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デジタル

 うれしくないプレゼントをもらうと、とんでもないベクトルで悩まされる。特に川瀬は思考が停止する。この浅そうで深い話を誰にしていいのかすらわからない。もちろん二十歳の川瀬にも同世代の友だちで、笑い話にできる人ならいくらでもいるはずだがすぐにできない。

「キズついたなあ」

 紙の帽子を留めなおしながら考えた。

 川瀬は大阪なんばの近くのケーキ店でアルバイトをしていた。初めたのは大学に合格した二ヶ月後だから、まだ一年にも満たないが、そろそろ辞めようかと考えていた。合う合わないとなれば合うとは思うけど、夏休みも定期でなんばまで出てくることが面倒だと気づいた。学校があるからこそ都会へ出てきているのだなと感じていた。

 追い打ちをかけてくることが起きた。とある大学生で異性の客だ。ショートケーキ、ガトーショコラ、モンブランを注文してくれ、箱に入れ、プレゼント用のリボンをつけて精算した後、ショーケースから出て渡すことになっているのだけれど、何と相手はそれごと川瀬にプレゼントしてくれたのだ。

「僕からのプレゼントです。もしよかったらお茶でもお付き合いしてくれませんか」

 お茶、紅茶、珈琲の誘いか。デートだ。いくら田舎の高校から大学生になって都会デビューした川瀬でも理解できる。川瀬は秋のモンブランをあしらったエプロンを脱いで、パティシエ風の制服も脱いで、彼をイートインへ案内した。七分袖のシャツ姿は店内でもさすがに寒い。ちなみにエプロンはプチモンブランが追いかけっこしている図柄で好きだった。

 なんばパークスは構造上、廊下を外からの風が吹き抜けるので、どこにいても風が吹き抜ける。野坂は冬のなんばパークスのことを冬山登山と呼んでいる。夏はサウナと。

「アイスコーヒーを。川瀬さんは?」

「結構です」

 後でメイに聞いたところ、真中という大学生で一ヶ月ほど前に川瀬に一目惚れしたということで、しつこく聞かれたが、まさかこんなことするとはと笑い転げていた。川瀬は暇だという以外に何となくも気づいていなかった。

「ずっとバイトしてたからね。あのお蕎麦屋さんで。よう来てたわ。怒ってるん?」

「え?」

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