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オレンジ色の空に誓う  作者: maruko


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時は遡り★ストマイク伯爵家

「ジェィムズ貴方は担任じゃなかったの?」


城でエルファイア様の件で呼び出しを受けた母が帰ってきて直ぐに父の執務室に呼ばれた私は叱責された。

当たり前の事に只管項垂れるしかない。


担任のくせにタイオール伯爵令嬢から訴えがあるまで私は事態を知らなかった。

言い訳もできぬ失態だ。


ストマイク伯爵家は代々教師の家系だ。

主に王家の教育を任されている。


そんなストマイク家に産まれた私は子供の頃から植物に目覚めてしまった。

マナーや歴史、学問、この家に産まれたら他家よりも厳しい教育を受けなければならない、そんな私の癒やしが其処ここに生えている草花だった。


情操教育の一環なのか父が週一で連れて行ってくれる森で色んな植物に触れた私は、如何しても植物の研究がしたかった。


両親にはあまりいい顔をされなかったが兄が後押ししてくれた。


だが只研究だけするのは穀潰しだ。

学園の教師になる事で納得してもらったのだ。


私は常日頃から自分の授業が無いときは只管学園内の研究室に篭っている。

そもそも担任をしてはいるが私の担当は淑女マナーなのだ。


男が淑女マナーと侮るなかれ、家では兄も私も母に習った。

そんじょそこらの夫人には負けないと自負している。

だから私の授業は週一のみで後は研究室一直線だった。


だからという言い訳は出来ないが本当にそんな事になっていたとは全く気付かなかったのだ。


もっと目を光らせておくべきだったと後悔している。


母の怒りは凄まじかった。


「アシュリー公爵家から面会の要請があったのですよね」


私の質問にギロリと目を光らせて母は私を見据えた。


「えぇエルファイア様はお越しではなかったけれど公爵夫妻がお見えでした」


「エルファイア様はどうされているのですか?」


「どうもこうも、そもそもの話ですわ。王太子妃を軽んじすぎです、あの学園はどういう教育をされてるの?聞くに耐えなかったわ。今回は殿下の側近たちも謹慎させると、もちろん殿下もですけど、それでも許してはくださらなかったわ。当たり前だけど」


「どういう事ですか?コルシェ侯爵令嬢だけではないのですか?」


「それくらいでエルファイア様が早退まですると貴方は思っていたのかしら?そんなお方ではないわ」


「では⋯⋯」


「貴方は担任なのに状況も把握していなかったのね」


「⋯⋯申し訳「謝る相手が違うわ」」


母は取り付く島もない


「教えてはいただけないでしょうか?」


「情けない息子だこと!研究研究って⋯まぁいいわ、教えて差し上げるからそこへお座りなさい」


やっとソファに座らせてもらえた私は両親の対面に腰掛けた。

父は先程から一言も発していない。


「コルシェ侯爵令嬢は毎朝早くから登校してエルファイア様の席を陣取っていたそうよ」


「それは聞いております、タイオール伯爵令嬢がそう言って相談に来ましたから」


「それはまぁエルファイア様が来る前なら100歩譲って許せます、本来ならそれもあまり良いことではありませんが⋯⋯」


「そう⋯ですね」


「彼女はエルファイア様が来られても授業の始まるまでそこで過ごしていたそうですわ」


「は?授業の始まるまでですか?」


「えぇそうよ、何貴方どういうふうに聞いたの?」


「いえ確かにどんなに注意しても席を譲らないとしか⋯⋯」


「はぁ」


母の大きな溜息は確実に私を責めている。


「殿下もやんわりしか注意しなかったそうです。まぁお立場からそこまでは言えないこともわかりますけどね、特に今は。ですが!側近たちはその殿下の代わりに引き剥がすなり何なりすればよろしいのに、注意は初めだけだったそうよ」


「初めだけ?」


「えぇコルシェ侯爵令嬢は奇声を上げるそうね」


「あぁありました確かに」


「ありましたじゃないわよ!それが煩くて見てみぬふりを皆がしたそうなの、エルファイア様お一人に我慢をさせて」


「そういうことですか、タイオール伯爵令嬢が姉だけが我慢をさせられるという意味がよくわかっていませんでした」


「なんて腑抜けなの!あなたという人は!」


「⋯⋯」


「新学期の翌日から一昨日までずっとよ、その間皆がエルファイア様を軽んじていたのよ。エルファイア様も一言二言は苦言を呈されたそうだけど、ご自分が遅く来ることで教室の調和を図ろうと譲歩されていたの。でも一昨日、ミンティ伯爵令息が椅子を用意されたそうなの」


「椅子ですか?」


「会議で自習になったでしょう」


「はいその件の会議です」


「いつもは教師が来ると席を離れたそうなの、でも教師が来ないでしょう自習なら。気を利かせたつもりでエルファイア様に椅子をお持ちしたの。殿下の反対側にね。それってエルファイア様のお気持ちというより私達もそれを聞いて思ったわ」


「?」


「男性はそれくらいって思うのでしょうけど、その行為はコルシェ侯爵令嬢が殿下の隣に侍ることを許す行為、そしてそれをエルファイアさまに黙認しろという行為。敷いては側室を認めろという行為にも繋がるのよ」


「そんな!」


「そういう風に捉えられるの、コルシェ侯爵令嬢に!」


「あっ!」


「わかったかしら?殿下の側近がその行為をして殿下も何も仰らなかった、ただ学園の調和がどうのと言う問題ではないのよ!特にあの学園ではね!わかるでしょう。一つの社交界なのよ!どれだけエルファイア様を馬鹿にしたのかわかってるのかしら?」


「⋯⋯はい」


「婚約は辞退したい、留学させると仰っていたわアシュリー公爵家は」


「そんな⋯⋯」


どう考えても私の失態だ。





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