落ちこぼれ勇者
曰く、勇者は魔王を倒すために女神から加護を授かって生まれてくる。
曰く、勇者は加護の事を誰にも言ってはいけない。
曰く、勇者は噂によると代々物心ついたときからキチガイ。
勇者にはそんな言い伝えがある。
まあ、キチガイ云々はデタラメだろう。
なぜなら俺が勇者だからだ。
まあ、キチガイじゃなくても落ちこぼれだけどな......
さて、そんな勇者の俺がなぜ落ちこぼれなのか。それは加護がないからだ。
言い伝えでは勇者には加護があるというが俺には全く心当たりがない。
それどころか鍛えても強くならないし何の才能もないしであっという間に落ちこぼれ勇者として名を馳せた。
しかも魔物の中でも一番弱いとされているゴブリンにすら勝てない。
だが、肉壁ぐらいにはなるだろうと敵国との戦争に連れて行かれた。
そして初陣ですぐに死んだ。死因は肉壁として魔法で焼かれたからだろう。
そして気づけば少し若返って見える両親がいた。
体も子どもに戻っていた。
最初は走馬灯か何かだと思っていた。でもいつになっても走馬灯は覚めることはなかった。
そして確信した。俺に加護があることを......。
結論からいうと俺の加護は死に戻りといったところだろうか。
死に戻りという言葉のとおり死んだら特定の地点まで戻れるのだろう。
細かいことはまだ一回しか死んでないから分からないが。
そして15歳の誕生日、俺は逃げた。
あのまま家にいたら女神からの信託で神官達がやってくる。
そのあとは王都に連れて行かれて前回と同じ目にあうだろう。
そのまま俺は一ヶ月程逃げ続けていた。
そのときは唐突に訪れた。俺の故郷であるコウガ村がドラゴンに襲われて壊滅状態らしい。
前回はこんなことは起こらなかったはずだった。
そして気付いてしまったんだ。
そういえば王都に連れて行かれて国王陛下らと話した際に皇帝暗殺など色々と不穏な言葉が出てきて驚いたことがあった。思えば、その時のことは内密にするよう強く念を押されたような気がする。
この事が機密情報だとすれば、この国の機密情報を多少なりとも知っている俺を家に返す訳にはいかない。
それに前回、一度大きな騒ぎがあったが何度聞いても教えてくれなかった。
それがドラゴンにコウガ村が襲われたときのことなのだろう。
ならば俺を逃げださせないためにも、故郷がドラゴンに襲われたことを知られないようにしていたのだろう。
そう考えると俺を肉壁にしたのは、暗殺したら落ちこぼれといえどとてもじゃないが自分達がやったとはいえないので同盟国などから警備体制を責められるだろう。
なら、確実に死んでなおかつ責められないようにするなために俺を肉壁にしたのだろう。
何もできない勇者が自責の念でせめて肉壁にと自分からいいだしたということにでもしておけば国は責められることもなく、
勇者を葬り去れるのだから。
その事に俺はゾッとした。
そして両親の安否を確認しなければならないと思った。
そうして俺はコウガ村に行った。そしてそこには村の形は残っておらず瓦礫の山が積み上げられていただけで、
かつての村は何も残ってはいなかった。
気づけば急に辺りが暗くなっていた。すると急に体が潰れるような感覚とともに意識が暗転した。
また最初に戻ってきた。
ソムリエ云々は大分先です。