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入学前②

辺境伯三男のアンディ様との出会いは偶然。


実は前世のWeb小説の舞台『オレンジ色の空に誓う』の誓いのシーンに出てくる場所が王都にあるんです。

それをマルシェに聞いた私はお登りさんよろしく


「聖地巡礼じゃあ!」


と雄叫びをあげ見学に行ったんです。

王都の端っこにちょっと小さめな教会があるんだけど、そこの裏に小高い丘があってベンチが一つ置いてあるの。

そこから眺める夕日がこの物語のキモい、いや肝だそうです。


ロマンチックな設定にゾワゾワするけどマルシェは結構うっとりしてる。

夢見る乙女なのね。


14歳の変装した貴族の子女が夕方に行けるはずもないから行ったのはカンカン照りの昼日中。


全然小高くなくって何なら高いんです、小なんか付けんなよってくらい、ベンチの場所に付いたときはヘロヘロになってました運痴の私。


ハァハァ言いながらベンチに手を付いてやっとこ座ったらマルシェがタオルを濡らしてきてくれました。

同じ距離を登ったのに何故かマルシェはそんなに疲れてない。


自分の体力のなさに意気消沈しながらタオルで汗を拭いてたら、ベンチの横の木の上から声をかけられた。


「大丈夫?」


その優しい声の主がアンディ様でした。


木の上で寝てたんだって、運痴の私はギョッとしてどうやって?と聞いたけどマルシェは気持ちよさそうって言ってた。

これが可愛い女とガサツな女の違いかぁと思ってたけど、よく見ると二人お似合い。


その日はお互いの自己紹介をし合って剣の稽古の時間だからと彼は帰って行った。


教会の先に訓練場があってそこで指南してもらってるそうだ。

そんなの聞いたら《《そこ》》行くよね。


何日かしてまた二人でその訓練場に行ったんだけど大人の中に紛れてるアンディ様は直ぐ見つけられた。


結構打たれててその度にマルシェが「痛っ」って言ってるからきっと自分の事のように感じてるみたい。

うんこれは二人くっつけなきゃでしょう。


マルシェ一人で出られるといいけど流石にそれはお許しが出なくてお邪魔虫の私も毎回行ってるけど、運痴の私には剣術は全く興味がないのだ。


だからといってマルシェ一人で放置するわけにも行かなくてほとほと困っていたら、そこでフィオナという少女と知り合った。


知り合った時はマルシェのライバルか!と警戒したけれど彼女のお父様が、ここの先生なんだって。

アンディ様を指導しているのがフィオナ嬢の歳の離れたお兄様だった。


彼女はカーティ侯爵のご息女。

カーティ侯爵といえば代々騎士団を纏める任を王家より賜ってる家柄だ。

騎士団長よりも上の身分だ。

なるほどね、親の職場に遊びに来ているということなのかな?


「学園入学まで暇でしょう、もうお勉強は課程終了しちゃったし、本当なら婚約者とか決まってたらこの時期は交流を深める時期の筈なのに、唐変木がサッサと決めないからこっちは暇でしょうがないのよ」


王太子を唐変木呼ばわりするこの不敬な女の子とはとっても気が合いそうだ。


それからは暇な私達は訓練場で会ったりお互いの家にお茶会で招待し合ったりして婚約者ではなく友情の交流を深めたの。


序にマルシェの為に二度ほどアンディ様もご招待したわ。


フィオナが家に来るようになっていつの間にかお父様とお義母様も仲直りしたみたい。


結局寮には入らなくてすんだからホッとした。


少しでも長くマルシェとは居たいもんね。


さぁ物語の舞台がもうすぐ幕開けだわ。


モブですらない私は気楽な身分で学園入学を待ち侘びてました。







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