲーム体験会や光のダンスバトルに参加して、ゲームを有利に進めよう! 用意はいいかな? では、スタート!」


アニメのリリカの元気な声が響き、イベントが幕を開ける。


マルクスは自信満々にスタートダッシュを決める。金と権力で学園を牛耳る彼のアバターは、課金アイテムの剣とマントで眩いほどに輝いている。


「フハハ! こんなイベント、俺の財力で一瞬だ!」


と高笑いするが、突如、フィールドに現れた野良犬型アバターが彼に襲いかかる。


「う、うわっ! や、やめてくれ! 犬は…犬は苦手なんだよー!」


マルクスは悲鳴を上げ、必死に逃げ回る。実は彼、極度の犬嫌いだった。豪華な装備も虚しく、犬に追い回され、HPがゴリゴリ削れていく。


(なぜだ…なぜ俺がこんな目に!)


マルクスの心は恐怖と屈辱で揺れ、普段の自信満々な仮面が剥がれ落ちる。彼の叫び声には、どこか子供のような怯えが混じっていた。


その隙に、アキトは「最新ゲーム体験会」に到着。VR空間内のリズムゲームに挑む。画面に流れる『ナースエンジェル⭐︎リリカSOS!』の主題歌が、アキトの心を奮い立たせる。(リオのグッズを…俺が守る! 君を救うんだ!) コントローラーを握る手が汗で滑るが、集中力は研ぎ澄まされる。コンボを連発し、見事クリア。最初のグッズ――リオの缶バッジを手にすると、アキトは叫んだ。


「よし、最初の一個だ! リオ、待っててな!」


だが、リオの反応はまだ冷ややかだ。  


「…まだ許してないから。次、ちゃんとやんなさいよ。」


彼女の声には怒りが残るが、その奥に微かな期待が隠れている。アキトはそれを敏感に感じ取り、胸が熱くなる。


(リオ…君のその一言だけで、俺、頑張れるよ…!)


一方、現実世界では、ハヤトがアキトとリオを助けようと必死だった。ルミエールアカデミーの学生寮、薄暗い部屋で、ハヤトは古びたノートパソコンを前に汗だくでキーボードを叩く。


「アキト、俺がサーバーにハックして、グッズの座標を直接送ってやるぜ! 田舎者だって、友達のために役に立ってみせる!」

ハヤトの心は純粋な思いに溢れている。(いつも失敗ばっかりだけど、今回は…今回は絶対、アキトとリオを助けたい!)


だが、彼のPCスキルは壊滅的だ。コードをいじった瞬間、画面に「ERROR 404」と赤い警告が点滅。仮想空間のシステムがバグり、アキトが苦労して手に入れた缶バッジが、なぜかマルクスのインベントリに転送されてしまう。


「ハヤトぉぉ! 何やってんだよ!」  


アキトの叫びがVR空間に響く。マルクスは犬から逃げ切り、突然手に入った缶バッジを見てニヤリ。    

「ふん、運も実力のうちだな。引きこもりにはもったいないグッズだ。」


マルクスの嘲笑に、アキトの心は悔しさで煮え滾る。


(ハヤトのバカ! でも…ここで諦めるわけにはいかない! リオが…俺を信じてくれてるんだ!)


ハヤト自身も現実世界で頭を抱えている。    


「うわっ、俺、またやらかした…! アキト、ごめん! 今度こそ、ちゃんとやるから!」


彼の目には涙が滲み、純粋な気持ちと無力感が交錯する。PC画面には新たなエラーメッセージが次々とポップアップし、ハヤトのドジが仮想空間にさらなる混乱を招いていた。


アキトは歯を食いしばり、次のグッズを目指す。 

「ハヤトのバカ! でも、負けるわけにはいかない! リオのため、テリアを見つけるんだ!」


リオも拳を握り、アキトを応援する。  


「アキト、諦めないで! マルクスなんかに私の…じゃなくて、グッズを渡しちゃダメよ!」


彼女の声には怒りと期待が交錯し、アキトの心を強く揺さぶる。 


(リオ…君のその声が、俺の全部だ。君を救うためなら、どんなバグだって乗り越えてみせる!)


次のミニイベント「光のダンスバトル」が目前に迫る。キラキラしたステージで、リオのキーホルダーを賭けた戦いが始まる。アキトはコントローラーを握りしめ、リズムに合わせてステップを踏む準備をする。だが、マルクスも犬のトラウマから立ち直り、ステージに乱入してくる。


「アキト、貴様のオタクグッズなんぞ、俺が全部奪ってやる! テリアも、勝利も、俺のものだ!」


マルクスの目には、いつもと異なる熱が宿っている。アキトは一瞬、その目に深い何かを読み取る。


(マルクス…お前、なんでそんなに必死なんだ? 何か…隠してるのか?)


果たして、アキトはリオのグッズを集めきり、テリアの地図を手に入れられるのか? ハヤトのバグがさらなる混乱を招く中、リオとの恋愛ゲージは回復するのか? そして、マルクスの心に隠された秘密とは――?

推しのグッズは最高の癒しですよね。作者自身も推しアイドルのグッズを買いまくっては担当さんに怒られてますw果たしてアキトは、自作の推しグッズを回収出来るのか?明日からの展開も、乞うご期待です!

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