僕のきらきら
僕のほうが先にきみのことを好きになったし、絶対にアイツよりきみのことを知っている。
それなのに、きみはどうしてそんなに嬉しそうな顔でアイツを追いかけていくのか。僕を置いて。
小さい頃から僕たちはずっと一緒だった。初めて会ったとき、僕はびしょ濡れで、寒くて公園の遊具の中で雨宿りしていた。そこにきみが現れて、一緒にお家に連れて帰ってくれたよね。学校帰りのきみが、僕を連れて帰ったから、ママはすごく驚いていたよね。でも、ママは温かく迎えてくれたんだ。
安心したようにきみが僕の頭を撫でた瞬間、僕の頭に星が飛んだ。僕はきみが大好きになった。きみだけが僕の神様になったんだ。僕はひとりぼっちだったから、それからきみのお家にお世話になることが決まって、すごくすごく嬉しかった。ママの言うこともパパの言うことも、しっかり守ったよ。きみをがっかりさせたくなかったから。
それなのに……。中学生になった途端、きみはアイツに夢中になった。アイツは、バスケ部に入部したきみのヒーローなんだとか。経験者なら上手いに決まっている。それなのに、きみはとても純粋だからアイツに憧れを抱いちゃって。家に帰ってきた途端、キラキラした瞳でアイツのプレーを語るきみが眩しい。僕はきみの腕の中で、話しを聞きながら拗ねてみるけれど、きみはそれに気づかない。悲しくってなって、ないてみても、きみは笑って僕の頭を撫でるだけ。僕はもっともっと、きみを独り占めしたいのだ。きみの本当の気持ちが欲しいのだ。僕はなき疲れて、そのまま眠ってしまった。
朝起きると、もうきみはいない。きみのいない家は静かで、ママが掃除をしている音だけが聞こえる。
早く学校終わらないかな。会いたいな。そう思いながら、玄関で微睡む意識を手放していく。
沈んでいた意識の波が揺られて、目を開けるときみが帰宅していた。何やら騒がしく、出かける準備をしている。その様子を目で追っていると、ふと違和感を感じた。その気配を辿ってみれば、なんと僕の敵が目の前にいたのだ!今日は部活が休みなので、公園にバスケをしに行くらしい。とりあえず挨拶がわりに威嚇を飛ばしてみるが、奴の目には映っていないようだ。
完全に2人の世界だった。僕は悲しくなって、少し体を縮めた。
縮こまっていると、準備を終えたきみがバタバタと玄関に走ってくる。いつもなら僕に目を合わせていくのに、今はきみの目にも僕は映っていないみたいだ。それが悲しくて、悔しくて。
待って、待って……!
2人が楽しそうに玄関を出て行こうとする背中に向かって、気づいたら僕は大きく叫んでいた。
「みゃぁあ〜!!!」
その鳴き声に気づいたきみが、僕に駆け寄る。
『なんだ、寂しいのか?ボクが帰るまで大人しくしててね』
そう言って僕をひと撫ですると、きみはアイツの背中を追いかけていく。僕の星はこんなにも近くて、こんなにも遠い。
それでも、ようやく僕が寂しがっていることが伝わった。その高揚感に、僕は鼻を鳴らす。
アイツに僕の星を、独り占めなんかさせてやらない。僕は僕だけのきみを、きみが与えてくれたこの場所で待っている。