あの日の出来事
陛下がお父様の部屋に来てから二人で奥の小部屋に引き篭もっちゃいました。
私は暫くしたら公爵家の執事のセバスが迎えに来たので公爵家に帰ることに。
良かった⋯結構退屈だったのよ、すること無いし幾ら美味しいフィナンシェでも山盛りは食べれないもの。
家に帰る馬車の中であの日のお茶会での出来事を思い返していました。
あの日はおそらくだけど王太子様の婚約者や側近を選定する為のお茶会だったと思う。
私は朝からマルシェとお義母様とお出かけが嬉しくてワクワクしていたのを覚えてる。
本当はお揃いの衣装でお出かけしたかった。
でもお義母様はそこの線引きが途轍もなく厳しい人なの。
ちょっとしたお出かけなら揃いの衣装で出かけるのも何も言わないのだけれど、公の場では駄目なんだって言って、私とマルシェに少しだけ(生地の優劣)差をつける。
同じシルクの生地だったけどマルシェのは少しだけ光沢が落ちてた。
公爵家と伯爵家の違いなんだって、その時は良くわからなかった。
なんせ6歳ですから。
今ならわかるけどね、お義母様は私に配慮をちゃんとしてくれる。
お茶会は多分30人位は集まってたと思う。
数は男の子のほうが多かった。
この国の王太子は王妃様の産んだ唯一の男の子であるリスキャリー様。
陛下そっくりの黒髪で王妃様と同じサファイアブルーの瞳。
少し切れ長の目が子供ながらに印象的だった。
王妃様と二人のテーブルに挨拶に行ったのだけど、やはりこういう時は爵位順になるわけよ。
私の前には一人だけ三公爵の一角を担うサバイア公爵家のライアン様、その次が私になるんだけれどお義母様は王妃様の元侍女なわけで、気安い関係もあったのだと思う、王妃様がマルシェにも一緒に挨拶の許可を出したの。
私は別段不思議に思わなかったけどお義母様はとても恐縮してた。
挨拶のあとは案内されたテーブルに三人で座って出された極上のジュースをマルシェとニコニコしながら飲んでたの。
そうしたら王族への挨拶が終わった子達がワラワラとこちらのテーブルに挨拶に来るのよ。
何故?公爵家だから?
今思えば笑っちゃうんだけど男の子はマルシェの方へ女の子は私の方へと⋯。
まぁマルシェは可愛い子だから男の子達も舞い上がっていたんでしょう。
みんな顔が真っ赤だったもの。
みんなで楽しくお話していたら突然王太子様がやってきた。
「とっても楽しそうだね、僕も入れてもらってもいいかな?」
王太子様は流石に礼儀を重んじる方だったのか、その問いかけは私にしてくれた。
「どうぞ王太子様お座りください」
お義母様がそう言って私とマルシェの間の椅子を王太子様に奨めたの。
ニコニコ顔で座った王太子様はマルシェの方に向かってあれやこれやと質問してた。
何故か私にはサバイア公爵子息が矢鱈と話しかけてたんだけど。
その時にあの子がやってきた。
「リス様ぁ私ともお話してくださいませ」
私達の前に来てマリエーヌ様が王太子様に話しかけたんだけど、王太子様のあからさまな嫌がる顔はちょっと吃驚しちゃった。
「マリエーヌ今はみんなで語らいの時間なんだ、君とはさっき話したじゃないか」
「まだぁ足りません~」
「⋯⋯」
大きく「はぁ」とため息を一つ吐いて王太子様は私達に「じゃあまた後で」と席を立ち上がったのでした。
私はただ「この子凄いな」と思ったんだけどその瞬間あの子がテーブルにあったアップルジュースを持ったのが見えて、私は直ぐ様立ち上がってマルシェの前に立ったの。
丁度王太子様が立った後だったから私達も挨拶する為に立ち上がってたの。
間に合って良かった。
それにしてもとんでもない女だ。
あの子絶対悪役令嬢よね、確定だと思う。
だってプンプン匂うもん
悪役の匂いだわ。
悪役の子って親もだいたい碌でもないけど、今日のこと考えたらそのとおりだなぁって思ったよ。
でもこんな面倒臭いこと早く解決してほしい。
あ~あ前途多難だ
やっぱり何か対策を立てるべき?
私じゃなくてマルシェのために。